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社会主義政党史 ドイツ 2009津田塾大学

2012年12月19日 | 高3用 授業内容をもう一度

 世界に先がけてイギリスで始まった産業革命は,伝統的な生活様式や価値観に重大な変化をもたらした。都市では大規模工場で働く賃金労働者が急増し,貧困者の人口集中によるスラム化が起こった。労働者は,利潤の追求を優先する資本家によって,不衛生な環境のもとで長時間労働と低賃金を強いられることが多く,労働争議が多発した。団結する機会が増えた労働者は,一つの階級としての意識を高めて労働組合を結成し,自らの手で労働条件の改善をめざすようになった。こうした状況のなかで,団結禁止法を制定して労働運動を弾圧していたイギリス政府も,1824年には同法を廃止して労働者の団結や団体行動を認めるようになった。また,数度にわたって工場法が制定され,労働条件の改善が進んだ。

 

 こういった動きのなかから,資本主義そのものを批判し,富が公平に分配されるといった理想社会の実現をめざす社会主義思想が発展した。工場法の制定に尽力し,自らも理想的協同社会の建設を試みたイギリスの工場経営者ロバート=オーエンや,フランスの二月革命で活躍し,国立作業場の設置を推進したルイ=ブランなど,社会主義の考えを実践する者も現れた。また,ドイツのマルクスとエンゲルスは,資本主義体制の崩壊が歴史的必然であるとする学説を展開し,労働者階級による政権獲得と,労働者の国際的団結による社会主義の実現を訴えた。彼らの思想は後にマルクス主義と称され,以後の社会主義運動に大きな影響を与えた。

 

 労働運動や社会主義運動の高揚に直面したヨーロッパ各国政府は,ある程度の社会福祉政策を実施するようになった。たとえば,19世紀半ばごろから工業発展をとげたドイツでは,宰相ビスマルクが1878年に「社会主義者鎮圧法」を制定して労働運動に打撃を与える一方で,災害保険や疾病保険などの社会保険制度を実施した。こうした対応は労働運動の一つの成果だったが,一連の福祉立法の実現を背景に,社会民主党のベルンシュタインなど,革命ではなく議会を通じての社会改良によって社会主義の実現をめざす理論家も現れ,社会主義運動のあいだに分裂と対立をもたらした。さらに,こうした福祉政策は,労働者に国家への帰属を意識させる要因ともなり,労働者の国際的な連帯を弱めることになった。


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