ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2013.7.9 遺伝子検査はしてみたけれど・・・

2013-07-09 19:59:59 | 日記
 ブロ友さんのご紹介で、肝臓で働く薬剤代謝酵素CYP2D6(シップツーディーシックス)遺伝子検査をモニターとして受ける機会を得た。
 なんだか舌を噛みそうな難しい名前の検査だが、要するにノルバデックス(タモキシフェン)が効く体質かどうかを調べるというもの。
 検査自体はとても簡単だ。送られてきたキットの説明書どおり頬の内側を綿棒で数回こすりとるだけ。採血をするわけでもなく、痛くも痒くもない。遺伝子の配列は変わらないから、生涯に1度だけやればいい検査だ。

 さて、今を遡る8年半前、初発の術後補助療法として、ノルバデックスを2年10カ月飲んだ。
 飲み始めた時は、術後日が浅く放射線治療中。体が弱っていたことも原因だったのか、アレルギー症状が出て顔中に真っ赤な湿疹が出来、ムーンフェイスどころかマスクをしても顔がはみ出すほどパンパンに腫れた。「(こんな症状は)初めて見た。」と驚いた主治医は暫しの休薬を指示した。
 今思い出しても、この時の辛さは手術そのものの辛さよりも酷かった。いつかも書いたけれど、こんな顔で5年間(当時は再発防止には5年間飲み続ける、というのが標準治療だった。)過ごさなければいけないのか、こんな顔では仕事に行けない、外になど出られない・・・と、この病気になって初めて家族の前で涙をこぼした。

 再開後は何とか飲み続けることが出来たが、副作用はそれなりにあった。気分が滅入ったり、細かい仕事の堪え性がなくなったり、イライラ、ホットフラッシュ、軽い吐き気、疲れやすさも気になった。そして半年ほどして生理も止まってしまった。一番大きかったのは副作用で卵巣が腫れ、卵巣嚢腫の開腹手術を余儀なくされたことだ。 医師は卵巣転移を疑ったが、幸いなことに転移ではなかった。けれどその半年後、結果として多臓器に多発転移した私が、今さらこの検査を受けたからといってどうなるものでもない。そう言ってしまえば元も子もない。
 だが、そもそもノルバデックスが体質的に効かなかったのか、それともある程度効いたからこそHER2強陽性であるにもかかわらず、2年10カ月の間再発転移が押さえられたのか興味があり、知ることが出来るならば知っておきたい、と思った。

 ノルバデックスはそのままの形で効くのではなく、CYP3A4とCYP2D6という酵素によって代謝を受け、最も活性の高いエンドキシフェンに変換され、乳がん細胞増殖抑制効果を発揮する。
 つまり、ノルバデックスを飲んでも、代謝されなければ効果は得られない。
 このCYP2D6遺伝子は他のCYP遺伝子に比べて基質特異性が高く、これまでに105種類もの遺伝子多型が報告されているそうだ。この多型頻度には人種差が存在し、欧米人と日本人では大分違うという。
 日本人では約7割が平均代謝(通常の投与量で薬の効果が期待できる)、約2割が低代謝(投与量を通常より増量することで効果が期待できる)、約1割が注意(代謝機能を一概に判定できないタイプのため、医師による投与量設定には最新の注意が必要)、約1%が代謝不可(治療効果が期待できない)、という分布になるようだ。
 担当の方の説明で、ホモ、ヘテロ等という遺伝上の言葉を聞きながら高校時代の生物の授業を思い出してしまった。

 特に重要とされる5個の遺伝子タイプを調べた結果、私は「低代謝」だとの判定。つまり、通常量のノルバデックスを飲んでも効果が出ないタイプだった。
 そうか、だから再発したのか、と何となく納得した。
 が、一緒に検査の結果を聞いたブロ友さん―同じく再発治療中―は「平均代謝」とのことだったから、詳細な分布の説明を受けるまではなぜ・・・という疑問が残ったようだった。

 結局のところ、こうした検査ではどんな結果が出たにせよ、100%すっきりはしないのだろうな、と思う。
 けれど、2005年2月当時この検査が出来て、あなたはノルバデックスが通常量では効かないタイプです、と言われていたらどうしていただろう。通常量でも副作用があったのだから、増量して数年にわたって服用し続けられたとはとても思えない。
 遺伝子検査といえば、最近のアンジェリーナ・ジョリーさんのこともこのブログで書いたけれど、結果としてあらゆる確率がゼロになるなどということはあり得ない。
 知ってしまったからこそ、ますます悩むことも多いのだろう。

 でも私は知ってよかった、と思う。先日この結果について主治医に報告をし、私の電子カルテにはCYP2D6検査結果が「低代謝」であることが書きこまれた。これまで色々な抗がん剤の副作用がやけに強く総花的に出現したのも、こうした肝臓の薬剤代謝が良くないからか、と素人考えの言葉を発したが、あくまでもこの薬に関するもので、汎用性はないとのこと。
 まあ、欠損だなんだと言われると、なんとなく余りいい気分はしない。勝手なものだ。
 それにしても、本当にテーラーメイドの治療が出来る時代が近いのだな、と思う。この遺伝子検査が出来るようになってからまだ2,3年だというが、これから長くこの病と付き合うことになる方たちには、こうした検査があるのだから、その結果を前向きに術後治療に活かせてもらえればいいな、と心から思う。

 言っても仕方ないけれど、それにしても暑い。
 一昨日、昨日は36度、今日も今日とて優に35度超えだ。昨夜の雷雨の後はアスファルトから湯気が立っていたし、今朝も強烈な日差しの下、地面が揺らめいている感じ。甲州市では39.1度を記録したとのこと。もう高熱である。
 今や四方八方に好きに伸び始めた中途半端な髪の毛である。その髪の毛を“カダフィ大佐”(息子談・・・)のようなガーゼの黒い帽子に押し込んでかつらを被っているから二重三重に暑い。かといって外してしまって素頭で出勤出来るような状態でもない。
 こんなに早く梅雨が明けて猛暑がやって来たのは想定外だったから、8月にかつら調整に行った時にソフトランディングで脱かつらを考えていたのだけれど・・・憂鬱である。

 そして息子はまたも“火曜日病”(確認してみたら、何やら体調を崩しがちなのが、どうも週の初め、火曜日である。)。
 昨夜は塾で帰りが遅かったが、今朝になって「ダルイ」と学校に行けなかった。こんなに暑いから、いくら若くても体がついていかないのだろう。日中も夜も学校や塾でずっと冷房にあたり、寝る時にも自室に冷房を入れていれば、朝だるくなっているのは当然だ。 結局午前中は寝てしまい、夕方クリニックを受診し、風邪で喉が腫れていると言われたとのこと。
 来週からは長い夏休みが始まる。気持ちをしっかり持って体調を崩さないように・・・と念ずるばかりである。
コメント (2)
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