ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2015.11.20 何より安心出来る正しい発信を

2015-11-20 20:37:27 | 日記
 昨年の夏、このブログがご縁になって「がんステージ4を生きる」の取材でお目にかかることが出来た毎日新聞の三輪晴美さん。週明けの火曜日、彼女の記事に釘付けになった。今年も「がん社会はどこへ」の連載記事を精力的に書かれているのを眩しく拝見していた。
 ご自身がステージ4の同じ乳がん患者。治療を続けながら記者という立場で、間違った情報に振り回されている患者たち、ひいては社会に向けてこんなにも素晴らしい発信をされている。ご本人は全国紙の記者という職業から想像させるいわゆるバリバリの・・・、という形容が全く似つかわしくない、むしろとても柔らかい雰囲気を纏った方。その内に秘められた熱い思いに大いに勇気を頂いている。
 以下、長文だが、ご本人のご了解を得て転載させて頂く。

※   ※    ※(転載開始)

記者の目:がん治療法巡る論争=三輪晴美(生活報道部)(毎日新聞 2015年11月17日 東京朝刊)

◇誤った発信、許されない
 がんの治療に関する情報があふれている。中には、最新の医学とはかけ離れた治療法を勧めるものも多い。私は乳がんを患い、当事者の視点も含めてくらしナビ面で昨夏から「がんステージ4を生きる」、「がん社会はどこへ」の連載取材に携わってきた。現代医学の恩恵を受けている者として、日本人の2人に1人ががんにかかるとされる今、患者が安心して治療を受けられる社会を実現させたい。そのためにも、誤った情報発信は断じて許されない。

 ◇放置のすすめ、上がる反論の声
 近年、注目を集めるのが元慶応大医学部講師・近藤誠氏の著書だ。近藤氏は「がんは放置すべし」などと、現在のがん医療の根幹を否定する。2012年、文化的業績に対して贈られる「菊池寛賞」を受賞、同年出版の「医者に殺されない47の心得」は100万部を突破した。
 しかし現場の医師からは「本を読んでがんを放置した結果、病を悪化させる患者がいる」「救える命も救えなくなる」などの声が上がり、今年、近藤氏の主張に異を唱える本が相次ぎ出版された。
 私は08年末、進行度が最も高い「ステージ4」の乳がんと診断された。腫瘍は8センチ以上と異様な大きさで、リンパ節転移多数、さらに骨転移は広範囲で胸膜転移も疑われた。寝返りも打てず、医師は「頭の骨も溶けかけている」と指摘。手術不能で、抗がん剤と、がんの増殖などに関わる特定の分子のみを攻撃する分子標的薬の一つ「ハーセプチン」による治療が始まった。初回の投薬で、がん進行の指標となる腫瘍マーカーの高値は半減し、1年後に職場復帰。その頃には画像上、胸とリンパ節から腫瘍が消えた。以後、骨に腫瘍は残るが以前と同じ生活を続けている。
 そんな私が、近藤氏の著書の「ハーセプチンは認可を取り消されるべきだ」という一節に仰天したのは言うまでもない。ハーセプチンは転移増殖しやすいタイプの患者に有効で、乳がん治療の成績を飛躍的に向上させたとされる。
 先日、近藤氏に取材して話を聞いた。私の症例を話したが、近藤氏は「分子標的薬も効かない」と言う。「医師と製薬会社と厚生労働省が利権を守る世界があり、治験(新薬承認のための臨床試験)のデータはことごとく改ざんされている。治験の論文の筆者に製薬会社の社員が名を連ねること自体がおかしい」。さらに「抗がん剤は毒でしかない」と強調した。
 確かに、抗がん剤は健康な細胞も攻撃するため、副作用がある。「過剰な投与が命を縮める」との主張では、多くの医師も近藤氏に同意する。だからといって、近藤氏の全否定は放置できない。
 抗がん剤が「効く」とは、血液がんなどを除けば「治癒」ではなく、腫瘍が一時、縮小することを意味する。効果には個人差が大きく、投与の都度、「リスク」(危険)と「ベネフィット」(利益)をはかりにかけ、患者の価値観、人生観と照らし合わせて治療を進めるべきだとされる。実際、「副作用はあっても、それに見合う効果が実感できるので治療を続ける」という患者は多い。まれに副作用死はあっても、治療法が進んだ今は抗がん剤で恩恵を受ける患者が多いのではないか。
 そう問うと、近藤氏は「中には延命する人もいるだろう。しかし自分が知る多くは、転移もないのに再発予防で抗がん剤治療を始めたら、副作用で亡くなったといった話ばかりだ」と語気を強めた。

 ◇あふれる情報、賢く見極めて
 以前、評論家の立花隆さんを取材した際の言葉を思い出す。「医師は自らが診た患者の症例しか知らない」。だからこそ、世界の医師が症例を持ち寄り、がん撲滅のために英知を結集するのが科学のあり方ではないか。
 抗がん剤については、一般の人の間でも負のイメージが強い。医療不信もあいまって、「医師は不都合な真実を隠している」とばかりにネットでもデマが流れ続ける。
 「製薬会社の政治力は否定できない。でも、そこまでわかりやすい情報操作は不可能で、透明性も進んでいる」と話すのは、医師で医療問題を研究する東京大医科学研究所の上(かみ)昌広特任教授だ。ただし「抗がん剤が効かない人や適正な医療が受けられない人は近藤氏の本に救いを見いだす」と指摘する。「抗がん剤を正しく評価するには、国民一人一人が賢くならなければ」
 最近は遺伝子診断による「個別化治療」も進み、不必要な抗がん剤治療は避けられるようにもなってきた。医学は一歩一歩、進んでいる。
 がんになっても人生は一度きりだ。あふれかえる情報に惑わされず、信頼できる医師のもと、自らの命と悔いなく向き合っていく。その一助になる情報を今後も発信していきたい。

(転載終了)※    ※    ※

 もちろん、誰のものでもない自分の人生。何があっても抗がん剤治療は嫌、その結果を自分の寿命と受け容れて、それで本望だという方もいらっしゃるだろう。そういう方を池のほとりまでお連れすることは出来ても、口をこじ開けて水を飲ませるわけにはいかない。

 結局のところ、どういう治療を選択するのか(またはしないのか)はご本人の生き方なのだろうとも思う。全てご本人が納得されているなら外野としてはもはや何も言うことは出来ない。

 けれど、少しでも良くなりたい、少しでも長く生きたい、心の中でそう願っているのにもかかわらず、みすみす正しい情報から目を背け、日進月歩の医療の恩恵に被ることが出来なくなるとしたら・・・、まだまだ長らえられる命を落とすという取り返しのつかないことになってしまうとしたら・・・。そんな辛い経験をする人は少しでも少ないほうがいい。

 一人でも多くの方に、医学の進歩と今のがん治療の状況を知ってほしいと思う。そしてあまりに極端な話には「?」と立ち止まるちょっとした“間”を作って欲しいと切に思う。ごく普通の感覚でそのちょっとした“間”に冷静に考えられることこそ、病と、命と向き合っていくための真の賢さなのではないだろうか。

 偏った情報を信じ、そしてその情報に救いを求め、結果としてがんを進行させ、命を落とす人が一人でも少なくなってほしいと強く思う。

 さて、夏のヨガリトリートで「インストラクターのSさんと一緒に、Sさんの師匠であるインドの大先生のアシュラムに行ってみたい!」というメンバーの希望が、あれよあれよという間に実現の運びとなった。今日、ヨガの本拠地で瞑想を行うハピネスツアーが出発である。祝日出勤等もあり、体力的にも自信がない中、皆さんにご迷惑をかけては、ということで私自身は参加には至らなかったが、調整がついた数名のメンバーが代表で参加されている。
 “心に決めたことを言葉にして、考え方や行動を変えれば必ずや夢は叶う”ということを間近で見せて頂くことが出来、またしても心を強くした。私もリトリートの時に皆の前で宣言し、心に誓ったことを実現させていきたい、と改めて思う。
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