よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

シンクロニシティとアーラヤ識

2009年07月01日 | 日本教・スピリチュアリティ



ちょっと前に「シンクロニシティ~未来をつくるリーダーシップ~」(Joseph Jaworski著, 金井 壽宏)をもとにHRMの視点からディスカッション。忘れないうちに概略だけノート。

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※コメント:
Wikipediaには、「非因果的な複数の事象(出来事)の生起を決定する法則原理」と書かれているが、非因果的といいきれるのかどうか?答え、No。

synchronicityを非因果的連結と訳するのはやはり誤訳だろう。共時性、共起性というのが訳としては当たっている。「意味のある偶然の一致」

A→Bではなく、A⇔Bという相依性の当事者としてのCが入る。CにとってA⇔Bの相依性がそっと現象界のベールの割れ目から現前するというのがsynchronicity現象。

だからsynchronicityは因果律のみでは説明できない現象の一端。ただし、その本質が分かりにくいので通俗・擬似的な科学の一ジャンルと捉えられることもあるにはある。

唯識でいえば、現行(現象)がアーラヤ識に燻習されて種子(ビージャ)となる。そして種子が発動して現行(現象)に現前してゆく。これは永遠の循環過程で、種子が本質(仏教術語では自性)なのだが、種子そのものの深層意識への植え込みが実は人間の認識現象の根っこ。埋め込まれた種子が認識のベールをつくり、そのベールに引っ掛かるあらゆる存在を分節し現象とする。

こうしてリアリティと受けとめられる「ものごと」の認識は種子から生まれるが、妄識や妄想のはじまりもまた種子から。そして妄想がそのような種子を再帰的に作るので、人生というのはもしかしたら妄想の拡大再生産なのかもしれない・・・。

さて、本題。A⇔Bという相依相の関係(AとBには種子⇔現行のアーラヤ識の循環が絶えず起きている)に観察者、参与者のCが入る場合、「A⇔B」⇔Cの間に立ち現れる現象をsynchronicityとして分節化すればきれいに説明ができるだろうに。

さて、このようにしてsynchronicityの自性を自己に燻習して種子として保持することがリーダーシップのひとつの行き方である・・・、というか、もともと共起性を投企せざるをえなかった意識と行動の習慣を内省して自覚し直して自らのリーダーシップに埋め込んでゆこう・・・というのが唯識的に言えばこの本のメッセージ。しかし以上の理由で、この保持が強くなり過ぎると妄識や妄想ともなるので実は要注意。

Jaworski、金井さんに瑜伽行唯識学派の知識がわずかでもあれば、味わい深いこの本の味がさらに増したと思われるのだが、さて。synchronicityを大乗唯識が到達した空観、アーラヤ識を動員してエレガントに説明することは今後の課題としよう。


<以下貼り付け>

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Joseph Jaworski:ジェネロン・コンサルティング会長

Massage:「リーダーになりたかったわけじゃない。ただ、夢の実現を強く望んだだけだ。- あるのは、やり方ではなく、あり方だ -」

・米国・ヒューストンに拠点を置くブレースウェル&パターソン法律事務所に15年
間勤務した後、1980年アメリカン・リーダーシップ・フォーラ ム(ALF)を設立

・ロンドンのロイヤル・ダッチ・シェル・グループの経営戦略グループに招聘され
グローバル・シナリオ・プランニングのチーフ を務めた

・さまざまな組織の設立に協力し、変化を促すリーダーの内面を探求し続けている

・MITの上席客員教授としてOrganizational Learningについて教鞭をふるう

・「出現する未来」(講談社)では、ピーター・センゲとの共著も手がけている

☆名言集

→一番大切なことは、自らの心のあり方         
「あるのは、やり方ではなく、あり方だ」 


→感じ方や考え方を変えられることは、知識を手に入れることより重要である:デヴィッド・ボーム氏(理論物理学権威)

     
→つまずいたところにこそ、宝物がある:ジョーゼフ・キャンベル氏(神話学者)

#Joseph Jaworski のリーダーシップ
・グリーンリーフ
  -サーバント型リーダーシップ

・センゲ
  -学習する組織
  -フィールドブック学習する組織
   「5つの能力」

・ボーム
  -全体性と内蔵秩序(ニューサイエンス理論)

 
・その他(戦略策定や組織開発の手法)

  -シナリオプラニング
  -ストーリーテリング
  
#人的資源開発にとってのインプリケーション

→OJTやoff-JT等による人的資源開発ではなく、シンクロニシティ(共時性)を追求するために、垣根を越えて行動、活動しいくことが重要となる

→シンクロニシティを大切にすることで、人との出会い、人的ネットワークが構築され、そのネットワークから他流試合が形成され、相互的、インタラクティブな関係により、学習と成長の機会が生じることになる

→イノベーション文化、組織文化の変革のためには、個人の変革は欠かせない(キムSキャメロン、ロバートE.クイン:組織文化を変える)

→従来考えられる人的資源開発では、社内教育や現場での教育により進められるが、本書では、シンクロニシティを大切に行動することが重要であるとされている

→シンクロニシティを追求することにより必然的に必要な人との出会いがなされ、人的ネットワークがされている。そのネットワークから様々な専門家からの考えや意見をまとめより良い教育をつくりだしている

#リーダーシップとは?

→リーダーシップは、「行動のしかた」ではなく、「ありかた」である

→一心に取り組むこと、コミットメントしていくことが最大の課題である

→自分自身が本当に価値があると思う目標のために全存在を傾けること、世界は自分を幸せにしてくれないと文句を述べて不愉快さと不満のかたまりになるのではなく、本質的なものと一体になることである

→リーダーシップは、「見えないもの」を見る旅であり、まずは、リーダーがリード・ザ・セルフにより、行動することが起点となり、リード・ザ・ピープル、さらにリード・ザ・ソサエティへと繋がっていくものである(野田、金井:リーダーシップの旅)

→自身で強い意志を持ち、必ず実現するというコミットメントを持って取り組むあり方がリーダーである

→リーダーシップは一心に目標に向かい取り組むことにより周りを同方向性に向かわせることが出来ることである

→メンバーの能力を発揮させる為に奉仕し、築かれないようにメンバーが仕事をしやすいようにするサーバントリーダーシップが重要である

→自身で強い意志を持ち、必ず実現するというコミットメントを持って取り組むあり方がリーダーである


#「リーダーシップの旅」  野田智義、金井壽宏/光文社新書から

→リーダーは旅に出て、苦難に出会いながらも何事かを成し遂げて、生還し、結果としてリーダーになる。

→重要なポイントは、リーダーは旅に出るまではリーダーではなかったということだ。

→リーダーとは、フォロワーを導く人ではなく、振り返ると人がついてくる人のことをいう。

→フォロワーも、命令による強制や報酬のためでなく、自律的に自ら進んで旅をともにするという点を見逃さないようにしたい。

→喜んで自らついてくるフォロワーが、リーダーの行動を承認することによって生じる帰属がリーダーシップであり、それはリーダーとフォロワーの間に起こる共振現象でもある。

→人をリーダーシップへと駆り立てるのは、私たち一人一人が「内なる声」に突き動かされて、「見えないもの」を見ようとする意思だ。

だが、組織論で語られるリーダーシップは、時にミスリーディングな印象を私たちに与える。

→リーダーシップを旅としてとらえるため、この本ではエマージェント・リーダー(自然発生的なリーダーの概念)を基本において議論を進める。

・それにより、リーダーシップの本質はより明確になってくる。

→だれもの問題としての、自らが選択する生き方としてのリーダーシップの旅が目の前に広がっていることに、私たちは気づくはずだ。

#参考文献
・キムS.キャメロン、ロバートE.クイン(中島豊監訳):組織文化を変える、ファーストプレス、東京、2009.
・野田智義、金井壽宏:リーダーシップの旅、光文社、東京、2007
・藤川佳則:サービス・ドミナント・ロジック~「価値共創」の視点からみた日本企業の機会と課題、107:32-43、マーケティングジャーナル、2008. 
・永長周一郎、品川隆:多職種連携における歯科医師、治療、99(5):1547-1551、2009.
・日本経済新聞医療面口腔ケア特集(2009年5月17日号)

<以上貼り付け>

リーダーシップの旅を唯識を基盤とした世界との関わりあい、アーラヤ識へ燻習される種子、そして種子が現象に転移されるプロセスと見立てれば、面白い。人間の認識、意識はHRMの対象範囲。