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Reflections

時のかけらたち

ファントム・スレッド (追記あり)・・・ Phantom Thread 

2023-07-08 23:59:09 | movie

映画は見たけれどメモをまだ作っていないのがスペイン映画のカルメン、ベイビーブローカー、シングルマン
ケイト・ブランシェットのキャロル&ブルー・ジャスミン、コリン・ファースのマジック・イン・ムーンライト&レイルウェイ
今を生きる、ミセスハリス パリへ行く、永遠のマリア・カラス、レ・ミゼラブルとたまってしまっています。

借りていたDVDを見て早く返さなくてはと思い見始めたダニエル・デイ・ルイスのファントム・スレッドがすごすぎて、さすが
この作品を引退作品と選んだダニエル・デイ・ルイスはすごい。若い頃「眺めのいい部屋」で初めて見て、「存在の耐えられない軽さ」
は心に残る映画でダニエル・ディ・ルイスの存在感を示しました。マイレフトフットやディカプリオと共演のギャング映画とかはTVで
少し見ただけでちゃんと見てはいません。
この彼の若いころの代表作「存在の耐えられない軽さ」を思い出させる男と女の愛の不条理と言うか違いを感じる映画でした。

彼が仕事一途ではなく自分とも向き合ってほしいと願う彼女。一時、自分だけのものになってほしいと思い毒をお茶に振り入れる。
それに気が付いてもそれを受け入れる愛を持てるようになった彼。命ギリギリの線の愛情です。とにかくダニエル・デイ・ルイスが
すてきです。これで引退なんてもったいない。でもこの最後を飾れる俳優さんてそんなにいない。

 

また彼女はすべてが彼のルールで進められるハウスや家庭が気に入らなくなってくる。彼は彼女の品のない食事のしかたが
耐えられない・・ 美の極致にいる彼が生活にも求めるもの・・ 男性が求めるもの、女性が求めるもの・・とても考えさせられる
映画でした。

よくよく見なおしてみると、主人公がどうしてこのような孤独のみの自分の世界に入って行ったか興味深いところがあり、結局
古いハウスに新しい風を送ったアルマの勝利のようにも思えます。いろいろな観念に縛られていたレイノルズの呪縛がほどかれて
行くような・・・

映画作品が画面の中のデティールがすべてすてき。家具や食器、インテリア、階段、ファッション、風景・・・
カメラがすごくよくて、付録のメイキングのカメラテストでいろいろなレンズを試したことがよくわかりました。
音楽もまた、ジャズやクラシックも流れるのですが、マイ・フーリッシュ・ハートやフォーレ、ドビュッシー、シューベルト
ブラームス等・・ パーフェクトな感じです。

 

シリルを演じたレスリー・マンヴィルは「ハリス パリに行く」の時の家政婦の愛すべきおばさんを演じた時と正反対の
演技でさすがでした。同じハウスを扱った映画でしたが、ミセス ハリスの時のイザベル・ユベールの立場の役どころ・・


2017年製作/130分/G/アメリカ
原題:Phantom Thread

 

『ファントム・スレッド』90秒予告編

 

キャスト

 

監督・脚本・プロデューサー・撮影
ポール・トーマス・アンダーソン
プロデューサー
ジョアン・セラー
ミーガン・エリソン
ダニエル・ルピ
編集
ディラン・ティチェナー
プロダクションデザイナー
マーク・ティルズリー
美術
デニス・シュネグ
クリス・ピーターズ
アダム・スクワイアーズ
衣装
マーク・ブリッジス
作曲
ジョニー・グリーンウッド

 

 

レイノルズ 結婚で偽りの自分になりたくない
      my time , my house
アルマ   もうゲームは止めて、家もお金もファッションも何もかもすべてあなたのルール。
      自然でまともなものは何もない。

レイノルズ いろいろやりたいことが・・
      日々は無限だと思っていた。多くの過ちを犯してきた。
      気がかりだったことをやらなくては。君なくしてはできない。守ってほしい。
      ゆがんだ心が息を止めないように。変わらない家は死の家だ。
      結婚してくれるか?

静かな死の気配が感じられる、傷ついて、自信を無くしていく彼に寄り添い、彼の愛を取り戻し、
彼女自身も自信をもってドレスを管理し、ホコリや亡霊や時代の流れからハウスを守り抜く決意をするアルマ。
彼女が最初に感じた壁とかすごくよくわかります。

彼が芯地、裏地に隠した心も表現も面白かったです。

 

ファントムスレッド 幽霊の名はエドウィナ

『ファントムスレッド』解説・考察:男は衣服を仕立て、女は幻の糸で男を包み込む


 追記)
映画の中で使われているモノたちはすべてこだわって選び抜かれていある。
お茶の時の、鉄瓶のようなティーポット、この寝室のカーテンも素敵。

壁紙が邪魔になる時は、無地の壁紙で隠したとメーキングで監督が語っていました。

ボビンレースも出てきました。





今度こんな襟を作ってみたい。いつできるようになるのかしら・・・

何度見ても画面の隅々まですてきな映画です。

 

追記の追記

音楽について

‐ファントム・スレッド(ポール・トーマス・アンダーソン2017)
使われたクラシック音楽
 ヴァイル:『闇の女 』より〈私の船〉
 フォーレ:『ドリー』より〈子守歌〉
 ドビュッシー:弦楽四重奏曲第2楽章
 シューベルト:ピアノ三重奏曲第2番第1楽章Allegro
 ブラームス:ワルツ第11番
 ベルリオーズ:『幻想交響曲』第2楽章〈舞踏会〉
 『スコットランドの勇士』『螢の光』

 

テーマソングも素敵だった。
Phantom Thread - House of Woodcock (Official Audio)

 

ジョニー・グリーンウッド『ファントム・スレッド』 サウンドトラック・スコア ―官能の彼方を見据える音楽

[641]ポール・トーマス・アンダーソン監督作『ファントム・スレッド』におけるジョニー・グリーンウッドの音楽

『ファントム・スレッド』の監督ポール・トーマス・アンダーソンが、同作を観る前に聴くべき23曲として
Spotifyにプレイリストを公開した。

プレイリストに含まれる楽曲は以下。

1. “Blue Sands” – The Chico Hamilton Quintet
2. “Portrait of My Love” – Cyril Ornadel and Starlight Symphony
3. “You’re So Vain” – Carly Simon
4. “Dolly Suite, Op. 56: I. Berceuse” – Gabriel Fauré, Katia Labèque
5. “I’ll Always Be in Love with You” – Helen Forrest
6. “I’m Making Believe” – Ella Fitzgerald and The Ink Spots
7. “Hey, That’s No Way to Say Goodbye” – Roberta Flack
8. “Nobody Does It Better” – Carly Simon
9. “Impression of a Princess” – Danish State Radio Orchestra and Robert Farnon
10. “My Ship” – Oscar Peterson and Nelson Riddle
11. “Razor Love” – Neil Young
12. “Suspicions” – Bernard Herrmann
13. “Thirteen (Alternate Mix)” – Big Star
14. “Coming Around Again” – Carly Simon
15. “Portrait of Jenny” – Oscar Peterson and Nelson Riddle
16. “Two Blind Loves” – Jack Teagarden and his Orchestra, Kitty Kallen
17. “I’m On Fire” – Bruce Springsteen
18. “Three Little Words” – Jack Teagarden and his Orchestra
19. “Stay (feat. Mikky Ekko)” – Rihanna
20. “Lord of the Manor” – The Everly Brothers
21. “Come Sunday” – Oscar Peterson and Nelson Riddle

 

すべてにおいて味わい深い映画でした。

洗練された美術にうっとり!『ファントム・スレッド』特別映像「House Of Woodcock」

 

コメント (2)
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黒澤明の「生きる」と「夢」 ・・・ Kurosawa’s "Living” and "Dreams"

2023-06-02 20:05:21 | movie

ここ数カ月で見た黒澤明の代表作2作について

カズオ・イシグロのリメイク版で話題になっているLivingの原作を見たくなりました。

 

4月の初めの頃だったか黒澤明監督の「生きる」を借りてきて観ました。この白黒の映画に
戦後間もない作品にもかかわらず全く古さを感じられず、志村喬の目が訴える迫力に強烈な印象が
焼きついています。日本映画のすばらしさを改めて感じた作品でした。また出演者がすごくて
その後日本を代表する役者さんになった方たちばかりで、その若い時の姿を見ることもできました。

1952年製作/143分/日本
スタッフ
監督:黒澤明
製作:本木荘二郎
脚本:黒澤明、橋本忍小國英雄
撮影:中井朝一
美術:松山崇
キャスト
渡邊勘治:志村喬

時間をつぶしているだけで、生きた時間がない、生きているとは言えない役所での仕事。
無意味な忙しさの中で意欲を亡くしてしまっていた主人公が、自分の人生の残り時間が少ないと知り、
生きることに目覚める。無駄に使った人生を取り戻そうとする。胃がんと宣告された瞬間から
生き始め、自分のやるべきことを見つけてやり遂げ、静かな幸せの中、この世を去っていくという
映画の中に、何もしないことがいいことと言う役所の体質。そこは痛烈な批判がありました。

でもこの映画は志村喬なくてはありえない作品でした。

 

「夢」は直近にマリア・カラスの後で借りた映画です。
以前から見たかった黒澤映画の一つです。遺作かと思ったらそうではないのですね。

 

夢 Dreams
1990年製作/120分/日本・アメリカ合作
監督・脚本 黒澤明
製作 黒澤久雄、井上芳男
衣装  ワダエミ
 
黒澤明監督作品全30作品のうち、28作目にあたる「夢」
 
 
「こんな夢を見た」
夏目漱石の名著『夢十夜』と同じメッセージから始まる黒澤明監督の8話オムニバス形式の映画。数ある黒澤明監督作品の中でも、
映像美にこだわった幻想的な作品で、この『夢』をもって黒澤明の映画が一つの大団円を迎えたと評する映画ファンも多い。
8つの物語は一見、何の関わりもないように思われるかもしれない。しかし、何度か見ていると物語一つ一つに込められた人生や
社会へのメッセージ、そして『夢』全体に込められた黒澤明の人生観・メッセージを感じることができる。“理解”ではなく“感じて”
ほしい映画なのだ。配給権を海外の映画会社が保有しているため、日本での上映が難しい作品だが、美しさにおいて史上最高の映画
と評される名画である。                                         市原栄光堂の商品説明より
 
「日照り雨」(狐の嫁入り)、「桃畑」(お雛様、自然破壊)
「雪あらし」(自然)、「トンネル」(戦争)、「鴉」(ゴッホ・・・芸術)
「赤冨士」(原発)、「鬼哭」(原発・放射能汚染)「水車のある村」(人間、命と自然)
 
滅び行く日本の美、破壊されていく自然、そして核や戦争による滅亡の危機…。これらを回避するには、正義を貫く人間の謙虚な
心しかないという、黒澤明自身の思想を夢という形で巧みに分散させた、真の映画的美しさに満ちた作品である。(的田也寸志)
                                                    アマゾンより

 
 
                       ブログ「遊びをせんとや生まれけむ」より

ゴッホの所でショパンの雨だれが使われているけれど、最初アシュケナージの演奏を使いたかったけれど
許可がおりなかったとのことで、中村紘子さんにお願いしたらと言われてまさか中村さんにアシュケナージを
マネしてくれとは言えないと黒澤が語ったというエピソードが残っていることを知りました。
雨だれは好きで子供の頃少し練習をしていたことがありましたが、ゴッホの絵への追求のバックに、とても力強い曲に
なっていて、ぴったりだったと思いました。

私がこの作品を遺作のように思ったのは、まるで遺書のような作品だったからかしら・・
人間に対する警告。自然と共生し、核や戦争のない世界を願って。

人間が地球を猛毒物質の掃きだめにした。
自然破壊に対する警鐘。

最後の「水車」のロケ地は以前サイトウ記念コンサートで松本に行ったとき、友達と行ったところでした。
その時の子供たちの衣装はボロの展覧会で展示がしてあり、見たものでしたが、素晴らしい衣装です。

 

文明に対する痛烈な批判がここにはありました。

人間は便利なものほどいいと思い、本当にいいものを捨てている。
電気については、夜まで明るくては星が見えないと。

学者の中には自然の心がわからないものが多く、人間を不幸せにしているものを発明している。
自然が失われ、自分たちも滅ぼしていく。いい空気にきれいな水、それを作り出す木や草も失われ
ようとしている。汚された空気や水は人間の心まで影響してしまう。

よく働いて、よく生きて
ご苦労さんと言われて死ぬのはめでたい。
生きているのはいいものだ。おもしろい。

 

 


  

不思議な世界も・・・ そして木を切る人間へのお雛様からの嘆きの声が・・・

苦しい夢もあるが、最後に笠智衆があの調子で出てきて、人生を肯定的に終わらせる最後が
良かった。

タルコフスキーや黒澤が発する声をずっと途絶えさせないように引き継がれてほしい芸術です。

 

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le otto montagne ・・・ 帰れない山

2023-05-31 23:59:19 | movie

5月26日

イタリア語の先生と友達と一緒に見に行こうと話していた映画のスケジュールが合って
同じ日に行くことができました。とてもお得なシネ・スィッチのレディスデイです。
イタリア映画づいています。たまたま「丘の上の本屋さん」を見た時に予告をしていた
「帰れない山」とフランス映画「それでも私は生きて行く」は見てみたいと思っていました。

 

Le otto montagne 2022年 イタリア=ベルギー=フランス 147分 

スタッフ
原作 パオロ・コニェッティ
監督、脚本、共同製作 フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン
           シャルロッテ・ファンデルメールシュ
撮影 ルーベン・インペンス

キャスト   ピエトロ ルカ・マリネッリ  ブルーノ アレッサンドロ・ボルギ

自然と呼ぶのは都会人だけ・・と言うブルーノのことばがささりました。
都会で忙しく働くピエトロの父親は山の中で本当の自分らしさをみつけるけれど、山で暮らすブルーノほ
自然と一体になってその厳しさも知り尽くしているから出る言葉だったのかしら。

親に反発して大好きだった父との山の生活を捨てて、自分の居場所を求め続けていたが、父の死後一緒に登った
山々を一人登り、父親のほんとうの気持ちを知り、父の想いが息子に繋がります。
何十年ぶりに会っても変わらない友情、遠く離れていても思いあうことができる友情は素晴らしいと思う。残念なことは
女性より気持ちが理解ができること。ピエトロは自分の場所を求めて世界放浪の旅に出てネパールに居場所を見つけ
作家となり、愛する人にも出会うことができた。一方ブルーノは一人自然の中で暮らし続け、家族は彼のもとを去り
自然の厳しさの中で突然亡くなってしまう。

普遍的なテーマで見終わってからじわっと心の中に波紋が広がって行きました。
さりげく淡々とした映画でしたが、自然と人間、自然と都会、親子の絆、自分の居場所、友情など普遍的なテーマは重厚で
考えさせられる映画でした。

原タイトルが8つの山でそれがどうつながっていくのか見ていたのだけど、途中でネパールから戻ったピエトロが語るのが
仏教などの世界観にある8つの山の話。

8つの山 真ん中にあるのが須弥山 
8つの山をめぐるピエトロと、中央の山から出ないブルーノの二つの生き方

8つの山とは?(THE EIGHT MOUNTAINS)

世界の中心には最も高い山、須弥山(スメール山、しゅみせん)があり、その周りを海、そして 8 つの山に囲まれている。
8つの山すべてに登った者と、須弥山に登った者、どちらがより多くのことを学んだのでしょうか。

※古代インドの世界観で、世界の中心にそびえる聖なる山。仏教、バラモン教、ジャイナ教、ヒンドゥー教にも共有されて
いる概念。ピエトロはネパールでこの話を知り、ブルーノに伝える。

共有する思い出も一人が欠けたら消えてしまうという言葉が悲しい。「帰れない山」と言う日本語タイトルはもう戻れない世界
と言う意味をあらわしているのだろう。

小説の方も読んでみたくなるような作品でした。最近ダンテの「神曲」にも興味がわいてきて、やりたいことが多くて
どうしたらいいのかわからないくらい。それでも何でも少しずつしか進まない私はやっと仏教関係の古典を読み終わり
なんて仏教って難しいのだと思ったところです。

 

映画『帰れない山』予告編

 

 

『帰れない山』フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン&シャルロッテ・ファンデルメールシュ監督 大きな世界に存在すること【Director’s Interview Vol.310】

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私はマリア・カラス ・・・ Maria by Callas

2023-05-07 22:29:26 | movie

 

マリア・カラスの生涯をマリアのインタビューとカラスの歌声で綴った真実のドキュメンタリー
のインパクトが強烈でした。天才の彼女の内側にいる普通の一人の女性。音楽に対するひたむきな努力など
思っていたイメージとは全く違うチャーミングな女性がいました。アルゲリッチのドキュメンタリーもそうだったけど
雲の上の人のようなアーティストの真実を垣間見るととても親近感を覚えます。
それにしてもあの歌声には魅了されます。
今までもよくYouTubeで聴いていたけれど、こうやって彼女の生きざまに沿って歌が流れると、歌の中に
彼女の思いが込められていることがよくわかります。監督のトム・ヴォルフの構成のすばらしさと彼女への愛にあふれた
映画に今さらですが、感激しました。公開されたとき少し見たいと思っていた映画でもありました。
一番心惹かれたのはアリストとの愛を友愛にまで高めてお互いに尊敬しあい、生涯の友人であり続けたことです。

 

映画『私は、マリア・カラス』予告編

 

 

2017年製作/114分/G/フランス
原題:Maria by Callas
配給:ギャガ

 

あらすじ
音楽史に永遠に輝く才能と絶賛されたオペラ歌手、マリア・カラス。ドラマティックな人生は幾度か映画化されたが、没後
40年にして初めて彼女の未完の自叙伝が紐解かれる。映像作家トム・ヴォルフは3年に渡る〈真のマリア・カラスを探す旅〉で
その自叙伝やこれまで封印されてきたプライベートな手紙、秘蔵映像を入手し、映画化にこぎつけた。
そこで描かれるのは「誰も知らない」マリア・カラス。スキャンダルやバッシングの嵐の中、プロフェッショナルとしての信念に
倒れても歌うことを諦めなかった壮絶な"カラス"と、ひとりの女性として愛を切望し、千々に心乱され苦悩しながらも、全てを
受け入れようと変化していく"マリア"の姿があった―。
 
 
出演:マリア・カラス (アーカイヴ映像) 
   ヴィットリオ・デ・シーカ、アリストテレス・オナシス、ピエロ・パオロ・パゾリーニ、ルキノ・ヴィスコンティ 他
朗読:ファニー・アルダン
 
 
映画の中で語られた音楽を追求する姿と一人の女性として愛し、傷つき、立ち直っていく姿をメモしました。
 
ホフマンは語った
ことばが止んだ時、音楽が始まる
壮大で深遠な音楽は、言葉では表現しきれない
私達は音楽に奉仕し、謙虚に向き合うべきだ
私が歌うのはプライドのためではなく
調和に満ちた天上の音楽に到達するためである
                  マリア・カラス
 
カラスの歌う、プッチーニ蝶々夫人から「なんて美しい朝」、椿姫から「さよなら過ぎ去った日々よ」
は本当に素晴らしく聴き入ってしまいました。カラスの歌にマリアが見えてきます。
 
不幸な結婚生活の中、アリストテレス・オナシスと出会います。早いうちからオナシスは最高の友で
生涯の友と語っています。しかし彼女は芸術家は幸せにはなれないとも。
 
彼女は自分のことをごく普通の1人の女性と語ります。私生活の「私」と舞台の「私」は完全に別人だが
イコールともいえる。精神的にはどっちも私だから、どっちも私の一部。内気な一人の女性は今まで抱いていた
カラスのイメージとは全く違うものでした。
 
音楽については成長もするが、歌心を感じてほしいと。自分のうちから湧き出る音楽を聴いてほしい。
家庭には恵まれなかったが、歌えることは幸せ。オペラは彼女にとって不可欠で自己表現の一つ、いわば
私の宇宙そのものと語るカラス。高みに登った気持ちになれ、観客にも届いてほしい酔わせるような幻想。
 
不調が続いてもアリストが支えていましたが、彼女は出会って8年目で愛の告白をしています。
出会いを神に感謝。永遠に一緒にいたい。あなたの愛と敬愛が必要。私の命、心、誇り、愛。
自尊心が強いけれど、もろくて傷ついた女。でも私だけが枯れない愛を与えられる。それを忘れず
やさしいあなたでいて。 あなたの魂、マリアより
 
この願いに反して、オナシスはジャッキーと結婚をしてしまいますが、このことは私もよく覚えています。
新聞でこのことを知ったマリアの気持ちは想像できないほどです。9年間も愛をはぐくんできて、お互いの
離婚が成立したら、結婚する予定だったとも言われています。なんというか実業家としてのオナシスの選ぶ
結婚とは何なのかと思ってしまいました。またジャッキーはケネディとの結婚も不幸だったし、その後も
自分を庇護してくれる人を必要としていたとか。
音楽的にも不調だったマリアはパゾリーニのオファーを受けて「王女メディア」に女優として出演します。
この映画は若いころ見て、よく覚えています。おぞましく激しい役でした。
 
この結婚の間違いにすぐオナシス氏も気が付いて、マリアの「今に私を必要とする」の言葉通り、よりを戻す
オナシス。よりを戻し、自尊心を取り戻し、物事を客観的に見れるようになったと語るマリア。オナシスは
この結婚は間違いだったと語り、責任は妻ではなく、自分に全部あるとマリアに話しています。
その後2人の間に新しい友情が生まれ、とても情熱的な友情だったがけんかをしなくなり、建設的な会話を
かわすようになったとのことです。長々と無駄な議論をするのも止めたと。お互いに自己主張する必要が
なくなったとか。「彼との愛人関係は失敗だったが、友情の点では成功した。第二の男で、大切な人。私を
受け入れてくれる本物の男を望む。彼と出会い歌を捨ててもいいと思った。女性にとって大切なことは運命の
男性を幸せにすること。その愛は高くつく。本当の真心は高くて贅沢。」
オナシス氏は倒れ、死の床にあった彼を訪れたマリアに傷つけたこともあったが自分なりに最善を尽くし愛した
と伝えました。
最後から2番目に流れたジョルダーノのアンドレア・ジェニエの「母が死んだ」が彼女の気持ちそのものでした。
「あなたはひとりではない、私は愛、私は命、私の瞳の中にあなたの天国がある。もう一度生きるのです。あなたに
先立ち、支えて導こう。微笑みなさい。希望を持つのです。」
 
最後まで舞台への夢を持ち続け、練習を重ねていましたが、突然の心臓発作でパリで亡くなりました。53歳と言う
若さでした。
 
最後に流れていた「私のお父様」もピュアな感じがしてとても素敵でした。役どころではお父さんを脅かすような
所もありますが、清らかな歌に聞こえます。
 
後半は一気にオナシス氏との愛・友情の話になりましたが、彼女の真摯な音楽に対する思いがよくわかる彼女の
実態に迫ったいい映画でした。今さらですが、彼女の歌本当に素晴らしい表現力です。
 
Casta Diva を今まではずっと聴いていましたが、カルメンのハバネラもこの映画の中で歌われたすべての曲が素晴らし
かったです。カラスはベッリーニが好きだと話していました。
 
 
 
 
追記)
映画の中で歌われた曲
プッチーニ/蝶々夫人「なんて美しい空!」
ヴェルディ/シチリアの晩鐘「ありがとう、愛する友よ」
ベッリーニ/ノルマ「清らかな女神よ」
ヴェルディ/椿姫「さようなら、過ぎ去った日々よ」
ヴェルディ/マクベス「早く来て、明かりを
ビゼー/カルメン「ハバネラ」
マスカーニ/カヴァレリア・ルスティカーナ「ママも知るとおり」
プッチーニ/トスカ「歌に生き、恋に生き」
ベッリーニ/夢遊病の娘「おお花よ、お前がこんなに早く萎んでしまうとは」
ジョルダーノ/アンドレア・シェニエ「母が死に」
プッチーニ/ジャンニ・スキッキ「私のお父さん」

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丘の上の本屋さん ・・・ II DIRITTO ALLA FELICITA 

2023-04-29 23:45:06 | movie

5月4日に最終を迎えるイタリア映画を銀座のミニシアターに見に行きました。イタリア語の先生と
この映画を見たA子さんからもおすすめがあり、連休はイタリア映画を見に行こうかと・・
銀座は数年ぶりに見る多くの観光客でにぎわいを見せていました。地下鉄もまるでラッシュアワーでした。
昔の光景が戻ってきました。

 

 

 

II DIRITTO ALLA FELICITA

2023年3月3日(金)公開 / 上映時間:84分 / 製作:2021年(伊)

スタッフ
監督・脚本:クラウディオ・ロッシ・マッシミ
撮影:ジャンルカ・ガルッチ

キャスト 
リベロ:レモ・ジローネ
ニコラ:コッラード・フォルトゥーナ
エシエン:ディディー・ローレンツ・チュンブ
収集家:モーニ・オヴァディア

 

この映画の最初にユニセフに捧げると出てきたので、何かあるなと思っていましたが、最後にやられました。
もしまだご覧になっていなくてこれから見る予定がある方はネタバレになるので、これから先は読まないで
くださいね。

私はLiberoまさに自由と言う名前の店主が最後にエシエンに渡した本に不意を突かれて、涙が出そうになりました。
今朝ニュースでまたウクライナのあちこちでロシアからの攻撃を受けて、市民が殺されたことを見たあとだったから
かもしれません。

移民のエシエンに本を読む楽しさを教えて、それも徐々に考えるような作品になって行くところもこちら側も
ワクワク感がありました。私が最も好きな作家に入るサン・テクジュペリやメルヴィルやジャック・ロンドンまで
出てくるのねなんて思いながら本を読む楽しさを思い出していました。今の子供たちや大人も本を読まなくなったと思い
危惧していて、電子媒体ばかりの世の中でいいのだろうかと思っている現代です。監督も紙に印刷された本の大切さと
その感覚を思い出してほしいとインタヴューで語っていました。私も最近少しずつですが、本を読む時間が増えてきました。
(ChatGPTに前向きな政府もとんでもないと思うこの頃です。日本はITの遅れを取り戻そうとしているとか・・)

本屋さんに出入りする人たちとのそれぞれに対する対応もおもしろく、Liberoが自分の人生と重ねるように読む
日記もどこかミステリアスでした。

最後に移民のエシエンに渡した本はなんと「世界人権宣言」だったのです。そして亡くなったときに用意していた手紙に
自由で幸せになる権利がみんなにあると書かれていたところに涙がたまってきてしまいました。映画のタイトルが日本語と
イタリア語で全然違っていたことに最初に気づくべきでした。

1948年12月10日 第3回国連総会で採択
第1条
 すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを
授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。

クラウディオ・ロッシ・マッシミ監督のメッセージ
私は本作を通して人と人の間にある、本当に大事なことは何なのか、愛とは何なのかを伝えたいと思います。

久しぶりに映画が終わってからすぐ立ち上がれない映画を見ました。イタリアってこういう映画が作れるのだと
驚きます。今こそ見るべき映画だと思いました。

1948年にこんなに立派な宣言が国際的にあるのに、この現代はなんと自由や人権が踏みにじられているのだろうと
もう一度宣言を出してもいいくらいだと思いました。

だれもが幸福になる権利を持つという言葉にあふれそうになる涙を抑えるのがたいへんでした。クレジットが
すごく長くてよかった。

映画を見たあと、混雑する銀座の中では静かになれる教文館のカフェで
少し気持ちを整えてから家に帰りました。

 

April 29  2023  Ginza

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Piotr Anderszewski plays the Diavelli Variations

2023-04-10 11:59:47 | movie

アンデルシェフスキーのドキュメンタリ、ディアベッリ変奏曲は2月の末から3月初めにかけて何回も見ました。
コンサートでもずいぶん前に聴いていた曲でした。

ベートーヴェンと言う大きな山に挑んだアンデルシェフスキの苦悩と喜びが描かれていました。ピアニストが言葉で
音楽を語り、メイキングを見せてくれるのは珍しいことだと思います。一つの作品を作り上げていくことの
大変さをあらためて思いました。

 

アンデルジェフスキ / ベートーヴェン:ディアベリ変奏曲 Op.120
ピョートル・アンデルジェフスキ(ピアノ)
監督:ブルーノ・モンサンジョン


グールド、リヒテル、ソコロフ、そしてアンデルジェフスキ!
著名な映像プロデューサー、モンサンジョンが認めた注目の俊英ピアニスト!
 ヨーロッパで今最も注目を集めているワルシャワ生まれのピアニスト、ピョートル・アンデルジェフスキ。その名前は
日本ではまだ浸透していないようだが、いずれその実力にふさわしい評価をされる日も遠からず来るに違いない。
 彼を一躍有名にしたのは90年のリーズ国際コンクール。そこで当時20歳の若者は、誰もが尻込みしたくなるような
ベートーヴェンの《ディアベリ変奏曲》を鮮やかに弾いてみせ、絶賛を博したにもかかわらず、「納得のいく演奏ができない」
と本選をすっぱり辞退、聴衆と批評家を驚かせた。そして翌年、ロンドンでリサイタル・デビュー。その時のプログラムも
やはり《ディアベリ》だった。以後彼は同じ曲を弾き続け、ついに2000年に録音。このディスク〔VIRGIN/5454682〕は数々
の賞を受けている。
《ディアベリ》はベートーヴェンの作品中、最も内省的でとらえどころのない難曲といわれるが、アンデルジェフキは
そういう意見に対して「No(ノー)」と言う。彼は各変奏の特性をじっくりと吟味し、明確なダイナミズムによってめりはり
をつけ、緩急はっきりしたテンポで演奏する。そうすることで、茫漠とした印象の先行しがちなこの大曲が、一本の線を持った
ドラマであることを明示してみせたのだ。こんなに画期的な音楽の冒険、なかなか体験できるものではない。
 今回ご紹介するフィルムは、グールドやリヒテルなどの映像作品を手がけたことで知られるブリュノ・モンサンジョンが
《ディアベリ》の録音現場を撮ったものである。カメラはアンデルジェフスキの手の動きから表情まで克明にとらえており
類い稀なる演奏の生まれる瞬間をあまさず私たちに見せてくれる。なお、本編前半にはモンサンジョンとの対話も収録。
CDと併せて揃えておきたいアイテムである。(阿部十三)

 

BEETHOVEN DIABELLI VARIATIONS (ANDERSZEWSKI)

 

ベートーヴェンの荘厳ミサ曲を知ってから開眼して弾きたくなった曲。上に上がって行き、美しい世界が展開され、再び
戻ってきて、世界を落ち着かせる。
全体が旅で、いろいろな風景に出会える曲。近寄りがたい作品だと言われるが、そうではない・・・とのメッセージが
ありました。

 

ディアベッリ変奏曲について
もとになっているのはA.ディアベッリによるワルツです。彼のワルツを広めるため、変奏曲を公募して、
それが創作欲を湧き立たせたのでしょう。
変奏曲ではないのです。一般的には「変奏曲」とよばれます。
しかし実際には「変容」なのです。

ベートーヴェンの作曲
核が非常にシンプルで小さいのです。それが大きなスケールを持つマスターピースへと
形を変えます。”ベートーヴェン主義”の精髄とも言えます。

 

ディアベッリの主題が変貌を遂げるのです。一つの種子が分裂し変容を繰り返し、痛みを伴い
生まれ変わり、ベートーヴェンのこだわりが感じられる曲です。
音楽表現の可能性を極限まで追求しているのです。
まず独特のユーモアがあり、豊かな機知とアイロニーが感じられます。
ドン・ジョバンニのパラフレーズもあります。この曲の持つ無限の深さを感じます。

第20変奏では、奥深い探求の極限に至る感があります。

第24変奏の「フゲッタ」では至福の静寂が広がり、心が解きほぐされ、再び美が展開するのです。
別の言葉を使うならば「凝縮性」と言えます。

感情の凝縮と素晴らしいハーモニーの凝縮は変わり続けます。
いくつもの違うステージを進みながら、音楽は少しずつ形を変えていきます。
時には急激な変化などもあり、言わば望遠レンズのズームです。
まるで光のようなスピードで進んでいくのです。

荘厳ミサ曲との共通点など
この変奏曲をひき始めたのは、ベートーヴェンの「荘厳ミサ曲」を知ってからで、
開眼した曲です。
この曲は少しずつ明るさを含んでいきます。先へと進みながら、上へ下へと起伏があり、
最後には元の場所へと戻ってくる構造です。
そして二つの要素が激しくせめぎあいます。どっしりと落ち着いた部分を上への力を感じる部分が
もがくような。この変奏曲と「荘厳ミサ曲」との共通点とも言えます。

近寄りがたい作品だと言われます。演奏家にとっても、聴衆の立場からも。
だがそうじゃない。曲全体が旅なのです。

電車の旅をしていると想像してみてください。いろいろな風景に出会います。そして長い道のりを行き、
旅路が終わるころにはその道のりがとてつもなく壮大なロマンと化しているんだ。
とても価値のある上等な旅だと思うね。
出会いの旅だ。

 

 

 

 

この上等な旅を終えたアンデルシェフスキのことばをメモしました。
彼の演奏にはその思いがあるからこそ、観客に伝わることがわかりました。聞いていて感じることが
演奏者が感じることと同じことが分かったことがとてもよくわかり、観客より、まず演奏者が曲に
すごく感動しているのがわかりました。曲は上手に弾くことではなく、感動をどう伝えるかなのですね。

 

Piotr Anderszewski plays Beethoven Diabelli Variations, Op.120 (live 2018)

 

 

 

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『蜜蜂と遠雷』 ・・・ Honeybees and Distant Thunder

2023-04-07 23:55:31 | movie

なぜこの映画を借りてみたのかと言うとピアノ演奏を河村尚子さんが実際に演奏、他に藤田真央という若手で注目の
ピアニストが演奏していたからです。

蜜蜂と遠雷  2019年/日本/118分
原作:恩田陸「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎刊)/ 松岡茉優 松坂桃李 森崎ウィン 鈴鹿央士(新人)
監督・脚本・編集:石川慶 / 配給:東宝©2019映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

素晴らしい俳優さんたちを使っているのに、心の動きや人物像を深く描かけなかった残念な映画でした。音楽だけは
迫力がありましたが、俳優さんたちに弾く真似だけさせた時間が長くて・・・ 

唯一感動したのは風間塵が「一緒に音を外に連れ出してくれる人を探しなさい」と師にいわれていて「やっとみつけたよ」
とキラキラした目で喜びを表したところと栄伝亜夜が音楽の世界にとどまるきっかけを見出したところです。

 

 

映画『蜜蜂と遠雷』予告【10月4日(金)公開】

 

 

 

|ピアニスト プロフィール&コメント|

<河村尚子>

ミュンヘン国際コンクール第2位、クララ・ハスキル国際コンクール優勝。ドイツを拠点に、リサイタルのほか、
ウィーン響、バイエルン放送響等にソリストとして迎えられ、日本でもヤノフスキ指揮ベルリン放送響、
ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィル等のツアーに参加。文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞等、受賞多数。
CDは「ショパン:24の前奏曲&幻想ポロネーズ」など(RCA Red Seal)。現在ドイツ・フォルクヴァング芸術大学教授。

 

■コメント

恩田陸さんは、演奏家がピアノに向かうまでの心の機微、不可思議で魔法のようなピアノ音楽の姿を、リアルかつ
細やかに描かれています。映像と音を伴うことで、音楽を志す若者たちの熱い精神がより鮮やかに伝わりますように!

 

<福間洸太朗>

パリ国立高等音楽院、ベルリン芸術大学にて学ぶ。20歳でクリーヴランド国際コンクール優勝。カーネギーホール、
ベルリンコンツェルトハウス、サントリーホールでリサイタル他、クリーヴランド管、モスクワフィル、イスラエルフィル、
NHK交響楽団などと共演、一流フィギュアスケーターやバレエダンサーとの共演など幅広く活動する。CDは10枚以上リリース。
テレビ朝日系「徹子の部屋」や「題名のない音楽会」などにも出演。

 

■コメント

このプロジェクトに参加させていただき、大変光栄です。録音前に小説を読み返し、家庭を持つ社会人としてコンクールに
挑戦する高島明石の音を追求してみました。聴く人へ勇気と癒しを与えることが、明石と私の願いです。

 

 

<金子三勇士>

1989年、日本人の父とハンガリー人の母のもとに生まれる。6歳で単身ハンガリーに渡りバルトーク音楽小学校に入学。
2001年、11歳でハンガリー国立リスト音楽院大学(特別才能育成コース)に入学し、2006年に全課程取得とともに帰国、
東京音楽大学付属高等学校に編入する。同大学、大学院を修了。2008年バルトーク国際ピアノコンクール優勝の他、
数々のコンクールで優勝。第22回出光音楽賞他を受賞。スタインウェイ・アーティスト。

 

■コメント

国際コンクールの本選には、まず選ばない難曲をあえてぶつけてきたマサル。彼に同化して弾いたプロコフィエフの協奏曲が
どのような映像作品に昇華したのか、一番楽しみにしている一人です。

 

<藤田真央>

2017年弱冠18歳で第27回クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝し、世界の注目を浴びる。2018年には、
ルール音楽祭でリサイタルを行った他、ヴェルビエ音楽祭にアカデミー生として参加。スイス、並びにパリのルイ
ヴィトン財団主催New Generationシリーズに招かれた。今シーズンもオーケストラと共演を重ねる他、10月には
紀尾井ホールでのリサイタルなどを予定している。現在、20歳。特別特待奨学生として東京音楽大学2年 ピアノ演奏家
コース・エクセレンスに在学中。

 

■コメント

「蜜蜂と遠雷」は、発売されてすぐに読みました。音楽を文章でここまで表現できるものなのかと、とても感動しました。
今回担当させていただいた風間塵くんのように、私も“音楽の神様”に愛されるピアニストであり続けたいです。

 

 

|オリジナル楽曲「春と修羅」 作曲家 プロフィール&コメント|

<藤倉大>

1977年大阪生まれ。15歳で渡英しジョージ・ベンジャミンらに師事。ザルツブルク音楽祭、BBCプロムス、シカゴ響
などから作品を委嘱され、国際的な共同委嘱もますます増えている。2019年はオペラ〈ソラリス〉組曲版世界初演、
アーティスティック・ディレクターを務める新しい音のフェス「ボンクリ2019」などが控える。2017年ヴェネツィア
ビエンナーレ音楽部門銀獅子賞受賞。録音多数。Minabel Recordsを主宰。

 

■コメント

この度は「蜜蜂と遠雷」に出てくる架空の作曲家の作品の作曲をすることができ、その上に4人の全く違う今をときめく
ピアニストに演奏していただき大変嬉しいです。原作の著者恩田陸さんはこの架空の作品の描写を長く詳しく書いており、
その表現全てを実際に反映し、なおかつ僕の音楽になっていて、一人一人のピアニストの個性がバッチリ出る曲、と言う
ものを目指しました。映画を観るのが待ち遠しいです。

映画「蜜蜂と遠雷」 最高峰のピアニスト達による映画史上最も至極で贅沢な“音”が鳴り響く!!  

 

私は再び庄司紗矢香さんがFBで紹介してくれた美しい文章を思い出しました。

 

“Une rencontre cependant est plus qu’une addition des choses. Comme une mélodie qui, n’étant nullement
une accumulation de notes, est formée de la consonance entre les notes
‘Je cherche les notes qui s’aiment’, disait Mozart. ”  ~ F.Chen (S)

「夕陽の美しさはまさに、これらの要素の出会いの中にあるのです。
出会いとはしかし、物事を足していった総和以上のものです。
ちょうどメロディが決して音符を積み重ねただけのものではなく、音符の間の調和からできている様に ー 
“ぼくは愛し合う音符を探しています” とモーツァルトは言っていました。」
〜 F.チェン「美についての五つの瞑想」より(S)
 
 
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『未来よ こんにちは』・・・L'avenir

2023-04-06 11:57:15 | movie

ずいぶんと前に文化村に映画を見に行ったとき、”David Bowie is”が2017年だからその時だったか、この映画を見たい
と思ったことがありました。しっかりチラシを持って帰っていたけれどそのままになっていました。最近イザベル
ユペールの映画を借りて、この映画のことを思い出しました。

彼女のために作られた映画のようですが、音楽や映画の作り込みがとてもよくできていました。折々に出てくる哲学書の
言葉なども良かったし、少しドイツっぽいところもあったかもしませんが、何より考えることの大切さを知っている国民の
映画でした。高校の哲学の授業の生徒に考えさせる授業は私たちも昔はそれに近い授業でしたが、今でもフリーディスカッション
で意見を述べ合う授業があるのかしらと思ったりしました。型にはまらない思考を尊ぶフランス。

母親の死とか、夫の浮気とか、出版関係から外されたり、ラディカルな教え子からの批判・・ いろいろなことがおこるけど
淡々と進むストーリー。孫の誕生にあとへ続く救いがあったような・・・

 

『未来よ こんにちは』予告編

2016年製作/102分/PG12/フランス・ドイツ合作
原題:L'avenir

監督:ミア・ハンセン=ラブ
脚本:ミア・ハンセン=ラブ
出演:イザベル・ユペール、アンドレ・マルコン、ロマン・コリンカ、エディット・スコブ

2016 年/フランス/102分/原題:L’Avenir/英題:Things to Come/PG12

©2016 CG Cinéma · Arte France Cinéma · DetailFilm · Rhône-Alpes Cinéma

パリの高校で哲学を教えているナタリーは、教師の夫と暮らし、充実した人生を送っていた。ところがある日、夫からは離婚
を切り出され、そして年老いた母も他界。ナタリーは自分の人生をあらためて見出していく。第66回ベルリン国際映画祭で銀熊賞
受賞。「最初はただ美しい映画を観ているつもりでも、最後には飾らない美しさ、決して圧倒されることのない複雑さ、そして
自分を高めてくれる意味の豊かさに圧倒されることになる」。(セルジュ・カガンスキー、「レザンロキュプティーブル」誌)

                                              東京日仏学院HPより

 

 

 

 

確か自殺した母親の葬儀で読んだと思うパンセ。

パスカル パンセ 229

自然の中に神の印を見なかったら、私は神を否定しただろう。
至るところに創造主の印を見たら、信仰に安住しただろう。
だがどちらの印も見えない状況で、私は憐れむべき存在だ。
もし神が自然を支えるなら、自然が神を示すことを、
自然の与える印が偽りなら、示さぬことを、
進むべき道をすべて語るか、何も語らぬようにと願った。

だが私は自分の正体も、何をすべきかも知らず、自分の状態も義務も知らない。
私の心は真の善に従うため、それへと向かっている。
永遠を得るには安いものだ。

 

何か心にすとんと落ちたジャン・ジャック・ルソーを高校の授業で語るシーン。

ジュリまたは新エロイーズ ジャン・ジャック・ルソー

人は欲望があれば幸福でなくとも、期待で生きられます。
幸福が来なければ、希望は伸び、幻想の魅力が情熱の限り続くのです。
かくて、その状態を充足し、不安感が一種の歓びとなり
現実を補い、現実以上の価値となります。

何も望まぬ人は不幸です。所有する一切を失うと同じ。
幸福を手に入れる前こそが幸福なのです。

愛する人の不在を補うために
非現実的だけど効果的で純粋なる心の歓びを見出そうとする
ジュリーやルソーのように想像力に富む人は幻の満足感から
肉体の歓びに代わるほどの真の慰めを得られるのです。

 

音楽がどれも素晴らしかったです。

Auf dem Wasser zu Singen by Schubert

シューベルトの歌曲「水の上で歌う

水の上で歌う(Auf dem Wasser zu singen)
作詞:シュトルベルク(Friedrich Leopold zu Stolberg-Stolberg/1750–1819)

波の上 きらめく光
白鳥のように小舟は揺れ行く
喜びに波は穏やかにきらめき
私の心も小船に乗せて
波間に降り注ぐ天からの光
船のまわりで夕陽は踊る

西の木立の上から
夕陽が優しく微笑み
東の木立の下では
夕陽の中で葦がそよぐ
天の喜びと木立の静寂
夕焼けに心安らぐ

露にぬれた翼 揺れる波 時は過ぎ行き
きらめく翼 朝も過ぎ行く
昨日も今日も 時は去り行く
私もいつか輝く翼で舞い上がり
変わりゆく時へ己を消し去る時まで

 

Donovan - Deep Peace

 

Deep peace of the running wave to you
Deep peace of the flowing air to you
Deep peace of the quiet earth to you
Deep peace deep peace
Deep peace of the sleeping stones to you
Deep peace of the wandering wind to you
Deep peace of the flock of stars to you
Deep peace deep peace
Deep peace of the eastern wind to you
Deep peace of the westeren wind to you
Deep peace of the northern wind to you
Blue wind of the south to you
Pure red of the whirling flame to you
Pure white of the silver moon to you
Pure green of the emerald grass to you
Deep peace deep peace

 

Unchained Melody (Remastered)

 

 

「未来よ こんにちは」:後戻りできない時間の中で数々の人生の困難に直面する一人の女性の姿を、日常を通して深く洞察する人間ドラマ

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ハンナ・アーレント ・・・ Hannah Arendt

2023-04-03 23:55:11 | movie

重たい映画でしたが、見ごたえありました。
昨年11月19日ころ見たらしいのですが、いつかまとめなければいけないと思いながら、タブにずっと明星大学の
服部裕教授の記事を置いたままにしておいたのですが、瞬間で消えてしまって再度読み込むともうその記事は
削除されていました。

民族と人間~映画『ハンナ・アーレント』鑑賞雑感

【Vol.81】 2014.5 服部 裕 ... この映画は、ユダヤ人哲学者ハンナアーレント(1906年~1975年)がイスラエルで
行われたアイヒマン裁判(1961年4 ...
 
というものでしたが、もう一度読んでからまとめておきたいと思っていたものでした。
それで今のうちにまとめないともうできないような気がして、改めて検索して言葉を集めたりしました。
PCを自分の記憶装置のように使うのはよくないと思いました。自分の頭の中にしまわなければ、頭の中は
空っぽになってしまうでしょう。
 
ハンナ・アーレント アメリカに亡命したユダヤ系ドイツ人哲学者がイスラエルでのアイヒマン裁判の
レポートをニュー・ヨーカー誌に発表。今のロシアの侵攻も戦争裁判になったら個人が裁かれるのだろうかと
思ってしまうのだけど、戦争を起こした国の指導者でもなければ、それを黙視した普通の人々にこそ悪が
あるということなのだろうか・・ 戦争犯罪で裁かれるのはだれかとかアイヒマンがユダヤ人に確保され
イスラエルで裁判を行ったことにも問題はあるかと思うけどそこには集中させず、一人一人がこれから
どう立ち向かうべきかの考察になっていて、よくまとめられた映画でした。
 
自ら強制収容所での経験もあるハンナの冷静な判断に驚くばかりです。
自分で考えることの大切さを伝える映画でした。人類を破滅から救うのは考える力です。
 
誰からも敬愛される高名な哲学者から一転、世界中から激しいバッシングを浴びた女性がいる。彼女の名は
ハンナ・アーレント、第2次世界大戦中にナチスの強制収容所から脱出し、アメリカへ亡命したドイツ系ユダヤ人。

1960年代初頭、何百万ものユダヤ人を収容所へ移送したナチス戦犯アドルフ・アイヒマンが、逃亡先で逮捕された。
アーレントは、イスラエルで行われた歴史的裁判に立ち会い、ザ・ニューヨーカー誌にレポートを発表、その衝撃的な
内容に世論は揺れる…。

「考えることで、人間は強くなる」という信念のもと、世間から激しい非難を浴びて思い悩みながらも、アイヒマンの
<悪の凡庸さ>を主張し続けたアーレント。歴史にその名を刻み、波乱に満ちた人生を実話に基づいて映画化、半世紀を
超えてアーレントが本当に伝えたかった<真実>が、今明かされる─。
 
 
 

映画『ハンナ・アーレント』予告編

 

「(アイヒマンを)罰するという選択肢も、許す選択肢もない。彼は検察に反論しました。『自発的に行ったことは何もない。
善悪を問わず、自分の意志は介在しない。命令に従っただけなのだ』と。世界最大の悪は、平凡な人間が行う悪なのです。
そんな人には動機もなく、信念も邪推も悪魔的な意図もない。(彼のような犯罪者は)人間であることを拒絶した者なのです」

「アイヒマンは、人間の大切な質を放棄しました。思考する能力です。その結果、モラルまで判断不能となった。思考が
できなくなると、平凡な人間が残虐行為に走るのです。〝思考の嵐〟がもたらすのは、善悪を区別する能力であり、美醜を
見分ける力です。私が望むのは、考えることで人間が強くなることです。危機的状況にあっても、考え抜くことで破滅に
至らぬように」

 
 
 

~状況に流されず自ら考えることの大切さ~

 1960年,元ナチス親衛隊のアイヒマンがイスラエルの諜報機関に捕まる。彼は,多数のユダヤ人を強制収容所に移送
する責任者だった。翌年,米国在住のドイツ系ユダヤ人で哲学者のハンナ・アーレント(1906~1975)がイスラエルに
渡航する。人道に対する罪に問われたアイヒマンの裁判を傍聴するために。彼女は,ホロコーストの原因を哲学的に追究し
1963年にレポートをニューヨーカー誌に発表するが,その反響は凄まじいものだった。

 ハンナは,人間はなぜこのような残虐なことができるのかを考える。裁判シーンでは実際のアイヒマンの言動が記録され
た映像が使われている。彼は,根源的な悪ではなく,上官の命令を忠実に遂行しただけで,自ら考える意思を持たなかった。
ハンナは,実験により証明されて今では周知の“悪の凡庸さ”を指摘したが,その時期が早すぎた。更にユダヤ人指導者がナチス
に協力したと指摘し,ユダヤ人を裏切ったナチス擁護者と非難される。

 彼女は,自らも収容所から逃げ延びた厳しい経験をしたが,感情に流されず論理的に考察した結果を発表した。それが家族
を殺され何とか生き残ったユダヤ人の心情を逆撫でしてバッシングを受ける。民族(ユダヤ人)や団体(ナチス)ではなく
友人を愛したハンナが,その友人にも背を向けられる。それでも屈しなかった彼女は,傲慢でも冷酷でもなく,自ら思考する
という強固な信念に貫かれていた。思考を映像化した希有な作品である。

 ハンナが人生最大の苦境に置かれた時期を切り取っており,その着眼点はいい。ただ,ハンナの回想シーンで,後にナチスに
入党したハイデガーとの恋愛も描かれる。彼女の別の側面を示したものといえるが,この過去が彼女の思考に何らかの影響を
及ぼしたかも知れないとの疑問が浮かんでくる。この点を除けば,論理的に構築された見応え十分の作品だ。ハンナが自らの
立場を集約する最後のスピーチが,クライマックスに用意されている。
                                                  (河田 充規)

2012年製作/114分/G/ドイツ・ルクセンブルク・フランス合作
原題:Hannah Arendt
配給:セテラ・インターナショナル

スタッフ・キャスト

ハンナ・アーレント     バルバラ・スコバ
ハインリヒ・ブリュッヒャー   アクセル・ミルベルク
メアリー・マッカーシー     ジャネット・マクティア
ロッテ・ケーラー    ユリア・イェンチ

 


映画「ハンナ・アーレント」オフィシャルサイト「作品紹介」

映画レビュー ハンナ・アーレント

 
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ショーシャンクの空に ・・・ The Shawshank Redemption

2023-03-21 23:39:02 | movie

ショーシャンクの空に

1994年製作/142分/G/アメリカ
原題:The Shawshank Redemption

 

解説 S・キングの“非ホラー小説”『刑務所のリタ・ヘイワース』の映画化。無実の罪でショーシャンク刑務所に入れられた
主人公アンディ。もの静かな彼は、やがて自らの根源的な力と職能を武器に、刑務所の仲間たちに尊厳を取り戻していく。
物語はそんなアンディの姿を親友レッドが語っていく形で綴られていく。レッドを演じるM・フリーマンの穏やかな中にも
圧倒的な存在感をにじませた演技は、アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞にノミネートされ高い評価を受けた。

スタッフ
監督・脚本:フランク・ダラボン
製作:ニキ・マービン
製作総指揮:リズ・グロッツァー デビッド・V・レスター
原作:スティーブン・キング
撮影:ロジャー・ディーキンス
美術:テレンス・マーシュ
編集:リチャード・フランシス=ブルース
音楽:トーマス・ニューマン

キャスト
アンディ・デュフレーン:ティム・ロビンス
エリス・ボイド・"レッド"・レディング:モーガン・フリーマン
ヘイウッド:ウィリアム・サドラー
サミュエル・ノートン:ボブ・ガントン
ブルックス・ヘイトレン:ジェームズ・ホイットモア
デイビッド・プローバル

 

映画 ショーシャンクの空に 予告編

 

 

1年近く前に録画して見ていなかった「ショーシャンクの空に」を九段フェスの発表会から帰ったあとに
見たくなってやっとちゃんと見ました。出だしだけ少し見ていたものです。

このポスターはよく覚えていますが、もう29年も前の映画だったのですね。
そのころの映画のリマスター版がどんどん出てきているようです。

主役の二人がすごくよかったです。M. フリーマンの語りでストーリーが展開されていくのですが、
ティム・ロビンスの余裕のある表情がとてもよかったです。

スティーヴイン・キングの原作、さすがです。
思いがけない展開に不意をつかれ涙が出てきたところもありました。映画で泣くのは久しぶりでした。

30年近く前でも世の中の変化について感じているのだから今だったらもうよけいそうですね。
人間らしく生きるとはとか・・

心に残ったセリフがたくさんあり、ネットで見てもこんなに書かれている映画は珍しいです。
私も見ながらメモを取っているのですが…助かります。

自由を奪われた人間がつかの間の人間らしさを感じる瞬間が労働の後の特別な計らいによる
ビールを飲むシーン、そして音楽が、モーツァルトの音楽が天から舞い降りてくるシーン、
50年近く刑務所にいて仮釈放されて行きたくない外の世界に行った老人受刑者の切ない言葉・・・
人間の尊厳も考えさせられました。

 

仮釈放されたブルックスの手紙 
ブルックスは飼っていたカラスを自由の世界に放し、出獄後世の中に適合できず、自ら死を選びます。

I can’t believe how fast things move on the outside.
シャバではなにもかももの凄い速さです。
I saw an automobile once when I was a kid ..but now they’re everywhere.
子供の頃、自動車は珍しかったのに今はもうどこにでもあります。
The world went and got itself in a big damn hurry.
世の中がやたらせわしくなっています。

 

図書係となったアンディがスピーカーで「フィガロの結婚」第3幕の「手紙の二重唱」を流したのを
聞いてRedの言葉

 

I have no idea to this day what those two Italian ladies were singing about.
今日に至るまで俺はあのイタリア人の女性が何を歌っていたのか知らない。
Truth is , I don’t want to know.
ほんとのこと言って、知りたくない。
Some things are best left unsaid.
わからない方がいいこともある。
I like to think it was something so beautiful it can’t be expressed in words and makes your heart ache because of it.
何か言葉にはできない素晴らしいことを歌ってる。だから聞くものの胸がキュウっとなる。そう思ってた方がいい。
I tell you, those voice soared higher and father than anybody in a gray place dares to dream.
あの歌声と共に聞く者すべてが限りなく高い空の果てに舞い上がっていく感じだった。
It was like a beautiful bird flapped into drab cage and made those wall dissolve away.
まるで美しい鳥が灰色の檻に舞い降りあの高い塀を消し去ってくれたようだった。
And for briefest of moments every last man at Shawshank fell free.
ほんの一瞬、ショーシャンクの全員が自由だった。

この辺から涙が出そうになってきました。最初の感動的なシーンです。
音楽が降りそそぐ印象的な場面です。

 

音楽を流したので、光のない懲罰牢に2週間も閉じ込められて戻ってきたときのアンディの台詞

長い時間よく耐えられたという仲間に対して、モーツァルトと言う友達とずっと一緒にいたと答えるアンディ。
音楽は心と頭の中にあると・・・

It was in here.  In here.  That’s the beauty of music. They can’t get from you.
(頭を指さして)ここにいた。(胸を指さして)ここにも。そこが音楽の良いところで、誰にも奪えないんだ。

 

音楽の意味について。

Here’s where it makes the most sense.
ここだから意味があるんだ。
You need it so you don’t forget.
わすれないために必要だ。
Forget?
わすれない?
Forget that there are places in the world that aren’t made out of stone.
人の心っていうのじゃは決して石でできているわけじゃないんだ。
There’s something inside that they can’t get to that they can’t touch. That’s your ‘s.
そこには誰も、絶対に、手を触れることも、奪うこともできないものがある。
What are you talking about?
なんのことだ?
Hope.
希望。

ここでとうとう泣いてしまいました。

 

この言葉に対してレッドはHopeはここでは危険なものと答えます。

 

犯罪者ですが、自由を奪われて生きるのに慣れてしまった人々。仮釈放が決まっても社会でやって行けるかどうか
不安に思う。何十年も社会から隔離されて暮らしていて。

刑務所だから自分はみんなにいろいろなものをこっそり調達してあげられるが
シャバに出たらなんでも電話1本で用が足り、自分ができることはないと話すレッド。

 元銀行員だったアンディが所長の不正処理の手伝いをさせられ、自分の冤罪を晴らす機会をつぶされたアンディの言葉

I guess it comes down to a simple choice.
選択肢は二つだけ。
Get busy living .. or get busy dying.
必死に生きるか、必死に死ぬかだ。

 

アンディは脱獄に成功し、刑務所内での不正を世に知らせ、メキシコへと逃れることに成功する。

Sometimes it makes me sad, though Andy being gone.
時々寂しくなる。アンディはもういない。
I have to remind myself that some bird aren’t meant to be caged .
俺は自分に言い聞かせる。籠に閉じ込めちゃいけない鳥もいるんだと。
Their feathers are just too bright.
羽があまりに美しすぎる。
And when they fly away the part of you that knows it was a sin to lock them up does rejoice.
それが飛び去ったとき、自由になって良かったと喜ばなきゃいけないんだと。
But still the place you live in is that much more drab and empty that they’re gone.
とは言っても、鳥が飛び去ったあとの世界は前よりくすんで侘しい。
I guess I just miss my friend.
ようするに俺はアンディに会いたかった。

 

仮釈放されたレッドはアンディの手紙を見つけ、メキシコへと向かう。
「何にも縛られず長い旅に出る。自由な人間の希望を持とう。」

 

アンディの手紙より

Remember, Red, hope is a good thing, maybe the best of things. 
覚えてるね? 希望はいいものだよ。たぶん最高のものだ。

And no good thing ever dies.
いいものは決して滅びない。

 

 

再会のラストシーンまで見ごたえのある映画でした。

 

『ショーシャンクに空に』名言や手紙(英語)の内容をご紹介!

 

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