じやのひれ「別バージョン」
鳴門の渦潮伝説とは別に、この話には「別バージョン」があってその展開が面白い
つまり潮埼の「蛇穴」(洞窟)は、海とは反対側の内陸部に延びていて、6キロから
7キロも離れている諭鶴羽(譲は)山系の山間(やまあい)の北阿万稲田南村に
位置する上の池、下ノ池に通じていると信じられていたのです。
この地下道を伝わって阿万潮崎に住む大蛇が時々池にも現れたとされるのです。
海で昼寝したり池に現れたり、よほど遊び好きの大蛇だったようですね、遊びすきの
上にいたずら好きだったようです。
ある朝、山へお盆のシキミを取りに行った農夫が、池のホトリに差し掛かると、霧の
たちこめた池の水面(みなも)からスート、見たこともない美しい娘が現れた。
身の丈、なんと十丈(約30m)あまり・・・
その後も「たまげた~」「腰をぬかした」などの目撃談は後を絶ちません。
このため池はいつしか「美女の池」と呼ばれるようになって、今も大日ダムの
源流にその名を残しています。
あるとき村を訪れた法師曰く「大蛇は川で100年、池で100年、海で100年の
修行を積んでようやく龍になり竜巻を起こして天に昇る。
池に現れた美女は大蛇が修行中、退屈しのぎに大きな娘に化け里人をびっくり
させてのであろう」と語ったそうな、美女池にも大きな深い洞窟があったため、
「潮﨑」の磯の洞窟と互いにつながっていると人々は信じ込んだのでしょうね。
この話は南淡路の村里で口伝えに語り継がれてきたもので、お盆には、ご先祖様に
シキミをお供えするなど、土地に伝わる習慣を大切にする、心優しい夢のある子に
育つようにとの願いも籠められたのでしょうね。