眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ラッキー・モーニング

2021-06-09 23:54:00 | 短い話、短い歌
 駅ナカの朝は激しい競争社会だ。無難な店づくりをしているだけでは、置いていかれる。斬新で人目を引くサービスがないと生き残ることは難しい。

「おめでとうございます!
 ラッキー・パンをお選びいただきました!」

 そうして私は特等席へと案内された。誰よりも高くゆったりとした席で、手厚いおもてなしを受けることになった。スープに玉子にウインナー、お供のわんちゃんまでついてきた。

「よろしければお読みください」
 週刊誌は好みではなかった。

「ナンバーとかあります?」
「ナンバーズでしたらございますが」
「それでもいいや」
「すぐお持ちします」
「それからこの子、散歩に連れて行ってあげて」
「かしこまりました」

 下を通る人が羨望を込めて私の席を見つめて行く。幸運はトングの行方次第。明日はあなたにだってチャンスがあるかも。

「サービスのギターソロでございます」

 凄腕のギタリストが冷めかけたコーヒーをもう一度沸騰させた。やはり朝はロックに限るな。

「痛くないですか?」

 心地よい指先が先入観に凝り固まった肩を優しくほぐしてくれる。これも私のたった1つの選択によって与えられた褒美だ。

「デザートの抹茶アイスでございます」
「ありがとう」
 まぶしい光を浴びながら私の朝は終わろうとしていた。

「それではこれを着てください」

「えっ? なんで」

「あなたは1日店長に就任されました」

「えーっ、聞いてないよ!」

「日当は40万となっております」

「よろしくお願いします!」
 1ヶ月でもいいけど……。

「コラーッ! 店長を呼べ!」

「下でお客様がお呼びです。1日店長」

「えーっ、私?」




人流の歪みに浮いたボーナスの元を辿ればみんなのがまん

コメント
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