たんなるエスノグラファーの日記
エスノグラフィーをつうじて、ふたたび、人間探究の森へと分け入るために
 



これからプナン人の村に行くというと、あるクニャー人は、プナンのペニス・ピンについて話してくれた(上の写真は、この話題とは関係ない)。かつて、二人のカナダ人男子大学生が、それを付けて帰国したという。その後、成果について、報告は受けていないとも加えた。

プナン研究で知られるある某大物人類学者も、付けていたとのうわさがある。これまでに、ボルネオ島のペニス・ピンについては、エスノグラフィックな報告がいくつか公表されている。たしか、ドナルド・ブラウンによるペニス・ピンの文献目録のようなものもあった。

プナンのロングハウスで、ペニス・ピンについて尋ねてみた。男たちは、いろいろと話を聞かせてくれた(まだ見せてもらってない)。かつて付けていたが、いまははずしている男性(既婚、40歳)は施術について、以下のように説明した。 まだひんやりとしている朝早くに、施術希望者は施術師とともに水浴びに行く。亀頭(その先端を上とすれば)のすぐ下の部分に、針金のようなものを刺して穴を開けていく。最後に、その針金を貫通させる。翌朝、今度は、前日の針金を引き抜き、それよりも太い針金を突き通す。そのようにして毎朝、前日のものよりも太い針金を差し込んで、最終的に、あつらえてあったペニス・ピンを刺す。施術の期間、施術希望者は、酒と塩は控えなければならないという。薬を用いるので、血は出ないという。

その話をしていると、その男の弟の嫁が、折りたたみ傘の鉄製の骨を持ってきて、針金とはこのようなものだと示してくれた。少年に混じって、何人かの少女たちも、何も言わずに、その話に耳を傾けていた。どうやら、ペニス・ピンは、男性の領域だけに閉じられたものではなく、共同体全体にオープンなものであるらしい。付けている人物の名前が、公然と明かされた。

ペニス・ピンは、明らかに、性交渉の道具立ての一つである。成人儀礼で、大人になるために付けるというのではない。年齢に関わりなく、個人の希望で付けたり、また、はずしたりするようなものである。ちょうど、耳飾り(ピアス)のように。しかし、ペニス・ピンは、日常生活では、耳飾のようにけっして他者にさらされるものではないが。 ある男性は、旅に出たときにそれは役立つ、とその効用を説明した。女性の快楽のために、ひいては、男性の快楽のために。そして、それは、プナンの性の(快楽の)文化の産物である。

そういえば、プナンの男たちには、美少年が多いように思う。小柄ながら、ほれぼれするような筋肉質の体格。そのわりには、目の覚めるような美人(女)にはまだお目にかかっていない。


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