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共産教育論(連載第22回)

2018-12-04 | 〆共産教育論

Ⅳ 基本七科各論

(5)歴史社会
 歴史社会科目は、歴史を踏まえつつ、現存社会の仕組みについて学ぶ科目である。伝統的な学校教育科目では「社会科」の一部を構成するが、前回見たとおり、地理と経済の各分野は「科学基礎」に包含されるため、その残余が当科目とも言える。
 基礎教育課程の基礎七科中では最もイデオロギーに関わる領域であるだけに、政治的な関心が高まる基礎教育課程終盤(ステップ10以降)で提供される科目である。当科目は「歴史分野」と「社会分野」とに大別されるが、まずは前提となる「歴史分野」が先行する。
 ここでは、伝統的な歴史教育のように国史(例えば日本史)と世界史を分離する教育が廃される。世界史から切り離された国史は各国でナショナリズム教育の最前線となってきたところ、国家が廃止され、世界共同体へと包摂される共産主義社会ではそもそも成立しないカテゴリーとなるからである。
 ただし、共産主義社会においても、旧主権国家をおおむねベースとして形成される個々の「領域圏の歴史」というものはなお残るのであり(例えば日本領域圏史)、これを世界史の中に統合的に位置づけながら教育することは続けられる。
 ただし、世界史も伝統的な科目のように、先史時代に始まって現代史までを総覧的に教えるのではなく、おおむね産業革命に始まる近現代史に特化する。それ以前の前近代史に関しても、近現代史の理解の必要に応じて及ぶが、基本的には生徒の自学に委ねられる。基礎教育センターの図書室やデジタルアーカイブにはそうした自学に有益な書籍・資料が常備されるであろう。
 そのうえ、方法論としても、細かな人名や年号を機械的に暗記させるのでなく、重要な歴史的出来事をめぐる様々な解釈を理解したうえ、自身の解釈を構築することが目指される。その点、「唯物史観」を教条的に仕込むようなまさしく教条主義的な教育は、当科目とは無関係である。
 他方、「社会分野」は、近現代史の理解を踏まえつつ、歴史的な到達点としての共産主義的な政治・法律の仕組みを総合的・客観的に理解させることに重点を置く。これは、民衆会議代議員という重要な市民的任務をこなすうえで必要な初歩的理解を身につけさせることに主眼がある。
 それに関連して、「社会分野」では生徒各自が居住する全土から各市町村に至る民衆会議の審議中継の動画視聴学習に加え、生徒自身が一定の議題をめぐり代議員になり代わって審議に参加する模擬民衆会議のような通学実習も実施する。

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