語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】個人の蔵書の社会的活用

2013年02月14日 | 社会
 (1)本好きにとって、本は生きものだ。ペットと同じように、あるいはそれ以上に大事にするという意味でそうだし、放っておけば勝手に増えてくる、という意味でもそうだ。
 問題は、どこにしまうか、だ。立花隆の猫ビルのように書斎を独立して建てる人もいるが、それはごく例外だ。
 せいぜい別荘に保管するくらいだ。

 (2)成毛眞(57歳)・投資コンサルティング会社「インスパイア」社長/早稲田大学客員教授/ノンフィクション専門書評家は、「集合本棚」を思いついた。作家、編集者、学者、ジャーナリストらが蔵書を持ち寄り、オフィスや店舗の空き空間を利用して共同で本を所蔵するのだ。持ち主はむろんのこと、利用を許可された人も、その場で自由にすべての本を読める・・・・という計画だ。
 第1弾の「集合本棚ライブラリー」を、東京は神保町の近くの再開発ビル(4月開業予定)に作れないか、検討中。
 本に親しんだ団塊の世代のリタイアが進む。蔵書は散逸してしまえばただの古本だが、意味を持ったまとまりで残せば知的財産になる。【柳瀬博一(48歳)・日経BP社編集者】
 各本棚に所有者の名札や略歴を記したプレートを貼る。その人の書斎や脳内をのぞき見る感じで、面白いのではないか。【成毛】
 2月6日の打ち合わせでは、盛んに意見が交わされた。
 ファッションや料理、歴史など、街の特色に合わせた集合本棚を各地に作れば、事業化も可能だ。会員制にして低料金で利用してもらえば、書店や図書館とは異なる本との出会いの場になるかもしれない。【成毛】

 (3)本を、より開かれた場へ持ち出す試みを続けている人もいる。
 幅允孝(36歳)は、国内唯一の「ブックディレクター」だ。依頼主の要望に応じて選書し、本棚を演出するのだ。
 幅が、東京の青山ブックセンターで働いていた2000年、米ネット書店「アマゾン」が日本進出した。客も売り上げも減り続けた。かくて、ただ書店で待ち続けてもダメなことを痛感。「本に公共性を持たせて、人がいる場所に本を持っていく仕事」に転じた。2005年、会社「バッハ」を設立。仲間3人と病院や企業、飲食店などの本棚作りや本を巡るイベントに取り組んできた。
 幅の手がけた本棚は、堅い本の隣にマンガやCDを並べたり、一見関係ない本同士を共通のテーマで並べたり、自由な雰囲気が漂う。
 「この本を読みなさい」と押しつけるより、自発的に手にとってもらえる環境をつくりたい。【幅】
 自宅マンションの玄関やトイレにも自作の棚をめぐらせ、本に囲まれて暮らす。
 紙の本には強い実存感がある。背表紙を眺めて存在を浴びるだけでも、新たな発想へのポジティブなつまずきを得られる。雑誌の電子データ化を始めたが、蔵書の処分は考えたことすらない。【幅】

 (4)以上、(2)は「集合本棚」の構想、(3)は「本棚の演出」事業で、朝日紙が伝えるところ事例だ。
 紙媒体の本を地域社会で活用する方法はほかにもあると思う。

□記事(藤谷浩二)「蔵書持ち寄り「集合本棚」 持ち切れぬ本、共有化を計画」(2013年2月11日付け朝日新聞)
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