「基本指圧」に憧れて ― 村岡曜子のブログ

我が国固有の指圧を広く浸透させ、社会の保健と福祉の増進に寄与したい。

「先天性眼球振盪」の女児の治療を始めて…

2010年09月20日 | 素晴らしい指圧効果

 世の中には色々な障害や病があるものだ、と心が痛くなるのを抑えることができなくなることがあります。仕事として実際それに向き合いながら、自分の気持ちを何処に置けばいいのか分からなくなってしまいます。

 
今回は、可愛らしい患者さんMちゃん(小学6年生女児)についてお話します。彼女のお祖父さまから数ヵ月前に相談を受けたのがキッカケで、施術することになりました。たまたま仕事が立て込んでいたので、しばらく待っていただいた次第です。

 彼女の眼の異常は、生後間もなく母親が気付きました。眼科で受診し検査も受けましたが、「先天性眼球振盪(とう)」と診断されました。とくに治療もせず、医師は手術にも消極的だったそうです。これといった解決策がないまま年に1度定期的に受診するだけ、大きな変化があったらすぐに見せにくるようにと言われているそうです。
 眼科はもちろん脳外科的にも耳鼻科的にも異常は見つからず、何の処置もなされないまま、ただ手をこまねいてわが子の異常を見つめるしかなかったのです。

 子供の世界は時には残酷です。イジメの対象にもなってしまったそうです。本人には「自分が強くなるように」と教えて対処したということでした。
 さっそく拝見して驚きました。こんなことって本当にあるんですね! たまたま側にあった藤原一枝先生の絵本を読んでもらいました。写真はその時のものです。

「先天性眼球振盪」―― 省略して「眼振」と呼ぶことが多いそうです。原因や症状はさまざまですが、彼女の場合は注視眼振で正面を注視すると眼球が左右に激しく揺れるのです。眼球が激しく水平に揺れるため、物が水平に素早く移動をしているような状態ですから、物を認識することはとうてい無理。

 ちょうど走る急行列車から通過する駅ホームを見ると、駅の名前や看板が目の前を飛び去り、それを認識することができないのに似ているようです。この場合景色は一方向に流れますが、眼球の左右振動によって、見ようとするものが左右に激しく動くのです。
 個人差がありますが、この障害は眼振が緩和される「静止位」があることが多く、彼女の場合は写真ように右側方向にそれがあるので、物を見るのはいつもこの方向です。当然、人と話をするのもこの向きなのです。
 
 生まれつき顔を左向に向けて、眼球を右にスライドさせて見るのが当たり前なので、感覚的に「まっすぐ前」というのがよく分からないようです。
「前を向いて」というと「このくらい?」「この辺?」と聞きながら顔を動かします。
 圧してみると、全身の「眼」に関わる部分が全部見事にかたーくなっていました。それらの部位は圧すと少し痛そうなのですが顔色ひとつ変えずに受けてくれました。子供なりに指圧の必要性を感じたのだと思います。

 9月18日、3回目の治療でやっと左前頸部の固さが頸の奥の方から顔を出してきました。眼の治療には絶対必要な前頸部の手応えがまったく無い状態だったのが、やっと圧せるようになったのです。
 これが子供の前頸部かと驚く硬さではありますが、どうにか圧せたので少しホッとしました。これで治癒への道筋がついたのです。水平眼振の振り幅もかなり小さくなっています。今となっては映像に残しておけばよかったと少し後悔しています。

 3回目の治療後、左目を隠して右目だけで正面をみると「見える」ようになりました! 反対側は、まだ見えません。
 今回、左前頸部を圧せたので、症状の強い左側の目もこのさき間もなく改善していくと思っています。

 この治療の効果如何で、彼女の人生すら大きく変わってしまうと思います。いい治療ができるように頑張ろう、と何か決意めいたものが湧いてきています。

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