ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2014.12.16 ある小冊子から

2014-12-16 20:47:09 | 日記
 夫がお世話になった先輩が亡くなった。結婚式の披露宴にも来て頂いた方だ。
 夫が週末、伯父の一周忌法要で帰省していた折、訃報の連絡を受けたという。

 昨夜のお通夜で小冊子を頂いてきた。
 「あなたに見せるのもなんだけど・・・」と手渡してくれたのは、亡くなった先輩が緩和病棟で口述したものをご家族が綴ったというものだった。

 何篇かの文章が綴られていた中に、何十年も前、1歳の息子さんを遺して奥様が乳がんで亡くなった、という記載があった。
 夫もそのことを全く知らなかったらしい。
 いつだったか随分前に一緒に飲んだ時に「○○さん(夫のこと)と僕は似ているんだよな・・・」と言われたことがあったとか。
 その時は何のことだかさっぱりわからなかったそうだが、ああ、亡くなられた奥様は乳がんだったのか、そのため、より親近感を持ってくださったのかと、夫は腑に落ちた様子。

 僅か1歳の乳飲み子を遺して逝かなければならなかった奥様の無念はいかばかりだったろうと胸が痛むとともに、乳飲み子と遺された先輩がどれほど途方に暮れ、苦労されたのかも想像するに余りある。
 その後、今の奥様と結婚され、手を携えてお二人の息子さんを育ててこられたご様子。そのこともあって小冊子には、今の奥様への感謝の言葉が綿々と綴られていた。毎年頂く年賀状では、奥様とのラブラブな感じがいつも眩しかったほどだが、そんなストーリーがあったのだ、と今回初めて知ることになった。

 そんな方だったから健康には人一倍気を遣っていたという。今年2月、体調不良で病院にかかったものの半年ほど誤診され、診断が付いた時は既に手遅れ。手術も放射線治療も何一つ出来ず、抗がん剤治療も緩和の為だけということだったというから、その衝撃はいかばかりだったことか。
 けれど、その厳然たる事実を受け容れてからは、周囲の方たちにご自身できちんと挨拶をされていたようだ。

 夏頃だったか、夫が久しぶりに飲みに誘われた、と出かけたのは私も覚えている。帰宅した時に「これからはこうやって一緒に飲むこともあまりないかもしれないから・・・」と言われてご馳走してくれて・・・なんだか変な気がした、と言っていた。
 動けるうちにお別れをしてくださっていたのだろう。

 年内厳しいようだ、と漏れ聞いてから熟慮の末お見舞いはご遠慮した夫だったが、本当にあっという間のことで言葉もない。
 遺された奥様や息子さんたちのことを思うと本当に切ない。

 今はただ、あの気さくな笑顔を想い出しながらご冥福を祈るだけである。
 合掌。
コメント (2)
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