語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】東電が追加支援を要請 ~新たな国民負担の可能性~

2012年11月27日 | 震災・原発事故
 (1)11月7日、東京電力は2013~14年度を対象とする「再生への経営方針」を発表した。
  (a)5月に策定した「総合特別事業計画」【注】の前提が崩れた。前提が変わった事例として東電が挙げた事例は2つ。
    ①今夏までに電力完全自由化の方向が決まり、競争環境が生まれる。
    ②原発再稼働の見通しが不透明。
  (b)福島第一原発事故の賠償、除染、廃炉費用が従来枠の5兆円を超えて巨額に膨れ上がる見込みとなった。廃炉に必要な技術さえ見えていない。よって、「1企業のみでは到底対応しきれない規模となる可能性が高い」。
  (c)かくて、事業計画は半年を待たず、大きな見直しを強いられることになった。
  (d)東電は、政府へ追加支援を要請した。

 (2)(1)-(a)の「崩れた前提」は、半分は正しいが、半分は「想定できていた」【政府関係者】。
 東電にとって「想定外」だったのは、原発再稼働の動向だ。政府の「原発ゼロ」方針が計画策定後の9月に打ち出され、原子力規制委員会が発足した。再稼働に向けた安全基準の策定h来夏までかかり、来春を見込んでいた東電の柏崎刈羽原発の再稼働はまず無くなった。「想像より、厳しかった」【東電関係者】

 (3)だが、(1)-(b)が巨額にのぼることは、以前から分かりきっていることだった。
 当時から見積もれないコストは山ほどあり、計画自体も後々見直されることが想定されていた。【事業計画策定に関わった関係者】
 事実、事業計画では除染額について、「現時点では合理的に見積もれない」とする一方、廃炉などの費用は「追加的措置の可否の検討を政府に要請」という文言を盛り込んでいた。

 (4)(1)-(a)-①も、今春にはすでに具体的な検討が進むことが決まっていた。想定外とはいえない。むしろ、「自由化などを条件に政府側も追加支援を早く検討する見込みだった」【東電関係者】。
 (1)-(d)の支援要請は、東電問題に取り合おうとしない政府への苛立ちの表れともいえる。

 (5)(1)-(d)の支援要請については、まずは現行法の枠組みで、賠償や廃炉を着実に進めてもらいたい。【枝野幸男・経済産業相】
 次期衆院選を前に、新たな国民負担につながる支援に慎重だ。

 (6)しかし、東電が「延命」する代わりに原発事故処理を国が直接負わない現行スキームは、早晩、限界を迎える。
 先延ばししても、結局、誰かが巨額の負担を負わなければならない。それは、次のいずれであるか?
  (a)国民
  (b)電気利用者
  (c)株主・債権者

 【注】
【原発】不良債権処理と原発事故処理の類似点
【原発】新潟県知事の、「原発再稼働」批判
【原発】原発は不良債権 ~異常な原子力予算~

 以上、森川潤(本誌)「“想定内”のはずの東電追加支援 国民負担増で政権は消極的に」(「週刊ダイヤモンド」2012年11月24日号)に拠る。
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