語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【社会保障】国民年金の不公正、不公平 ~主婦の年金、お得な年金~、

2013年12月15日 | 社会
 (1)公的年金制度は、必ずしも公正かつ公平に運営されてきたとは言いがたい。
 最近の例では、「主婦の年金」(3号被保険者制度)がある。サラリーマン(厚生年金加入者)の夫に扶養されている限り、国民年金の保険料を支払わなくてよい。しかし、夫が脱サラした(厚生年金加入者でなくなった)り、夫の扶養家族から外れた場合、妻は第3号から第1号(国民年金)への手続きを行ったうえ、国民年金の保険料を納付しなければならなくなる。
 ところが、この切り替え手続きの必要性を、厚生労働省も旧・社会保険庁も十分に情報提供してこなかった。事務ミスではないが、ほとんど事務ミスに近い。
 その結果、100万人にものぼる「主婦」が、加入期間の不足、未納期間によって無年金になったり、年金額が減額されることが判明した。
 疑似「事務ミス」によって、権利が侵害されたのだ。

 (2)事の重大さに、世論は盛り上がった。国会でも大議論となった。
 紛糾のあげく、救済策として「年金確保支援法」が成立した。これによって、大半の「主婦」が救済されることになった。

 (3)この種の「事務ミス」による権利侵害は、ほかにも例がある。11月26日の「年金記録問題に関する特別委員会」では、わけても深刻な「事務ミス」が報告された。
 国民年金加入者が、任意加入できる「付加年金」において、法令に則った統一的な事務が行われてこなかったため、著しい不公平が発生していたのだ。
 付加年金は、毎月400円を上乗せして納付できる制度だ。保険料の半額が年金受給に反映される「お得な年金」だ。
 <例>国民年金を満額受給できる人が、過去20年間、付加年金の保険料96,000円【注1】を支払っていた場合、65歳から受給する年金の総額は6%ほど増えて、826,500円【注2】となる。
 ただし、付加年金は、国民年金のように後納は認められていない。納付期限内(翌月末まで)に納付しなければ、自動的に脱退させられる。
 かかる窮屈な制度にしたのは、任意加入で、得な年金だから、強制加入の国民年金の本体との差別化を図ったのだ。
 しかし、窓口における事務が統一されていないので、(a)期限内に納付しなかったため付加年金を脱退させられた人がいる一方、(b)咎め立てされることなく付加年金の保険料を納付できていた人もいた。
 こうした違いが発生した原因に、事務マニュアルが作成されていなくて、担当者によってバラバラの取り扱いをしていたからだ。
 (a)は損し、(b)は得をする。
 (b)は22万人に達する。【厚労省の推計】

 【注1】400円×12ヵ月×20年=96,000円
 【注2】国民年金の満額受給額778,500円+付加年金48,000円

 (4)厚労省年金局は、(3)の22万人に対し、今から脱退手続きを取って貰い、支払ってきた付加保険料の還付請求書の提出を求めていく、という。すでに年金を受給している人からは、付加年金の返納を求める方針も検討中だ。
 年金加入者や受給者に負担を強いることで、自分たちの「事務ミス」の帳尻を合わせようとしているのだ。

□岩瀬達哉「窓口によって説明がバラバラ 事務的ミスが生みだす年金不平等という理不尽 ~ジャーナリストの目 第186回~」(「週刊現代」2013年12月14日号)
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