10月12日(水)〈山梨県〉帝京第三高校
10月14日(金)〈岡山県〉勝央町教育委員会主催・勝央中学校
15日(土)〈 〃 〉勝央町教育委員会主催・公開講座
16日(日)〈 〃 〉勝央町教育委員会主催・一般公演
帝京第三高校
この学校は2020年からコロナの影響で延期をしていました。風の上演は初めて、そして、演劇鑑賞自体も初めて実施の学校です。
2020年当時からずっと担当を続けてこられた先生とも「計画当初からすると実に三年越しになってしまいましたが、ようやく実施できることができました。待った分も含めて生徒、教員一同楽しみにしています。」と、お互いに公演ができる喜びを噛みしめながらの公演でした。
当初は、市の体育館での実施予定でしたが、「せっかく演劇を見せられるのだから、専用の設備のあるところで、劇場の雰囲気も体験してほしい。」という事で、隣の市にある文化ホールまで脚を伸ばして来てくれました。
学校のバスが文化ホールに到着し、生徒のみなさんが続々と会場に入って来ます。生徒のみなさんも先生方もワクワクした様子でした。というのも、コロナ禍になって以来、初めて全校生徒が一緒に集まることができたのがこの日だったのです。
客席の期待と熱を帯びた中、いよいよ開演です。
開演前の熱気はそのままに、実に真剣に舞台に見入っている生徒のみなさんの姿が印象的でした。
終演後にはその場で呼び掛けて参加してくれた生徒のみなさんとの舞台見学が行われました。はじめは恥ずかしがってか、なかなか舞台に上がって来ませんでしたが、意を決したようにひとりの生徒さんが舞台に駆け上がると、それをきっかけに次々と生徒のみなさんが舞台に来てくれました。
生徒さんだけでなく先生方も興味津々。生徒さんと一緒になって見学の時間を楽しんでくれていました。
見学の最中、感極まって泣き出してしまう生徒さんも。それを見ていた担当の先生は、「涙しているあの子の姿を見ることができただけでも、今日やって本当によかったです。」と、目を細めていました。
この日の経験が、生徒のみなさんひとりひとりにとってのかけがえのないものになってくれることを願っています。
勝央町教育委員会主催公演
教育委員会の皆さんとの公演は2019年のヘレン・ケラー(町内小中合同・一般)、そして、今年の2月に星の王子さま(町内小学校)と、今回で3回目の実施となりました。
そして、今回は学校への公演と一般公演に加えて、バリアフリー演劇に関する公開講座と三日間に渡る公演企画。委員会としても初めての試みということもあり、委員会の方々も僕たちもワクワクドキドキの三日間でした。
楽屋の入り口に「お帰りなさい!」のおもてなし。委員会のみなさんのあたたかな心遣いが嬉しかったです。
[一日目]勝央中学校芸術鑑賞講座
初日は、勝央中学校の芸術鑑賞講座。今年の2月に上演した勝央北小学校で、星の王子さまを見た子どもたちのほとんどがここに通っているということで、彼らとの再会の場にもなりました。
開場すると、待ちきれなかったと言わんばかりにあっという間に入場が終わり、今か今かと客席に座って、開演を楽しみにしている様子でした。
バリアフリー公演ということで、開演前には公演の説明とサインネーム(役の名前をひとつの手話で表すオリジナル手話)の紹介を行いました。客席の生徒のみなさんも一緒にサインネームをやってくれていました。このあと、開演です。
公演が始まると、ジッと集中して、真剣に舞台に注いでくれる視線が印象的な客席でした。
カーテンコールでは、代表の生徒さんが「演劇を見る機会が少ない僕たちにとって、今日はすごく新鮮な経験でした。そして、バリアフリー演劇ということで、手話、字幕、音声ガイドなど色んな視点で楽しむことができました。」と、率直な思いを語ってくれました。
元々、すぐに学校に戻らないといけないということで、交流の予定はなかったのですが、帰りのバスを待っている間、出演者と生徒のみなさんとの交流の時間を持つことができました。
学校名や自分の名前を手話でやってみたり、気になったことや感想を聞かせてくれたりと、生徒のみなさんも先生方も楽しんでくれていました。
そのあと、「舞台にあがってみてもいいですか?」の一言をきっかけに、舞台見学も急遽行われることに。堰を切ったように、舞台にあがって行く生徒たちの姿を「みんな、セットを見たくてウズウズしていたんですね。」と、優しく見守っている先生方の姿も印象的でした。
この公演がみなさんのいい思い出となってくれたらうれしいです。
[二日目]公開講座
二日目は、地域交流プログラムということで、「バリアフリー演劇を考える!」と題して、一部と二部に分かれた二部構成で公開講座が行われました。
第一部は、舞台手話役者の小島祐美とトリート役の佐野準による手話講座。
風がバリアフリー演劇に取り組んできた経緯とバリアフリー演劇を通して出会った子どもたち、大人たちとのエピソードをスライドを交えて話していきました。「手話講座」とは言ったものの、話が盛り上がってしまい、実際の手話の時間はあまりとれませんでしたが、参加してくれた方々は「バリアフリー演劇と言われても、正直あまりピンと来ていませんでしたが、今日のお話を聞いてすごくイメージがわきました。観客も含めて、面白そうですね。」と、関心を寄せてくれていました。
第二部は、「フリートーク:僕たちがめざすバリアフリー」というテーマで、大阪市住之江区にある「特定非営利活動法人 自立生活夢宙センター」の代表、平下耕三さんを迎えて、風の代表、ハロルド役の柳瀬太一とのセッションを行いました。進行は、今回の企画の担当をされている教育委員会の竹内さんです。
まず、自立生活センターとは何かということで、夢宙センターが製作をしたセンターの紹介VTRを鑑賞。センターで活動している人たちの溌剌とした姿とハジける笑顔がとても印象的でした。客席からも自然と笑い声が聞こえてきます。
そのあとは、夢宙センターにある、インクルーシブ劇団夢屋が過去に二回、劇団風とコラボレーションをした『妖怪バリヤーをやっつけろ』の公演の映像を見ながら、夢屋が活動を始めたきっかけから風との共演の経験などを話してもらいました。
「人を集めるには、何かオモロイことをやらな。」と話す平下さんの話をみなさんも楽しみながらも真剣に聞き入っていました。
質疑応答の場面では、今度、地元有志の方々で手話祭りを開催されるという主催の方から、「地元にいる障害を持たれている人たちがどうしたら地域へ発信していけるのか?」という質問に対して、「時間はかかりますが、やはり草の根の活動が大切なことです。」と、これまでの苦労や出会ってきた、つながってきた人々の話を聞くことができました。
今回のセッションが、地域の方々が何か活動を始める上での助力になってくれたらと思います。平下さんもお疲れさまでした。ありがとうございました。
[三日目]一般公演
最終日は、『Touch』のバリアフリー一般公演です。
この『Touch』の公演は中国・四国地方の文化施設主催の一般公演では初めての取り組みとなりました。「ここから中・四国のほかの会館でも取り組んでもらうきっかけになれば。」と、担当の竹内さんも意気込んでいらっしゃいました。
客席には、勝央町の方だけにとどまらず、岡山市や兵庫県姫路市や神戸市からも高校生からご年配の方まで多くの方が脚を運んでくださいました。
本番は、刺すような真剣な眼差しと、あたたかで和やかな眼差しとが入り交じる、刺激的な客席でした。
終演後には、舞台見学と同時に舞台上での劇団員との交流(アーティストトークとおっしゃっていました)が行われました。
公演の感想を熱心に話してくれる方もいれば、セットの隅々まで細かく観察している方も。時間ギリギリまで、みなさん楽しんでいかれました。
写真の一番右にいらっしゃる聾者の方は、前日の公開講座にもご参加いただいていた方で、劇場での交流を楽しんでいらっしゃいました。
後日その方からお礼のお手紙もいただきました。ありがとうございました。
最後は担当の竹内さんと記念写真。三日間、本当にありがとうございました。
再び勝央町に帰ってこられることを、心より楽しみにしています。また、面白いことを一緒に地域の方々に発信できたらと思います。
『Touch』のツアーは、折り返しをむかえていよいよ後半戦。秋の訪れを感じながら旅は続いていきます。
文・佐藤勇太(フィリップ役)
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