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『沈黙の春』 レイチェル・カーソン

2013-05-09 19:19:40 | 
半世紀も前の本になるが、すごく筆者の訴えが伝わってくるし、おそらくこれから何年経とうとも読み継がれていくような作品であると思う。
自分は農学系の勉強をしているので今更ながら必読書だから読んでおこうかなと思って手を出したのだが、環境問題に敏感になっているご時世だし一般教養として多くの人に読んでもらいたい。

タイトルの「沈黙の春(Silent Spring)」というのは殺虫剤の散布によって虫や動物が死に絶えてしまったということを意味する。我々のイメージとしては殺虫剤は害虫が出てきたときに使用するというイメージがある。もちろんそうなのだが、殺虫剤は害虫、益虫、動物、植物そして人間を区別することなくその効果を発揮する。作中で「殺虫剤」ではなく「殺生物剤」ではないかと述べていたのが印象に残る。
殺虫剤を撒けば一時的に害虫の数は減るが益虫や捕食者である鳥まで殺してしまうので、結果散布前よりその数は増えてしまう。それならと散布の回数を増やせば害虫は薬に対し抵抗を付けてしまう。ではより毒素の強い殺虫剤を使用しようと愚かな悪循環に陥っている。まさに「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」というやつではないか。
また生産の邪魔になる害虫を退治しようと思って殺虫剤を撒いたのに牛乳や作物に薬が残留してしまい出荷できずに結局不利益を被るなんてこともある。
さらに殺虫剤の散布は国が主導となって行っているのである。大した下調べもせず、学者の意見にも耳を貸さずに安価で手間がかからないという理由で毒を振りまいているのである。もちろん殺虫剤を撒く以外にも害虫を駆除する方法はある、害虫の捕食者を連れてくるだとか放射線照射し不妊化雌を放ち根絶させるなど。しかし人々は安易な選択をしてしまうのである。

最後に私は殺虫剤の存在を頭から否定するつもりはない。何かと有機栽培やオーガニックという言葉を耳にするが農薬も適切な用量が守られていれば生産性を高めるうえで便利だし、今の日本は規制も厳しいし安全だ。健康に無頓着というのも嫌だが過敏になりすぎるのも嫌だ。何事もほどほどにするのが大事なんだと思う。


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