「あなた熱すぎて疎ましいの。私たちはクールな歌会だから」
クラスタに属するのは得意じゃない。
独りで落ち着いてコーヒーを飲もうじゃないか。
誰にも邪魔されない時間。それこそが僕の望むもの。
「当店のどんなアイスティーも、お客様の熱を下げることができません。お引き取りを」
そんな……。
僕の望みは温かなコーヒーだった。
まだ行くところはある。
世界で一番心地よく迷子になれる素敵な場所が。
ピピッ! ピーーーーーーーーーーッ!
店員が僕の額を光で撃ち抜いた。
「申し訳ございません。
当書店のいかなるホラー小説をもってしても、
お客様の熱をお下げできません。
さようなら」
すべての希望を失って街をさまよい歩いた。
たどり着いた病院の先で、僕は倒れた。
もう、これで終わりだ。
目を閉じれば再びかえってくることはできないだろう。
遠退いていく意識の向こうに、ホンダ・カーブの影を見た。
どうして、ここにいるの?
僕はスタジアムの袖に伏せながら、白熱の試合を眺めていた。
ホンダ・カーブの強烈なシュート!
目覚めた瞬間、背中に羽が生えている。
僕、鳥に生まれ変わったんだ!
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一閃のシュートに打たれ生まれ出た人生はゴールへ向いた旅