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ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2010.9.16 口に出すか、出さないか

2010-09-16 21:00:48 | 日記
 昨日のブログで書いた「くそばばあ!」と呼ばれた話の続編である。

 夫がこのブログを一番初めに読んでくれる読者なのだが(私が「今日も書いたよ。」と言うので)、夫が昨日の話を読んで「そんな理不尽なことを言われたのなら、いつもの治療日記の淡々としたタイトル(○○○何回目、○○○何回目)じゃなくて、「くそばばあ!」と言われたことを前面に出した方がインパクトがあったんじゃないの。」との感想。そして息子に「お母さんがこれこれこういう状況でこういう風に言われたんだって、おまえはどう思う?酷いよなあ。」と問いかけていた。

 私はたまたまバイクの若者から浴びさせられた言葉だったからはっきり聞き取れただけで、車に乗っている人も実際のところ舌打ちするなり同じようなことを言っているんだろうな、と思っていた。聞こえないからあくまで想像ではあるが・・・。
 そしてわが身を振り返ってみても、もちろん口には出さなくても思うことはある、と。

 今ではパスモやスイカ等のICカードが普及しているから、切符売り場でハタと困っている高齢者の姿を見ることは大分少なくなったが、立ち尽くしている人を見ると、思わず代わりに買ってあげたりしていた。(どうも親の姿に重なってしまうのだ。お節介おばさんかもしれないけれど・・・)だって、その方が早いから。後ろで舌打ちしてイライラして待っている人がたくさんいるけれど、そうされればされるほど当の本人はますます舞い上がって動けなくなってしまう。それなら、行先を聞いて代わりに買ってあげた方がお互いよっぽど精神衛生上良いはずだ。
 これはスーパーのレジで小銭が探せなくて後ろの人にイライラされるから、とお札ばっかり出してしまう、ということと同じ。

 とにかく皆、なんだかいつでもどこでもイライライライラ、早く早く、とせきたてられている感じだ。私もかつてはそうだったな・・・、と思う。
 ただ、自分がハンディを持つようになってからは(すぐ息切れするので走れなくなった。)、そんなふうに舌打ちしようが、悪態をつこうが、嫌な気分になるだけで、事態はちっとも改善しない、ということを身をもって感じるようになった。
 そして誰しも弱者になりうる可能性はあるし、誰しも必ず齢をとるのだ。
 哀しいことに、自分がその立場にならないと骨身に沁みてわからないのだが・・・。ちょっと、想像力を働かせてみればよい、と口で言うのは簡単だが、なかなかそうもいかないのが現実。

 私も以前は優先席等には無縁だったが、最近では病院の行き帰りなど調子が悪くて疲れているとき、空いている席が優先席だけで周りに高齢者や怪我をしている人がいなければ、遠慮なく座らせてもらうようになっている。
 私は外見上病人には見えないから、露骨になんなんだ、という顔をする方もいる。もちろん目の前に高齢者の方や「お腹に赤ちゃんがいます」のストラップをつけている女性等が立てば席は譲るのだが・・・。
 だから、若くて元気そうに足を投げ出してこの席に座っている人、お化粧をしている人、ゲームに興じている人、漫画を読んでいる人たちは、実は内部疾患なのかもしれない、と思うようにしている。

 それでも優先席で平気で携帯を使っている人がいかに多いことか。それは高齢者、妊婦さんもしかり、である。もちろんペースメーカーも最近は進歩して、携帯の電波くらいで支障があるようなデリケートなものはそうそう多くはないのだろうけれど。

 さて、「くそばばあ!」の件であるが、思うのは自由、ただし、最後の一線は口に出すか出さないか、だと思う。
 “口は禍のもと”とはよく言ったもので、一度言った言葉はもはや取り消せない。言ったほうは忘れても、言われたほうは忘れないから、取り返しはつかない。

 夫の質問に対する息子の回答は想像したとおり。「だってその人はママが走れないかどうかなんて状況はわからないじゃない。僕がその人だったら口には出さないかもしれないけれど、その人の気持ちは十分わかるし、“ちっ”くらいは思って当然だよ。」

 そうそう、口に出すか出さないか、だ。とりあえず合格点。両方の立場を公平に見られるかどうか。そして、思ってもいいけれど口に出したらいけないことは沢山あるんだよ、と思う。

 今日も午後からの会議のために、雨の中、都心まで出かけた。欠席委員の資料も預かってきたので、帰路はかなり重い荷物になった。自宅の最寄り駅に着いて土砂降りだったら、またタクシーに乗ってしまおうか・・・と思ったのだが、幸いにも小降りだったので歩き出したところ、なにやら前方に息子の姿。どうも同じ電車だったらしい。私は気づかなかったが、息子は気づいていたようだ。私と一緒に帰るのは嫌なのだろうな、とタクシーにも誘わず、別の道から帰ってきた。あいにく途中から雨はどんどん強くなった。
 すると少し人通りが少なくなったところで、息子が待っていた。黙って荷物を持ってくれた。嬉しかった。
 これは迷わず口に出して、「どうもありがとう、助かったわ。」。

コメント
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