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自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

Global Healthの新展開

2011年08月22日 | 健康医療サービスイノベーション

トルコから帰国してすぐに日本医科大学にてグローバル・ヘルスの視点からemerging countriesの医療システムを"5S-KAIZEN-TQM"アプローチで高めてゆこう、というディスカッションに参加した。

インターナショナルヘルスのサークルではグローバルヘルスへと概念転換が進行中だ。

以下は、日本国際保健医療学会/国際保健用語集より。

<以下貼付け>

保健医療問題が国境を越えて拡がる事が多くなってきた。発展途上国、工業国にかかわらず国際保健医療の問題が発生して健康格差が生じている。これらの問題の実態を明らかにして解決方法を探り対策を講じる必要性が増している。

今までインターナショナルヘルスが一般に使用されてきたが、地球規模の問題は国境の概念を超えるので用語にもグローバルヘルスが導入、使用され始めている。交通運輸の革命的発展がこれらの進行を促進している。国際政治の世界的展開にも関わりグローバルヘルス問題はますます関心を集める様になっている。

地球環境問題の影響の拡がりも大きな要因である。世界の保健医療問題を世界規模で対応するのは国連の世界保健機関(WHO)であるが、各国共に関心が増大しODA, 財団などNGOも積極的に乗り出している。グローバルヘルスで対象となる分野は極めて広いが、従来からの懸案として挙がっているのは感染症、母子保健、栄養不足問題などインターナショナルヘルスと同様であるが、難民の保健問題、糖尿病など栄養異常問題、生殖医学、生命倫理などを取り入れる立場もある。感染症問題ではエイズ結核マラリア(ATM)が三大感染症として大きく取り上げられているが、その他にも生命に大きく関わる下痢症、呼吸器感染症などに支援がなされている。

ワクチンで予防できる感染症は世界規模で対策が進められていて天然痘の根絶成功いらいポリオ、麻疹などに進展が期待されている。インフルエンザ、SARSなども地球規模(Global)の対策が必須である。如何にして対応するかが国際的な競争の中で研究、実行されている。

<以上張り付け>

たしかに、上の文章のようにGlobal healthは医学、疫学の視点から議論されることが多かった。しかし昨今は、health services systemの視点が不可欠となってきている。さらには医学、疫学上のインベンションの成果を広範に社会に普及させてポジティブ・インパクトを高めるためには、医療サービスのインフラたる医療システムの適正化が問われつつある。

医学、疫学マターが中心ならば上図のインタラクション層の一方の当事者である医師のチームがあたるだろう。ところが、医療システムを相手にするとなると、医療組織、プラットフォーム、健康基盤が問題となってくる。つまり、health research, health services, system science, health policy, social sciencesなどの広範はアプローチが必要となってくる。

"5S-KAIZEN-TQM"は日本ではモノつくりの製造業を中心に1960年代から1980年代まで規格大量擦り合わせ型モノツクリ・カルチャーがピークを迎えた時代に花咲いた手法だが、以下のような視点の加味が必要だと思う。

①モノではなくサービスにおいて展開するときには、product-dominant-logicからserice-dominant-logicへと転換させることが必要になるだろう。医療サービスは「サービス」なのだから。

②アメリカのように医療サービスを市場原理に過度の力点をおいて構成するのには無理がある。公・共の原理をいかに盛り込んでゆくのか。そのバランスが問われる。

③経営システムにはグローバルに普遍的な側面もあるが、国や地域に応じた多様な側面もある。すべてを一元的な収斂論に整理することはできないだろう。

④途上国の社会を支える医療システムを適切に進化させてゆくのは、社会イノベーション(social innovatin)。日本は市場化の側面が強調されがちだが、途上国では事情が異なっている。

医療システムは病院(hospital)だけが中心ではないが、途上国では病院が中心的存在だ。病院は労働集約的な組織である。モノツクリでは主要な対象はモノ(product)だが、医療サービスでは、いわずもがなのコト(service)。

医療サービスは人に始まり、人で終わる。すなわち、人的資源管理(human resources management)や組織行動(organizational behavior)の活性化がカギとなる。またそれらに依拠したツールが要請されるだろう。

以上を十分に包摂したフロントラインを支えるバックヤード・システムの高度化、適切化は途上国においても重要な課題である。

いずれにせよ、各論が大切だ。


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