よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

日中異文化間コミュニケーション

2009年07月26日 | 技術経営MOT

<中華人民共和国 国家知識産権局にて>

昨年大学院のMOTミッションで中国に行っていろいろとリサーチをしてきました。

社会主義市場経済というのは矛盾しあう二つの制度のレトリック的結合にほかなりません。中国の人々が、市場の中で自由を享受し、選択の自由、表現の自由、結社の自由に目覚めれば、いずれ一党独裁体制ではなく、民主的体制を望むようになるのは自明です。

天安門事件では首都北京の真ん中で、学生を中心とした中国民衆の反政府の声があがりました。そして昨年、今年と立て続けにチベットや東トルキスタン(中国の価値観では自治区と称される)から、中国のガバナンス手法に対してNOの声が上がりました。

人治主義から法治主義への転換の必要性は特に西側からたびたび強く指弾され、中国のインテリ階層にとって頭の痛い問題です。中国共産党の一党独裁体制も、奥の院に入れば入るほど、法が支配するというようりは、人が支配する傾向が強くなります。この点を敷衍すると幇会的体質は中国共産党内部に色濃く継承されています。

また人治主義は実は、「漢人による人治主義」の構造がその基盤にあるということが、一連のチベットや東トルキスタンの事件を介して国際社会に露呈しつつあります。僕はそれを一般的な「人治主義」と区別して「漢人治主義」と呼んでいます。

さて、僕は真の日中友好は、お互いの急所(弱点とされる問題)に対して率直に意見を表明し合うことから始まると考えるので、公害問題、賄賂問題を根拠にして人治主義の弊害に対して、役所のハイランキング・オフィシャル(高級役人)にズバリと質しました。

その役人は面食らった表情をしていましたが、人治主義は中国にとって根の深い問題であり、中国全体の行政機関で改善するよう指導が必要である、とあくまでも総論レベルの回答をしていました。

そのような抽象的な回答には満足できなかったので、その会合の後の昼食会ではいろいろと本音に近い議論ができました。

さて、このような日中異文化間コミュニケーションは、今後様々な局面で大変重要になってきます。さて、ここで麻生川静男ブログより以下引用です。

<以下貼り付け>

問題:

現代では、中国の環境破壊、公害が日本の食の安全、酸性雨などの問題を引き起こしている。これらの問題を経済の観点ではなく、文化的・グローバルリテラシー的観点から論ぜよ。

=中略=

解答例

中国の環境破壊

【1】中国の歴史を読んでみると、法律が公布されてもほとんど守られていないことが分かる。史記の平準書には、硬貨(五銖錢)が発行されてからわずか五年以内に、偽造硬貨(盜鑄金錢)で死刑宣告されたもの数十万人に恩赦を出した。それ以外に自首して赦された者が百万人以上いた、との記述がある。『自造白金五銖錢後五歳、赦吏民之坐盜鑄金錢死者數十萬人、。。。赦自出者百餘萬人』

贋金つくりが発覚すれば、当人は死刑、家族は官奴となる、という重罪にもかかわらず、手軽な利益のあるところには死をも恐れずに群がるというのが中国の伝統的な行動パターンである。

【2】日本にも贋金つくり(私鑄錢)はあり、その刑は死刑であったが、その実数は低いのではないかと想像する。その理由は日本人の性格もさることながら、贋金つくりの技術が中国ほど普及しなかったものと考えられる。

【3】中国では、『千金之子、不死於市』(千金の子、市に死せず)というように、金持ちの家では、たとえ死罪を宣告されても、要路の役人に賄賂を贈り罪を免れるというのが当然であった。(参照:史記、越王句踐世家にある、陶朱公のエピソード)

【4】こういった2000年も前の歴史的事実は現代中国でもそのまま通用しているのが、中華文明の本質である。つまり中国では、法律はたとえ何百条備わっていてもそれを厳格に適用するという『法治』の精神はまったく理解されず、運用は関係者のさじ加減による、という『人治』が牢固として続いているのだ。従って、『人の健康より自分の利益の追求』、そして『環境保護の法律の無視』、この二つの観点はまさに中華思想をそのままストレートに実践しているだけに過ぎない、と私は考える。(参考:柏楊、『醜い中国人―なぜ、アメリカ人・日本人に学ばないのか』)

<以上貼り付け>

中華思想はいただけませんが、たとえば、「南舟北馬」、「南商北政」といって中国の南方沿海部では、プラグマティックなビジネスマインドを尊重して東シナ海から東南アジア一帯へと舟で出て行き通商することに表象される現実的な開放性には期待したいと思います。

ただし、開放性がいつのまにか「解放」性になり、覇権志向と結びつき、空母を建設して東シナ海に浮かべるというのはいただけませんが。

日本も中国も、お互いの国を訪問したことのないような人々が匿名ネットでお互いを悪しざまに罵るような言説が横行しています。このように誘導、操作されることは決して望ましいものではありません。

Face to faceでコンタクトするときに、事実上の共通言語である英語を駆使し、歴史を振り返りつつ、英語で率直に質問し、意見を表明することが大切です。今後ますます日中異文化間コミュニケーションの重要度が高まるのですから。