語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【IT】米IBMはもはや「コンピューターの巨人」ではない ~Medium Blue~

2016年05月20日 | 社会
 (1)「コンピューターの巨人」として1世紀にわたって米IT(情報技術)業界に君臨してきたIBM。もう「ビッグブルー(Big Blue)の愛称はそぐわないかもしれない。売上げの減少傾向に歯止めがかからないからだ。
 1~3月期決算(4月18日発表)では実に1616四半期連続の減収となった。同期の売上高は187億ドル(2兆円)で、四半期ベースでは14年ぶりの低水準。3月末までの年間売り上げで見ると18年前の水準に戻った。

 (2)米経済メディア上では「縮むIBM」といった表現が躍った。ニュースサイト「CNNマネー」の記事には「もうビッグブルーと呼んではいけない? 信じられないぐらい縮んだIBM」という見出しが付けられた。
 IBMが「ビッグブルー」と呼ばれてきたのは、米IT業界では圧倒的に巨大(ビッグ)であるとともに、製品やロゴに青色(ブルー)が使われてきたためだ。
 これからは何と呼ばれるべきなのか。
 アーロン・プレスマン記者(米ニュースサイト「ヤフー・ファイナンス」)は新しい愛称を作り出した。「ミディアムブルー(Medium Blue)」だ。2015年7~9月期の決算を受けて同記者はその記事にこう書いた。
 <今回の決算で浮かび上がったのは、従来の「ビッグブルー」よりも格段に小さい企業の姿だ。これからは「ミディアムブルー」の愛称がふさわしい>
 
 (3)現在の米IT業界覇者のアップルと比べると分かりやすい。2015年1年間の売上げでみると、IBM(817億ドル)はアップル(2,350億ドル)の3分の1にすぎない。長らく巨大企業の代名詞として言及されることの多かった時代の面影はすっかりなくなった。

 (4)IBMは、手をこまねいてきたわけではない。成長分野のクラウドサービス、データ分析、モバイルコンピューティング、セキュリティソフトなど「戦略的必須事業」に積極投資し、成果も出しつつある。1~3月期に同事業の売上高は前年同期比14%増の70億ドルを記録し、売上高全体の37%を占めるようになった。
 にもかかわらず「ミディアムブルー」なのは何故か。
 コモディティー化したハードウェアなど従来型IT事業の落ち込みがあまりにも激しいからだ。ハードウェアを含むシステム部門の売上高は前年同期比22%減の17億ドルだ。伝統のパソコン部門は、2005年にレノボ(中国)へ売却するなど、同社が従来型IT事業を意識的に縮小してきた結果でもある。

 (5)IBMは再び成長企業に脱皮できるのか。ジニー・ロメッティ氏が最高経営責任者(CEO)に就任した2012年1月から今回の決算発表までの期間に、株価は17%下落。同じ期間に米株価指数S&P500種が6割以上も上昇しているだけに、投資家は「ミディアムブルー」どころか「スモールブルー」さえ視野に入れているかもしれない。
 だが、ロメッティCEOには強い味方がいる。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏だ。同氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイはIBM株の8.4%を持つ筆頭株主だ。2016年2月末、バフェット氏は米経済テレビ局CNBCに出演し、語った。
 <重要なのは5~10年先。IBM株は今以上に価値があることでしょう>

□牧野洋(ジャーナリスト兼翻訳家)「Medium Blue ~Key Wordで世界を読む No.92~」(「週刊ダイヤモンド」2016年5月14日号)
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