語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務 ~官僚の掟(2)~

2019年03月01日 | ●佐藤優
 キャリア、ノンキャリア(一般職、専門職)ともに、いったん採用されると、重大な刑事事件でも起こさない限り、安泰な役人生活を送ることができます。役所は居心地の良い場所なのです。その意味についてはすぐ後で説明します。いずれにしても、必然的に役所内の流動性は低くなります。
 流動性が低くなると、そこにいる人たちの共通の価値観を反映したローカル・ルールが生まれます。そうしたルールを土台にして、長い年月を経て「官僚独自の文化」ができあがっていきます。明治時代から続く官僚階級には、すでに独自の文化が形成されていると言えます。
 たとえば「自殺の大蔵(財務省)、汚職の通産(経産省)、不倫の外務」という言い方があります。この慣用句からは、この三省がそれぞれ、どこに神経をとがらせているかが分かります。
 大蔵省はメンタルが弱いことに関しては寛容だが(→裏返せば自殺者が多かった)、汚職や女性問題やセクハラには厳しいという意味です。通産省は企業や業界団体とのつき合いがあるから金品のやり取りには寛容な面もあるが(→汚職が多かった)、メンタルが弱い人や女性問題でトラブルを起こす人物はダメ。外務省は、省内のアルバイトの女性を愛人にするなど女性問題には甘く、ルーズなところはありますが(→不倫が多かった)、金銭トラブルを起こす人やメンタルが弱い人物には厳しい、ということです。
 いずれも、こうしたタブーに触れれば「こいつは使い物にならない」との判を押されかねません。つまり、それぞれの組織の中で長年かけて共有されてきた文化のようなもので、言い換えれば鉄の掟と言えます。
 過去と現在で似たような不祥事が時間をおいて繰り返されるのは、それが文化になってしまっているから「ここまでならやっても大丈夫」という暗黙の了解がある、とあの人たちは思い込んでいるのでしょう。

□佐藤優『官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態』 (朝日新書、2018)の「第1章 こんなに統治しやすい国はない」の「自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務」から引用

 【参考】
【佐藤優】『官僚の掟』の目次

 
 ↑クリックすると拡大

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【佐藤優】『官僚の掟』の目次 | トップ | 【佐藤優】競争の土俵に上が... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

●佐藤優」カテゴリの最新記事