Reflections

時のかけらたち

デルス・ウザーラ ・・・ Dersu Uzara

2019-09-15 23:59:41 | movie


1975年 141分

デルス・ウザーラは黒澤が日本の映画界で行き詰って、自殺未遂をした後、旧ソ連で製作した映画で、
アカデミー賞外国語映画賞を受賞し、その後の作品作りにつながった転機の大作です。当時も話題になっていたことは
覚えていますが、ベルカントの友人が良かったと話していて、見たくなりました。この映画はヤマザキマリさんが絶賛して
いて、そのことが見るきっかけになったと友人は話していました。
この大作を二日間に亘って見ましたが、やっぱり映画館で観たい映画です。

この映画の主役は大自然とデルスと隊長の友情です。自然そのもののデルスはその中の崇高な人間性が
輝いていて、周りのものをひきつけます。周りの自然すべてを人格化して大切にしています。人間を自然の一部として
周りに生きるもの全てへ自然な愛情を注ぐことができます。

アルセーニエフ原作のウスリー紀行に基づいた真実の物語でまるでドキュメンタリー映画のようでした。自然描写が
すばらしく、この作品を30年も温めていた黒澤は最初は北海道を舞台に作ろうと試みましたが、断念したとどこかに書かれて
いました。やはりこの自然のスケールで描きたかったようです。



第一部は隊長がデルスの墓を訪ね、その出会いの回想シーンから始まります。








森林(タイガ)の生活で身に着けた 驚くべき洞察力
その上 見知らぬ人に対しても
最新の心遣いを忘れない 美しい心をもっていた




















映画のクライマックスの氷原で足跡が消え、道に迷う二人。






























このデルスの素晴らしい知恵、それが私を救ったのだ















調査が終わり、再び自然の中に帰っていくデルス

彼は本当にいい人だな
ああいう人間はめったにいない




第2部は数年後のデルスとの再会から始まります。いろいろなエピソードを重ね、デルスは年を取り、
視力が低下して自然の中で生きることが難しいことを悟り、隊長の家に身を寄せて、小さな彼の息子(小さな
カピタン)と友達になりますが、町では住めないことを知り、再び森へと戻っていきます。視力の低下を補うために
最新の銃をあげたことが、人間の欲望に殺されてしまうという悲しい結末へと繋がっていきます。






















我が灰色の翼の鷲よ
お前はどこを 飛んでいるのだ?
私は高い山の彼方の 青空を飛んでいる





ヤマザキマリ・Sequere naturam:Mari Yamazaki's Blog
デルス・ウザーラ 2007年 03月 31日

この作品は彼の作品中唯一「自然と人間」をテーマに取り上げたものです。
自然、というよりも、舞台となる果てしないシベリアの大自然こそが主役の映画といってもいいでしょう。
Dersuという人間は、このシベリアの大自然の一部であり、その精霊といってよい存在として描写されています。
仲代達也やミフネのドラマティック演技が特徴になってしまた監督の映画とは思えない、いったいどうしたん
だろう!?と思うくらい彼の一連の映画の中で最も自然でソフトな作品だと私は思います。

イタリアに暮らしていた時にテレビでこの映画をたまたま見たのですが、まず何に衝撃を受けたかって、このDersu
という一切人間社会に帰属しないで生きてきたおじいさんの、自然だけから授けられた純粋さの結晶でできたみたいな
深さと暖かさと優しさ、人間であることの奢りのなさ、などです。
当時フィレンツェでルネッサンスだのなんだの、人間万歳てんこもりみたいな勉強ばっかりやってた私には、
このDersuやシベリアの自然ってのはかなり強烈なショックでした。

デルス・ウザーラは人間によってカーヴィングされた人間ではなく、あくまで自然によって形作られた、濁りや
澱みのない人間とでもいうのでしょうか。
でもこんな人って滅多にいるもんじゃないですよね。今もむかしも。
やっぱり文明社会を離れないと不可能な現実逃避的理想なのかしらと思ったり。

でも、それでも彼は生きていく上で知っていなければいけない人間のかたちのひとつだと、思い続けて現在に至って
おります。





ひかたま(光の魂たち)
動物の自然療法、統合医療を行う、しんでん森の動物病院です。公式HP http://shindenforest.com/

デルスウザーラ:人と自然との共存

シベリアの大自然の中で自由に生きた後で
文明によって殺された実在の人物です。

黒沢明監督は、デルスについて次のように語っています。
「デルスのように自然の中でたったひとり暮らしている人間、
自然をとても大事にし、尊敬し、怖れも持つ。
その態度こそ、いま世界の人々がいちばん学ばなければならないところです。」

現在でもデルスの生まれ故郷の人たちは自然を尊び
シャーマニズムを信仰し特に火と水には畏敬の念を持つ民族として知られています。

デルスの生き方は
自然を尊いものとしすべての生き物、すべての存在に敬意を払い
必要最低限生きていくのに必要なものだけを自然から利用させてもらう。




小野耕世のPLAY TIME
黒澤明「デルス・ウザーラ」の70ミリ版を見る

本格的なシリーズは、当時、河出書房から出た<世界探検紀行全集>で、スコットの悲劇を描いたチェリー・ガラードの
名著「世界最悪の旅」に続く第二回配本が、このアルセーニエフの「ウスリー紀行」(デルス・ウザーラ)だったのである。

その本は、原書のさし絵が多く含まれていて楽しく、少年の私は、20世紀のはじめの沿海州の森林を住みかとするゴリド人
の猟師、デルス・ウザーラの言動に、すっかり魅せられていた。
そんななつかしさもあって、この映画のためにソヴィエト(ロシア)に発つようになる以前の黒澤明監督を、オーストラリア
から来日した女性ジャーナリストの通訳として赤坂プリンスホテルに訪ねたことがある。「これは私が30年間あたためていた
題材なのです」熱っぽく語られたときも、まさか、あの紀行文が、日本人の、それも黒澤明の手により映画化されることになる
とは夢にも思っていなかっただけに、不思議な感動を味わったものだ。

映画は、初めのほうで、ウスリー地方の秋の大森林の遠景、それぞれ色あいの違う雄大な三カット続けて見せながら、そのなか
を進むコザック兵の調査探検隊の七名を映していく。私はここで、原作に記された自然を目のあたりにするのだが、隊長の
アルセーニエフ(ユーリー・サローミン)以下が焚火を囲んでいる夜、水の音がしてなにかが近づいてくる。銃を向けて
身構えると「射つな、わし、人だ」という声とともに、闇のなかからやってきて、火のまえにすわるのが、ずんぐりした
体格の白いヒゲの猟師デルス(マクシム・ムンズク)である。以下映画は、隊長(カピタン)の目に映ったこのやさしく
知的な目をしたデルスを、その死まで(原作のとおりに)描いていく・・・」""




黒澤 明 樹海の迷宮
映画「デルス・ウザーラ」全記録1971-1975
著/野上照代 著/ヴラジーミル・ヴァシーリエフ 著/笹井隆男

〈 書籍の内容 〉黒澤のソ連映画『デルス・ウザーラ』の全貌
 公開40周年を迎える、名匠・黒澤明のアカデミー外国語映画賞受賞作『デルス・ウザーラ』。巨匠初の外国映画(ソ連)
にして、壮年期から晩年の円熟期への創作の画期ともなった作品です。自然人デルスを通して、文明社会の奢りを告発し自然
との共生を謳う極めて今日的なこの作品は、しかしこれまで正当な研究・評価の対象となることはありませんでした。謎に
包まれたこの作品の深部に切り込んでいくのが本書です。黒澤明研究史上、初めて公開される盟友・野上照代氏の撮影日誌、
ソ連側助監督・ヴァシーリエフ氏による現場記録、関係者へのインタビューをもとに、過酷な撮影現場と苦悩する黒澤の姿が
赤裸々に描かれていきます。ソ連からの帰国時に、自力歩行も困難なほど消耗した過酷な撮影を経てなお「創るということは
素晴らしい」と自ら語った、映画製作の“天国と地獄"が余すことなく描かれた、従来の黒澤明研究と一線を画する濃厚な
ドキュメンタリーです。またこれも初公開となる幻の完成シナリオも収録します。基調原稿として池澤夏樹氏による特別寄稿
のほか、フランシス・コッポラ監督、主演のユーリー・ソローミン氏のコメントも掲載いたします。


小学館から最近発刊されたこの本を区の図書館で予約することができました。
ウスリー紀行はありませんでした。かなり古い本です。中学生のころはヘディンの探検の本とか読みましたが。


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