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語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【官僚】公務員宿舎の「守護神」 ~霞ヶ関文学~

2013年08月04日 | 社会
 (1)廃止されるはずだった公務員宿舎の生き残り作戦が本格始動した。

 (2)7月18日付け日本経済新聞東京夕刊の一面トップに、
    「公務員宿舎を保育所に」
    「待機児童解消へ転用」
 という見出しが大きく躍った。
 記事は、後追いしたマスコミ他社を含め、待機児童解消を期待する内容だった。
 廃止予定の公務員宿舎が生き残ることに関する論評はゼロだった。

 (3)公務員宿舎廃止・・・・を回避する作戦の切り札として、保育園や保育ママ事業を利用することを、財務省は3年以上前から計画していた。
 年収1,500万円以上もらう高級官僚が都心一等地の公務員宿舎に、民間相場の3分の1以下の家賃で住んでいる。
 このことに国民の批判が高まり、民主党政権がようやく削減計画をまとめたのが2011年12月。政権の余命はわずかしか残っていなかった。
 国家公務員64万人のうち、自衛隊などを除く一般職が34万人。その大半は地方出先機関で働いている。このため、全国に20万戸以上の公務員宿舎があるのだが、削減計画では、そのうち5~6万戸を廃止することになっていた。
 しかし、「霞ヶ関のレトリック」によって骨抜きにされた。

 (4)なかでも問題なのは、「廃止」がそのまま「売却」ではなかったことだ。
 なぜ官僚は公務員宿舎を廃止しても売りたくないのか。
 ほとぼりが冷めたらまた復活させたい、ということもあるが、実はそれよりももっと切実な事情が財務省にはある。
 あまり知られていないが、財務省には理財局という大きな局がある。その主要業務の一つが、各省庁舎・公務員宿舎などの運営管理業務だ。保有する大量の国有地の上にオフィスやマンションを建設し、それを各省庁や公務員に貸し出す。簡単にいえば、巨大な不動産事業者だ。
 彼らにとっt、土地を売ったら仕事がなくなり、リストラに直結する。死活問題だ。
 だから、公務員宿谷を廃止するとしても、土地だけは死守したい。そうすれば何とか生き残り策を見出せるのではないか、ということだ。

 (5)そして考えたのが、保育関連不動産賃貸業だ。財務省は、2010年6月に「新成長戦略における国有財産の有効活用」を打ち出している。その中に保育事業が入っている。
 保育所を作るとか、保育ママ事業に貸与するというと、むろん、近隣の住民は賛成する。いまや「子育て」という言葉は、誰をも納得させる神通力を持っている。
 しかし、そこには大きな誤解がある。
 本来なら、宿舎用地を売却し、民間事業者が大きなマンションなどを建ててくれれば、国の売却代金収入とは別に、毎年莫大な固定資産税収拾が自治体に入る。それを子育て予算に使って民間の保育事業者への補助を行えば、はるかに大きいな効果がある。売却の際、保育所の併設義務を課してもよい。

 (6)昨春、関西地域のある廃止予定の公務員宿舎で保育ママ事業が始まる、ということが大々的に発表された。
 しかし、よく見ると、預かる子どもは2人、と書かれている。
 この宿舎を売れば大きな売却収入があるし、固定資産税が入ってくれば、毎年保育ママ事業に多額の補助金を出せる。売った方がはるかによいのは明らかだ。

 (7)保育所を建てたり、保育ママ事業を公務員宿舎に入れれば、出ていけと言えなくなる。
 これにより、廃止予定の公務員宿舎も生き残れる。
 公務員宿舎温存と理財局の失業対策として、「子育て守護神に!」という財務省の高等戦術。
 次は介護だ。「俺たちは優秀。マスコミは馬鹿」と財務官僚の高笑いが聞こえる。

□古賀茂明「公務員宿舎の「守護神」 ~官々愕々第73回~」(「週刊現代」2013年8月10日号)

 【参考】
【原発】新潟県知事を攻撃する官僚の手口 ~問題点を隠蔽して再稼働~
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