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犯則と処遇(連載第11回)

2018-12-06 | 犯則と処遇

9 保護観察について

 「犯則→処遇」体系の下では、執行猶予のような制度が存在しない代わりに、単独で付せられる独立的処遇としての保護観察が活用される。このような保護観察は矯正のプロセスを省略して直ちに更生のプロセスに入るというものであるから、その対象となるのは反社会性向が弱く、一過性の犯則行為者である。
 従って、保護観察の期間も最長で2年に限定されるうえ、その期間満了前に更生が進み、保護観察の必要性が消滅したと判断された場合は、保護観察所の決定により中途で保護観察を終了させることもできる。

 また、保護観察の内容としても、行動制限は緩やかなものとなる反面、再犯防止のためのカウンセリングなどの個別的な処遇は充実する。さらに、社会貢献意識を高めるため、保護観察下で清掃などの一定の奉仕労働を課す社会奉仕も実施される。
 一方、犯行の背景に精神疾患が認められる対象者に対しては、保護観察下で治療を受けることを義務づけ、その経過を観察する医療的観察という付加処遇も課せられる。

 以上に対して、「終身監置」の「仮解除」を受けた者に対する「特別保護観察」は、独立的処遇としての保護観察とはその性質・内容を全く異にする。
 これは病理性の強い矯正困難な犯則行為者を対象とする保護観察であるので、期間は限定されず、「終身監置」の「本解除」まで継続されるとともに、居住・移転の自由など行動制限も強いものとならざるを得ない。
 ただし、この場合も、単なる「監視」に終始するのではなく、「終身監置」の「本解除」を目指す対象者の努力を援護し、その更生を促進するものでなければならない。  

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