今に始まったことではないけど、映画館で映画を観ることではなく、映画館に行くこと自体が目的になっている。動画配信サービスが充実してきている今日ではあるが、映画館で映画を観る文化はきっとなくならないだろうな。
そんなわけで街へ行ったら自然と映画館に足を運んでしまった。丁度やっているのがこの映画だけであった。全然知らない映画だが、タイトルからしてスカした雰囲気があったからあんまり観たくなかった。観たけどね。
いざ観たら、前言撤回、スカしたなんてとんでもない。熱量たっぷりの素晴らしい映画でした。
棋士になれなかった青年が将棋ソフトの開発をするという映画だが、将棋とプログラミングなんてインドアの極みみたいなものだが、こんなに熱いものだとは知らなかったね。熱量たっぷりとは言ったが、役者がわめいているだけのうるさい映画という意味では決してない。むしろ、役者の演技のトーンはかなり抑えられている。しかしながら、登場人物の情熱はこれでもかというくらいに伝わってくる。
ちなみに私はプログラミングの知識0、将棋は駒の動かし方は知っているというレベルである。
まず、映画のストーリーの構図がいい。棋士になれなかった青年と棋士になった青年の二人の物語だが、棋士をあきらめた時点で本来ならば二人は交わることはない。しかし、将棋のソフト開発をしたことでライバルとして棋士の前に再び現れるという展開は胸熱すぎる。また、二人が歩む道の対比の描写が見事である。
将棋とプログラミングというなじみのないテーマではあるが、展開的には王道を行っていると思う。
この映画の何がいいって、余計な恋愛描写が一切ないということ。これを頭の悪い奴が作ると、棋士の姉を恋人に置き換えたり、主人公が先輩の妹と恋仲になったりするんだろうが、そんなことせず二人の青年のストイックさをきっちり描いている。
今年最後の劇場鑑賞映画ではないだろうが、年の瀬にこんなに素晴らしい映画を観られてうれしい。それも必然ではなく隙間時間に映画館に行っただけの偶然の出会いというのもうれしい。
観ている最中、これが実話とか凄いなと感動しっぱなしだったが、いざ調べたら将棋電王戦から着想を得たというだけで、物語自体はフィクションとのこと。だからと言って映画の価値が損なわれることは全くないけどね。
地味にロケ地となった大学はどこなのかなと気になっていたが、群馬大学が舞台らしい。
劇場には実際に吉沢君が着用した衣装が展示してある。確かにダサいなとは思ったが、こんなにはっきり言わんでもと思ってしまう。