オークションで購入した FT-900 が
「全バンド UNLOCK表示」
なので修理して欲しいとの依頼がありました。
オークションで不動作品を購入する目的は
・修理して使う
・部品取りとして使う
のいずれかだと思います。
今回のオーナーさんがどういう目的で購入されたかまでは存じ上げません。
Googleなどで、PLLのUNLOCKを検索すると、トリマを交換したとか、
単にトリマをちょっと回したら動作したと沢山出てくるので
この部類と思って購入される方もあるかと思います。
オークションは使わなくなったから、どなたか使ってと欲しいと、
良い物が多く出ているのでしょうが、中にはつつきまわしてどうにもならないので
出品するとか、複数台買って動作基板だけ組み合わせて1台仕上げて
残った基板で動かない基板同士を組み合わせて、出品されるものもあります。
私も昔、TS-830Sを購入したら、1箇所直すともう1箇所の不具合が見えて来て
そこを直すとまたもう1箇所不具合が出て来てと、聞いていない不具合が
5箇所以上あったのをつかまされた事があります。
今回のメールを頂いた時も、その部類ではないかと疑いました。
PLLのUNLOCKが出ている間は、受信部は音が出ない様に、送信部は
送信出来ない様に制御されていますので、一切チェックが出来ません。
PLLのUNLOCKが直ったら、受信出来なかった、送信出来なかった
最悪のケースとして送受信共に出来なかったなんて十分あり得ます。
オークション品はリスクが高いので依頼のあった部分の不具合個所のみの修理で
それ以降は修理の範囲外である旨を伝えましたが、それでも
PLLのUNLOCKの修理をお願いしたいとの事ですので、お送り頂く事にしました。
届いて通電確認すると、仰るとおり全バンドPLLのUNLOCK。
UNLOCK信号を出す個所が2箇所あるので、どちらかを調べ
その原因を特定し、不良部品を交換しました。
スピーカーからザーとノイズが出始めたので、SGから信号を入れて見ると
予想通り受信出来ませんでした。
送信はどうか?危険ですのでファイナルユニットは切り離し、その手前で信号見ると
どうやらそれらしい電波は出ているようです。
問題は受信部、さあどうするか....
周波数関係はどうか見ると、あちこちの信号の周波数がズレています。
PLLのアンロックを直そうと、測定器無しでトリマ、コイルのコアをグルグル回されたようです。
仕方ないので、サービスマニュアルに従い調整して行くと、コイルのコアが割れていて
回りません。専用ドライバーではなく、金属ドライバーで回されたのでしょう。
あ、しまった、オークションで売っちまえ!かな?
そのままでは、周波数が安定しないのでどうにか抜き取り、破片を除去。
両側に調整溝のあるタイプでありますようにと祈りながらひっくり返すと、
ラッキー 当たりでした。これで調整が再開出来る。
PLL関係を一通り調整すると、感度良く信号を受信するようになりました。
ここでファイナルユニットもつなぎ、ダミーロード相手に送信すると、全バンド100W出ており、
問題ありません。
各機能を一通り調べようと確認していると、コンプレッサーのスイッチを入れると
トークパワーが上がるはずが、信号が消えます。
調べて見ると、背面のコンプレッションレベル設定のボリュームが破壊されています。
外部から衝撃を与えられたようです。
軸の長い特殊ボリュームですので、入手不可。半固定ボリュームに置き換えるとか
VOX関係同じタイプのボリュームと入れ替えて、頻度の低いボリュームを半固定ボリュームにするとか
手はありますが、今回の修理範囲外ですので、OFFでお使いいただく事に。
さらに進めて行くと、オートチューナーが働きません。
必ずHI SWRのメッセージを出して終了します。
これも現象を報告してOFFでお使い頂く事に。
このようにオークション品は、
「ooが壊れています。」
と書かれていたら、
「ooだけが壊れている」
と勘違いしない様にしないといけません。
オークション品のハズレ品をまともに動作するように修理するには
かなりの時間を要しますので、最近では部品取り用以外は
あまり手を出さないようにしています。
しばらく連続通電して様子を見ましょうか。