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NATO解散こそ究極の解

2022-03-06 | 時評

ロシアのウクライナ侵攻作戦が長期化の様相を見せる中、改めてNATO(北大西洋条約機構)の存在理由が問われている。

そもそも、今回の侵攻作戦自体、NATOが北大西洋から遠く離れた東欧圏まで浸食的に拡大してきたことに対するロシア側の危機感を背景としている。NATOの敵方同盟で旧ソ連を盟主としたワルシャワ条約機構の旧加盟諸国も軒並みNATO入りしていく中、既に加盟済みのバルト三国に加え、ウクライナのような旧ソ連邦構成国にまでNATOが手を伸ばし、ウクライナもそれに乗ろうとしていることへのロシア側からの反作用である。

また、そうした拡大NATOがもたらす安全保障上の脅威は、プーチンのような「強力」な指導者の存在をロシア国民が容認・支持し、ひいてはロシア史上でも有数の長期政権化する可能性の担保となっているという国内的な政治効果も生じさせている。

一方、NATOは集団的安保同盟であるはずのところ、目下、ロシアの侵攻に対して軍事的に反応しようとする気配はなく、かえってウクライナ側が要望するロシア空軍機の飛行禁止区域の設定を拒否するなど、交戦を回避する姿勢が強い。ウクライナは条約未加盟であるから集団的自衛権発動の要件は満たさないとはいえ、NATOのあり方が鋭く問われるだろう。

もちろん、ロシアとNATO軍の間での「欧州大戦」に発展することが最適の解決法とは言えないので、一触即発の飛行禁止区域の設定を求め、NATOを戦争に巻き込もうとするかのようなウクライナ側の策にも疑問の余地はある。

さしあたっては、ウクライナがNATO加盟の方針を撤回し、中立宣言をすればロシアの侵攻作戦を中止できる望みはあり、戦争に伴う人道危機の拡大を当面短期的に防ぐにはその方策しかないであろうが、それでは本質的・恒久的な解決にはならない。

より究極的な解決法は、冷戦時代の遺物であるNATOの解散である。そもそも相方のワルシャワ条約機構が消滅した以上、NATOの存在理由も失効したはずであるのに未だに残されているどころか、2000年代以降いっそう拡大されてきたのはなぜか。

それはプーチン政権下で再興し始めたロシアへの包囲網であるとともに、そうした対ロシア防備を超えた「NATO帝国」―その帝冠を被るのは、むろんアメリカ―の構築という新たな米欧諸国の覇権戦略が隠されているからにほかなるまい。経済的にはいまだ成長途上であるウクライナを含む東欧の旧社会主義圏は米欧資本主義諸国にとっては潜在魅力的な市場の草刈場であるから、安保同盟の餌を広くまきたいわけであろう。

ということから、NATOの解散など論外とされるであろうが、そうであればこそ、それがウクライナ危機を終わらせる究極の解となるのである。


[蛇足1]
NATOの解散により安全保障上の脅威そのものが丸ごと消失すれば、強権的なプーチン体制の存在理由も薄れ、かえって民主化を求めるロシア民衆の革命により打倒される可能性さえも生じてくるだろう。

[蛇足2]
よりいっそう究極的には、ロシアをも包摂した最広域の「汎ヨーロッパ‐シベリア域圏」を形成できれば、欧州の恒久平和が確立するであろうが、これは拙見である「世界共同体」の論域に入るので、時評にはふさわしくなかろう。

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