語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】増税の破綻した論理 ~マニフェスト見直しが必須~

2011年12月05日 | 社会
 クラウゼヴィッツに倣っていえば、国政は民主党に任せるにはあまりに重大な問題だ。

(1)復興増税 
 「臨時増税を行う」という理屈づけで始まったのに、「25年間の増税」という事実上の恒久増税になった。

(2)所得税・相続税の増税
 (a)政府の論理
  ①消費税を増税すると低所得者の負担感が重くなる。
  ②これを是正するために高所得者・高額資産保有者を対象に所得税・相続税を増税する(2013年度以降の実施をめざして税制調査会は検討を開始し、年末にまとめる)。

 (b)国民の論理
  ①消費税に欠陥があると税制調査会が認めている以上、消費税増税は取りやめればよい。
  ②最初から所得税・相続税を増税すればよい。

 (c)どさくさ紛れの余分な増税
  消費税増税に合わせて所得税・相続税を増税すれば、全体としての増税額は消費税率5%引き上げより大きくなる可能性がある。
  ①所得税・相続税の増税額をすべて低所得者への現金給付に充てるならば、「税と社会保障の一体改革」が提言(6月)したとおりになる。
  ②しかし、①でなければ、どさくさ紛れに当初の提案を超える増税を行うことになる。または、6月の一体改革提言は必要増税額に関して誤った見通しを示したことになる。

(3)基礎年金国庫負担増額2兆5,000億円
 (a)政府は、11年度予算において、埋蔵金で財源を手当した。しかし、その財源を、第1次補正予算に流用した。ために、第3次補正予算で穴埋めした。3次補正の財源はほぼ全額が国債なので、結局は国債によって基礎年金国庫負担増額が賄ったことになる。「恒久財源によって賄う」と法律で規定されているから、民主党政府は明白な法律違反を犯した。
 (b)政府は、2012年度にも法律違反をもくろんでいる。「年金債」という名の国債で手当する、というが、これは消費税増税をアテにした「つなぎ国債」にすぎない。しかも、消費税増税はまだ決定されていないので、「つなぎ」になるかどうかさえ定かではない。「年金債」の実態は、何のあてもない借金だ。

(4)消費税増税
 政府は、消費税増税のための準備法案を提出しようとしている。
 政府は、(3)のとおり増税のための法律を破り、他方で増税のための法律をつくろうとしている。支離滅裂だ。

(5)マニフェスト関連経費
 11年度予算には、子ども手当、農家個別所得補償、高校無償化などの経費が3.6兆円(1次補正と2次補正で3.2兆円に減額)計上されている。
 これらは、09年の選挙の際、財政の見直しで16.8兆円(支出見直しで9.1兆円)の財源が出ることを前提に導入したものだ。
 しかし、事業仕分けでは7,000億円しか捻出できなかった。
 したがって、マニフェスト関連経費の見直しは急務だ。見直しによって浮かせたお金を使えば、消費税増税額を圧縮できる。経費の削減は「恒久財源」と評価しうるから、(3)に充てることもできる(法律違反状態から脱却できる)。

 以上、野口悠紀雄「破綻論理で増税ではなくマニフェスト見直しを ~「超」整理日記No.589~」(「週刊ダイヤモンド」2011年12月10日特大号)に拠る。
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