一昨日、2月4日に開催され“たネクストリボン2021”の見逃し配信を視聴した。
都心の満席になったホールで小さなテーブルを出し、コートを膝に置き、隣の方に気を遣いながら肩をすぼめて小さくなってメモを取りながら聴くのではなく、自宅のPCでリラックスしながら視聴出来る有難さに改めてコロナ禍の皮肉を感じる。
「日本はいま、生涯で2人に1人ががんになり、年間死亡者の死因の3割をがんが占める時代です。一方でがんは、治療やその後の検査を受けながら「付き合っていく病」に変わりつつあります。定年延長や女性の社会進出で、男女ともに働きながらがん治療をする人が増えています。がん対策に力を入れる企業、働き方改革やダイバーシティー推進、健康経営を積極推進する企業の事例をご紹介 しながら、課題も共有します。そして、誰もがともに働ける社会のあり方について議論していきます。」というイベント全体の触れ込みは昨年と同じだ。
「がんとともに働く」「がんとともに生きる、寄り添う」をテーマに、初めてオンラインで開催されるイベントは例年通り2部制だ。ホットな悪性リンパ腫サバイバー、フリーアナウンサー・笠井信輔さんと、ベテラン精巣がんサバイバー、朝日新聞・上野創さんが進行役だ。
1部は2時間強のシンポジウム 「コロナ禍におけるがんとの共生を考える」。
国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター長 国際診療部長の大曲貴夫先生と、日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之先生の鼎談。コメンテーターは朝日新聞の辻外記子さん。
コロナ禍の中でどのようにがんと向き合い共生していくのか、がんや感染症の専門医をお招きし、視聴者が知りたい情報を発信。また企業と社員それぞれの視点からがんと就労に関する様々なご意見をうかがい、がんになっても働き続けられる社会の実現を目指しますというもの。
大曲先生はリモート出演で、勝俣先生と辻さんがアクリル板を間にお話しされる。
お二人のお話を伺いながら、化学療法中のがん患者だからといってコロナウィルスを必要以上に怖がることなく、正しい情報をきちんとキャッチして、正しく恐れることが必要だと改めて思う。そして、この状況でも変わりなく新しい治療が続けられてきた今の環境を改めて有難く噛み締める。大貫先生からは、今出来ることをきちんとこなしていければ、必ず終わりは来る、乗り切れるという心強い言葉を頂いた。
続くパネルディスカッションは「徹底解剖、がんとコロナのリアル」と称して、引き続き勝俣先生と認定NPO法人マギーズ東京共同代表、一般社団法人CancerX共同発起人・理事の鈴木美穂さんと、電話健康相談サービス会社社員、一般社団法人がんチャレンジャー代表理事の花木裕介さんがご登壇。コメンテーターは進行役も務める上野創さん。
日々患者と接する医師、感染症の予防対策・新しい働き方への対応を求められている会社、がんとコロナ、2つの不安を抱えながら働いているがん患者。オンラインがベースとなりコミュニケーションが希薄になっている現在、お互いが抱えている不安や疑問を共有し、それらをどう解決していくか考える機会を目指すというもの。
鈴木さんは乳がん罹患後、マギーズセンター東京を立ち上げた方だけれど、あなたは決して一人じゃない、いつでも私たちが待っていますという、まっすぐな呼びかけが心に迫った。マギーズセンター東京はコロナ禍にあってオンラインで様々なイベントや相談事業等も行っているという。一度訪れてみたいと思いつつ、都内とはいえ、我が家からは2時間はかかるであろうこの場所に、直接出向かずともオンラインでも繋がれることを確認し、心強く思った。
花木さんの「寄り添い方ハンドブック」を早々に取り寄せ、頷きながら拝読してからかなりの時間が過ぎた。コロナ禍で活動が制限されてご苦労なさっていることにも心が痛んだ。
1部最後は対談 「新しい働き方とがん対策」。一歩進んだ取り組みやがん就労サポートプログラムに取り組む企業、またコロナ禍の中で働き方改革を推進し、「がん」に限らず病気になっても柔軟に働ける先進企業事例を紹介するというもの。
サッポロホールディングス株式会社取締役福原真弓さんが登壇された。聞き手はハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎さん。“Can Stars”という社内コミュニティ活動がいいな、と思った。私の職場でも複数の患者がいる(小耳にはさむだけでも、だ。)けれど、こうした活動の立ち上げには旗振り役が必要だし、職場サイドの後押しが欠かせないものだ。がん罹患=退職ではない、ということを強く発信してほしい。
以上、2時間強はまさにてんこ盛りの内容。
続いて、リアルの参加だったら多分諦めて、帰宅の途に就いた筈の2部は1時間弱。
トーク&ライブ「がんとともに生きる、寄り添う」がテーマで、フリーアナウンサー・笠井信輔さんご夫妻をお招きし、家族でどのようにがんと向き合ったのか語って頂くというもの。聞き手は昨年も司会をされた大腸がんサバイバーの原元美紀さん。
前半15分ほど、キャンペーンソング「幸せはここに」を歌う木山裕策さん(17年前36歳で甲状腺がんに罹患し、39歳で歌手に。2019年までは歌手と会社員の二足の草鞋を履いていたが、現在は講演活動と歌手活動に特化されている。)によるネクストリボンライブがあった。何気ない日常がどれだけ大切なのか、を切々と歌い上げる木山さんの姿に皆元気をもらっただろう。
コロナ禍により、私たちサバイバーだけでなく、健康な方たちも改めて、当たり前だと思っていた何気ない日常の有難さを痛感することになったわけで、まさに時期にマッチした内容である。
笠井さんの闘病については色々なサイトで何となく読んではいたけれど、奥様と息子さんたちの接し方が改めて凄いなと思った。奥様はお母様を大腸がんで亡くされているが、その時は「諦めた」、でも今回は「大丈夫」と思ってのスタートだったという言葉が印象的だった。
1部、2部を通して3時間15分という長さは、自宅でリラックスしながら(半ばソファで寝っ転がって)の視聴でもかなりしんどく、消耗した。リアルでの参加は前半だけが精々だなと思う。改めて見逃し配信があって有難かった。
それにしても今回はなかなかエンハーツの副作用から復調しない。食欲はすっかり戻ったが、ふらつきがなかなか取れない。ずっとしゃんと姿勢を正していられず、すぐに横になりたくなる。これも副作用の倦怠感、疲れやすさなのかどうか。
立ったり座ったりすると耳鳴りや眩暈もある。起立性低血圧なのか。カイトリルもエルカルチンはいつも通り飲み終えた。今朝からは全ての副作用止めがなくなっていつものミヤBM、コデイン、タケプロンだけになっている。
とはいえ、不調の中でも先週は月曜日から金曜日まで在宅勤務も含めて出勤後、夕飯の支度が出来た。これは治療翌週の私としては快挙(一般の主婦の方からすればかなりレベルが低いだろうが)だ。
昨夜は夫と息子がZoomでリモート飲み会をしていたけれど、私は参加せず、ソファで横になっていたら、それを見た息子が大英博物館のミイラのようだと言ったとか。
乾燥したお天気の良い日が続いている。洗濯をするのが気持ちいい。緊急事態宣言下なかなかお出かけは出来ないけれど、何気ない日常に感謝しながら日々を過ごしている。