2011年の第1問はイスラム世界の広がりとともに、文化が継承され他の地域に新たな文化活動を引き起こした、という視点に立った問題でした。
ところで、「大論述」には解き方があります。それを知ったうえで、もう一度問題文を見てください。イスラム史は既習分野です。したがって、この問題は高校2年生の知識でも解けなければなりませんが、それはあくまでも知識レベルのこと。東大が求める「文脈」の中で自分が知っている用語を使えることと、その用語をたんに知っていることとは違う。そこらへんは、論理力を身に付けていくことで解決できる問題です。論理力とは、自分の知識を、文脈に沿って、さまざまな角度から使いこなすことができる力をさします。
さて、その解き方をこの2011年の第1問を使って簡単に説明します。まず、問題文をよく読みます。何に注目して読むべきか。それはこの問題がどのような「文脈」で解答を導こうとしているかです。東大は模範解答の公開を視野に入れて作問をしています。言い換えれば、採点基準だけでなく文章としても正解を示すことができることになります。実際、2011年の第1問は予備校各社の模範解答はほぼ似通っています。
2011年の文脈とは、イスラム文化は征服した文化や支配領域の周辺の文化を「受容」し、それをアラブ・イスラム世界が「発展」させ、その文化がやがて他の地域に伝わって、その地域に「影響」を与えたのだ、というものです。この「受容」⇒「発展」⇒「影響」のパターンが存在したのだというイスラム世界に対する評価・歴史観・問題意識を東大の作問者が持っているわけです。この「文脈」に気が付くことから解答が始まります。