思うままに野原を駆け回っていた頃は、怖いものなんてなかった。いつでも自然を友とし、風を味方につけていたのだ。結ばれる手はあっても、自分に牙を剥くようなものは存在しなかった。恵まれた環境に気づくこともなく、時がすぎた。初めて都会に出てわかったことは、友を見つけることの難しさだった。気づいた時には、激しい競争の渦に巻き込まれていた。
「お兄さん後ろ」
馬上の僕を見上げながら店の人が言った。
「えっ?」
「矢が刺さってますよ」
またか。さっきから何者かに追われているような気がしたのだ。しかし、分厚いリュックが我が身を守ってくれた。
「ありがとうございます」
番号を伝えてたこ焼きを受け取った。熱い内に届けることが、現在の僕の仕事だ。危険が多くても今は前に進む以外にない。僕らは人馬一体となって国道に躍り出た。
・
突き刺さる背中の痛み保証なき馬主となって我が道を行く