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ようやく付加価値税化

2015-12-16 | 時評

16日に決定された連立与党の税制改正大綱は、日本の消費税にとっては大きな転機となる。約四半世紀になる消費税の歴史の中で初めて軽減税率制が盛り込まれたからである。

26年前に大きな反対を押して制定された当初の消費税は、およそ消費行為に広く網をかけつつ、税率を低く抑えることで負担感を分散するやり方で国民の不満をそらし、今日まで主要税制として定着させることに成功した。

これによって、日本型消費税はまさしく日々の消費にかかる消費税となったが、財政難を口実に税率がなし崩しに引き上げられていく中で、その収奪的性格があらわになり始めていた。

富裕層の驕奢的消費行為に課税するのでなく、一般庶民層の消費行為にも課税する間接税は元来収奪的性格を免れないが、生産物が生産から消費までの過程で生みだす付加価値に課税することは、大衆全般の消費力が向上した先発資本主義社会においては一定の意義がある。

しかし、このような付加価値税は、消費行為全般から広く収奪するのではなく、単価の安い食料品をはじめとする日用消費財のような付加価値の低い商品の消費については税率を軽減することが理にかなっている。

軽減税率導入に合わせて懸案のインボイス式も採用して、付加価値税としての性格が強まれば、それによって付加価値税のような間接税の反動性格が完全に払拭できるわけではないとはいえ、いくらかなりとも消費税の収奪的性格を緩和することにつながればましというものである。 

これに対し、軽減税率を適用しても、消費税が10パーセントに上昇すれば税負担全体では年間で一世帯当たり平均4万円増になるとの試算を公表して、軽減税率をまやかしであるとする反対論がある(赤旗2015.12.15)。しかし、軽減しなければ負担増はもっと増すわけで、この反対理由は疑問である。

ただ、軽減税率制に対しては、それによって生じる見込み税収減が懸念され、与党協議を難航させたが、根本的には解決できておらず、その穴埋めを別の形の庶民増税や負担増でまかなおうとする策動には注意が必要である。

この点、軽減税率に対照されるものとして、付加価値の高い一定の驕奢品に対しては10パーセントを越える税率を適用する加重税率制を設け、驕奢的消費行為にはそれなりの重税を課すことは付加価値税をより公平なものにするだろう。

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