ON THE ROAD

適当に音楽や映画などの趣味についてだらだら

『山の音』 川端康成

2024-07-11 22:27:44 | 


 


川端康成の傑作ということで読んだけど、あんまりよくわからなかったかな。つまらないということはないし、単純に自分の感性が乏しいからってこと。

あんまり詳しくないけど小津安二郎のような雰囲気がある。昭和の一般家庭を特に大きなドラマもなく粛々と描いている。しかしながら、父と息子とその妻の歪な関係は一筋縄ではいかないものがある。こういう日常のちょっとしたことを文学にできるというのがやっぱり偉大な作家なんだろうな。

もしもノーベル文学賞の評価基準に土着性というものがあるなら、この作品が評価されるのはわかる気はする。

『高学歴難民』 阿部恭子

2024-07-05 23:51:51 | 


以前にヤフーニュースでこの本の抜粋記事が掲載されていて気になったので買って読んでみた。

本書に登場する高学歴はみんな文系だ。博士課程やロースクールを修了したけどまともな仕事につけないという人たちに焦点を当てている。

ずばり言うと読んだ感想としては、とても面白かった。でもそれは作者が意図する社会問題に関心があっての面白いというのではない。高学歴が堕ちぶれていくという下世話な雑誌の下世話な記事にありそうなストーリーが読み物として面白い。院を出たけど正規の教員になれずワーキングプアというのはよく聞く話だが、犯罪に走ったり、風俗で働くなんてどう考えたってレアケースでしかないと思う。そのレアケースを切り捨てるのはよろしくないとはもちろん思うが、あんまり強調しすぎるのもどうなのかな。

著者は社会問題と言いつつ結局はゴシップ的に読んでもらえればいいと思っているんでないのと勘繰ってしまうのは下衆であろうか。
とりあえず私は高学歴ではないので安心して読めた。

『ボヴァリー夫人』 ギュスターヴ・フローベール

2024-07-05 22:39:08 | 


モームの十作に入っていたから読んだ名高い作品。
人妻と青年の不倫の物語ということで、甘美さのある恋愛というものを期待していたが、そんなことなくガッツリとフランスのドロドロした話であった。

序盤はよくある不倫ものという感じであったが、途中から夫人が着々と破滅へと歩みを進めていき、最後に待ち受ける救いのなさ。金の無心に走る夫人は当初のキャラをぶっ壊す鬼気迫るものがある。ゾラの『居酒屋』も読んでいてきついものがあったが、その時と同じ気持ちになっていった。

医者に嫁いだ夫人が物足りなさを感じてイケナイ恋に走るというのは現在でもよく見るような展開だ。その辺りの普遍的なテーマを描いたというのも評価されているということなのかな。

『私の、『読書案内』』 高橋昌久

2024-07-01 21:37:14 | 
私にしては珍しくKindleで買った活字本。
著者は文学YouTuberや哲学YouTuberの動画にゲスト出演していて知ったお方。動画を見る限りではかなり哲学や文学に造詣が深く語学にも精通していて、人文に関しては相当に信頼に足る方だと思っている。この本はそういう方が書かれた読書案内である。

モームに倣ってこの本はこれから古典の世界に足を踏み入れる方に向けて書いていると断っているが、『地下室の手記』や『八月の光』、『戦争と平和』が挙げられる。でも安易に読みやすいだけの作品をあげていないのが、逆に信頼おけるのかな。

私も含めてだが、本の紹介をする人は自分の言葉で述べている人は意外と少ない。というのもwikiやAmazonでの紹介文の引用プラスαの感想が多い。はっきり言って読まなくても書ける浅いレベルのものも多々ある。
一方で高橋氏は確実に自分の言葉で述べており、文学をしている人なのだというのが手にとるようにわかる。哲学の引用などもあるが、読みにくいということはなく格調高さまで感じる。私もこういう文が書けるようになりたいと素直に感じる。

細々と取り上げた作品も含めると結構な作品数が挙げられており、私にとっても大いに参考になった。また、途中に挟まれているエッセイも文学を読んでいく上での手助けにもなる。

モームの『読書案内』は積みっぱなしだったので、これを機に早めに読みたい。

『初恋』 トゥルゲーネフ

2024-05-29 22:43:00 | 


少年の淡い初恋を描いた甘酸っぱい小説…ではないというのは何となく予備知識として知ってはいたが、思ったよりもエグ味が強かった。

ロシアを代表する作家の代表作だが、ドストエフスキーやトルストイと違って短く短時間で読めるのが嬉しい。しかし、その短さとは裏腹に前述の通り一筋縄ではいかない。ヒロインが周りの男たちを弄ぶ姿は『痴人の愛』のヒロインを彷彿とされる。
そして自分の父親とヒロインの関係を知った主人公の心情を思うと、読んでいるこっちの胸が締め付けられる。

いろいろな経験を経て少年は大人になるのだろうが、この体験は刺激が強すぎる。