語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>生産者被曝の脅威 ~高濃度汚染玄米と土壌~

2012年02月11日 | 震災・原発事故
 福島県の一部地域では、放射性セシウムの濃度が1,000Bq/kgを超え、最高値は1,270Bq/kgに達する玄米が見つかっている。
 この濃度は、土壌に含まれる放射性セシウムの濃度と、土壌の性質に応じて異なる土壌から米へのセシウム移行係数に依存する。
 玄米のこれほどの高濃度汚染は、土壌の性質如何にかかわらず、農業者・近隣住民に危険を及ぼすほど水田土壌が汚染されていることを疑わせる。国も県もマスコミも、生産された米の安全性ばかりに気を配り、この問題を完全に看過している。

 玄米には稲全体に含まれる放射性セシウムの20%が分布するとしよう(実際より大きめの仮定)。
 そして、福島県の水田の土壌の半分を占める灰色低地土から玄米への放射性物質の移行係数は0.005から0.015という研究結果があるから、この結果を適用すると、1,270Bq/kgの玄米が生産された水田の土壌の放射性セシウム濃度は、1,270の67倍から200倍、すなわち85,000Bq/kgから254,000Bq/kgということになる。

 このような場所の空間線量率は、どんなに少なく見積もっても、チェルノブイリ原発事故に伴ってウクライナ政府が設定した「移住義務」発生率基準、0.571μSvをはるかに超えるだろう。このような水田で野良仕事を続け、舞い上がる土埃を吸い続ければ、小学校などの校庭利用で文部科学省が採用して大顰蹙を買った年鑑被曝限度、20mSvも軽く超える恐れがある。
 危険は周辺住民にも及ぶ。
 ここは、もはや安心して農業生産活動と生活を営める場所ではないのかもしれない。とすれば、警戒区域や計画的避難区域でなくても、場所によっては住民の移住が最善の処方箋となるだろう。
 福島でなくても、文部科学省の航空機モニタリングでは見つからない類似の「ホットスポット」があるかもしれない。あり得る処方箋の一つに移住も加えるべきだろう。

 ただし、「神隠し」された人々【注】の処遇が今のままならば、傷を癒すどころか、却って傷を深めることになる。今何よりも必要なのは、深く傷つけられた人々に心から寄り添う政府の対応だ。
 これは、神隠しに遭わない人々についても同様だ。
 それなしには、いかなる名医の処方も無駄になる。

 【注】若松丈太郎『福島 原発難民--南相馬市・一詩人の警告 1971年~2011年』(コールサック社、2011)

 以上、北林寿信「放射能汚染がつきつけた食と農への難問」(「世界」2012年2月号)に拠る。
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