語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>安愚楽牧場の被害者を増やした消費者庁の不作為

2011年12月22日 | 震災・原発事故
 X氏・元金融マン(60歳)は、2007年ごろ、雑誌広告を見て安愚楽牧場(本社・栃木県那須塩原)に関心をもっった。最初は、恐る恐る「30万円コース」で始め、次第にのめり込んでいった。
 信用調査機関は「優良企業」のレポートを出し、宮城県の自治体が第三セクターを組んでいた。配当はきちんと振り込まれた。
 口蹄疫の時には資金引き揚げを検討したが、「安愚楽牧場応援コース」の勧誘があり、さらに資金を投じた。退職金を元手にしたX氏の契約額は、4,550万円に膨らんだ。
 安愚楽牧場の経営破綻【注】が明らかになってから、X氏は費用を払ってまでして全国安愚楽牧場被害対策弁護団に入るメリットがあるかどうか、迷った。個人で牧場側に情報開示を求めたり、行政の瑕疵を調べた。他の被害者と歩調を合わせ、被害者対策弁護団に加わることにしたのは、安愚楽牧場の破産処理が決まった12月9日以降のことだ。
 破産処理となれば、財産処分をして、それで終わりだ。会社以外の第三者からの回収となれば、一人では限界があるのだ。
 X氏の、悠々自適のはずの老後の生活設計は吹っ飛んだ。今では時給900円のアルバイト生活だ。

 和牛オーナー制度をめぐる消費者被害は、15年くらい前にも社会問題になった。業者の摘発が相次いだ。安愚楽牧場は最後まで残った業者だった。
 ここまで被害を広げたのは、行政の手落ち、という見方も根強い。

 11月中旬、自民党本部で党消費者問題調査会が開催された。弁護団の紀藤正樹・弁護士は、同社の経営実態などについて述べた後、消費者庁の手落ちを指摘した。同社を規制、監視できる機会が再三あったにもかかわらず、手を拱いた、と。
 (a)2009年9月、消費者庁発足時、消費者の視線で見直しをしないで、漫然と同社を放置した。2009年の農水省の調査において、オーナー数48,000人、2,000億円だった負債は、破綻時には同73,000人、同4,300億円に拡大した。
 (b)2010年4月、口蹄疫発生時も調査すべきタイミングだった。宮崎県内の安愚楽牧場の牛15,000頭が殺処分され、財産状況に疑いが生じたにもかかわらず、立入検査などの調査を懈怠した。
 (c)2010年7月ごろ、農水省が以前に指示していた同社の定期報告に関し、消費者庁は「必要ない」として定期報告を受けなかった。

 (a)の農水省の調査で実態が明らかになっていれば、その後の被害のかなりが防止できた。
 X氏の場合、その検査で安心し、3,800万円を増資した。

 消費者庁によれば、繁殖雌牛の実数は4年以上前から契約頭数の55~69%にとどまり、一部では飼育実態がなかった。
 事実、X氏がオーナー牛の個体識別番号をもとに調査したところ、26頭中13頭がオスや出産できない年齢のメスだった。

 【注】「【震災】原発>安愚楽牧場の破綻 ~全国7万人の悲鳴~

 以上、藤生明「役立たず消費者庁の罪 安愚楽牧場・破綻処理開始」(「AERA」2011年12月26日号)に拠る。
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