ちょっと前に碁石を磨いた私だが、以来棋譜並べがはかどらない。
棋譜並べの時間が全てトリノオリンピック観戦に回されたのも大きいが、折角磨いた蛤石が、また手垢で汚れるのが忍びないというのもある。
しかしこのまま棋譜並べを怠っていれば、ただでさえない棋力がさらに低下するのは明白。
何とかせねばなるまい。
ということで碁石を買いに出かけた。
目指すは
青山碁盤店。
ネット販売に力を入れているようで、こういう意欲的な店がいい加減な仕事をするはずがないという読みである。
ネットで買うには不安がありますがね。
地下鉄の新宿御苑の駅を出て、ちょっと四谷方向にいったところに件の
青山碁盤店はある。
ビルと聞いていたので、少し大きめの店舗を予想していたのだが、思ったよりコジンマリとしたお店。
というか一階のみの店舗で、広さも十坪に満たないくらい。
店の中はご主人一人だけであった。
いささか不安に襲われたが案の定、ネットで第一候補としてピックアップしておいた「プラスチック重量石」なるものは置いていないとの由。
プラスチックの中に鉛を入れて、プラスチックの欠点である軽さを解消したものだが、まだあまり一般的な品物ではなかったようだ。
ただご主人は大変良い人で、前から疑問に思っていた、
「何故、蛤石を水で洗ってはいけないか」
という疑問をぶつけると、
「
お湯で洗うと、割れてしまうことがある」
という明快な答えを、ニコヤカに返してくださった。
水がダメというのは私の勘違いだったようで、水なら大丈夫だそうだが、お湯で駄目なものを水で洗うのには勇気がいりますな。
碁盤の方は、水がつくとシミになるし。
その他今日の目的である碁石以外でも、気になっていた手元にある碁石碁盤の修繕に関する疑問を質問すると、丁寧に返答が。
もっとも丁寧に答えることのできないお店では論外ではあるけれど。
お店の大きさは想定外だったが、ご主人の人柄に
「またここにお世話になろう」
という気分にはなった。
さて「プラスチック重量石がない」となれば、第二候補はガラス碁石である。
特に躊躇する理由もなく、厚さも大体決めていたので、
「それではこのガラ…」
とお願いしようとした瞬間、頭の中で誰かがささやいた。
「どうせサブだし、プラスチックの方が安くて持ち運びしやすそうだぞ」
「ガラスだと割っちゃうぞ」
人差し指がガラス碁石から水平線を描き、数分後、私はプラスチック碁石の「竹印」(厚さ8mm)を手に店を出たのであった。
シメて2000円なり。
「これなら失敗した買い物でも、ダメージが少ないし」
何故だか衝動的に、そう思ったのですよ。