眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

カイトヘ飛ばせ

2021-06-22 10:59:00 | 短い話、短い歌
 おじいさんは山に芝刈りに、おばあさん川に洗濯に……。そんなのおかしいと言って君は出て行った。私は布団の中に潜り込む。方法は違うけれど、お互いにとっての旅だった。たくさん眠るほどに遠くへ行った人に会うことができる。そこには忘れかけた何かが残っていて、失われた自分を取り戻すことができる。

(何も置かないでください)
 貼り紙の効力は半月ばかり続いた。
 新しい作業スペースの誕生。しかし、いつまで経っても何も始まらなかった。仕方なく地べたで泣いている手荷物は多くあった。閉店が決まると次々と処分品が集まってきてスペースを占領した。いつの間にか、あの貼り紙も姿を消していた。そして、もうすぐ私たちも……。

「もしも明日オリンピックが開かれるとしたら、何の問題もなく開かれるものとお考えですか?」

「外出そのものは悪くないと聞いております。まずは若者と酒類の販売に重点を置きながら、広く専門家の意見も聞いて様々な観点から総合的に判断した上で、できる限り早急に人流の抑制に努めて参りたい……」

 消してくれ!
 メルヘンの奥に足を踏み入れていた君が、今はいちばん近くにいた。倉に眠っていた絵画を売りに出すと、それなりの額になったようだ。君はその中に実験的に1つの自作を交ぜてみたのだが、それは50円の値がついた。君はいったい何に怒っていたのか。まだ途中だった多くの作品を一度に捨ててしまったのだ。

 君が絵を持って行ってしまったので、私の詩は頭を失ってしまいました。今は文字だけ。それは孤独になったという意味です。

「着飾っていなければ見つけられない」

 私はそれを信じているわけではない。
 だけど、失った何かは大事にしていたものだった。




愛してた脈に流れる詩を切って
夜行列車のカイトヘ飛ばせ

(折句「あみじゃが」短歌)
コメント
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