語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【経済】円安下で深刻さを増す自動車産業の環境

2013年04月03日 | ●野口悠紀雄
 (1)春闘でボーナスが満額回答・・・・の自動車産業は、実は、それを取り巻く環境が深刻さを増している。
  (a)外需・・・・輸出台数は、円安にもかかわらず増えていない。2012年8月から対前年比がマイナスに転じた。2012年11月から円安が進展したにもかかわらず、減少が続いている。長期的にみると、2006年3月から2008年3月まで、対米乗用車輸出は月額4,000億円超だったが、2008年11月以降は2,000億円台にとどまっている。半分程度に減少した。全世界に対する乗用車輸出台数も金額も、同様の傾向だ。
  (b)内需・・・・エコカー補助金の終了によって販売台数が激減している。エコカー補助金(①2009年4月~2010年9月、②2012年4月~9月)によって需要が先食いされたから、今後は容易に復活しない。国内販売の減少を円安で補うことは不可能だ。
  (c)国内の乗用車生産・・・・外需、内需とも落ち込んでいるので、2012年1~3月期をピークに減少を続けている。

 (2)2012年の営業利益は前年より増大したが、これは2011年の落ち込みが激しかったことの反動と、エコカー補助金による。円安は、これとは無関係だ。
 そして、(1)-(a)および(b)からして、2013年は2012年より大きく落ち込む可能性が高い。

 (3)しかも、売上高営業利益率が低下している。2007年には4.5%だったが、2012年は、補助金があったにもかかわらず2.6%だ。

 (4)さらに、企業規模別にみると、中小企業のレベルでは売上げが著しく減少している。
 資本金1,000万円~2,000万円の企業では、2012年4~6月期から、売上高が前年の半分程度に激減している。このため、2012年10~12月期の営業利益はマイナスになった。この期には、2,000万~5,000万円の企業も営業利益がマイナスだ。生産が増加しないため、中小企業の受注が増えていないのだ。中小企業にとって、厳しさは増している。
 もっとも、大企業も安泰ではない。円安は販売台数を増していない。販売台数の増加のためには補助金が不可欠だ。しかし、これまでの補助金の成果は、ボーナスという形で従業員に配ってしまった。だから、再び補助金を求めるわけにはいくまい。自動車産業は、自分で自分の首を絞めてしまった。

□野口悠紀雄「円安下で深刻さを増す自動車産業の環境 ~「超」整理日記No.654~」(「週刊ダイヤモンド」2013年4月6日号)
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