よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

特定看護師(日本版ナースプラクティショナー)

2010年02月20日 | 健康医療サービスイノベーション
医療サービスを効果的、効率的に提供してゆくためには、臨床現場レベルでのアカウンタビリティの再設計が求められる。

アカウンタビリティは日本語では説明責任と訳されてしまっているが、これは誤訳に近い。アカウンタビリティとは、「明確な役割分担のなかで、他者に説明できる成果を生みだしてゆくための責任」であり、「説明責任」のほかにも役割責任、成果責任という概念が随伴しているからだ。

さて、アカウンタビリティのデザイン、再デザインは、法改正、診療報酬制度の改正、教育システム構築、医療機関での受け入れ態勢づくり、人的資源評価、インセンティブづくり、というように、下工程になるほど、人的資源マネジメントの課題となってくる。

また医療に関する技術を提供する人的資源、組織のありかたを再設計といくことになるのだから、医療版のオペレーショナルMOT(技術経営)という側面もある。

<以下貼り付け>

厚生労働省の「チーム医療の推進に関する検討会」(座長=永井良三・東大大学院医学研究科教授)は2月18日、第10回会合を開き、同省がこの日示した報告書の素案について協議した。

素案では、看護師の業務範囲を拡大するため、現行法の医師の「包括的指示」のもと、侵襲性の高い特定の医行為を担う「特定看護師(仮称)」を創設することが盛り込まれ、大筋で了承された。焦点となっていた「ナースプラクティショナー」については、特定看護師の評価を踏まえ、今後、資格化の是非を検討する。また、「フィジシャン・アシスタント」の導入に関しても、「引き続き検討することが望まれる」としている。

同省では、来年度からモデル事業を実施する方針で、年度内に報告書を取りまとめた後、大分県立看護科学大など、先行して高度な看護師を養成している大学院を選定するため、その要件の作成に着手する。

素案によると、特定看護師(日本版ナースプラクティショナー)の要件は、▽看護師免許を保有▽看護師としての一定期間以上の実務経験(例えば5年以上)▽特定看護師の養成のため、新たに設立する第三者機関が認定した大学院の修士課程を修了▽修士課程修了後、第三者機関による知識・能力の確認及び評価―の4項目。認定については、必要とされる専門性に応じて一定の分野ごとに行い、臨床実践能力を確保する観点から、一定期間(例えば5年)ごとに認定を更新すべきとしている。

 養成課程を認定する際には、医師などの実務家教員や実習病院の確保、実践的なカリキュラムの策定といった指導体制の整備に加え、質と量の両面で充実した臨床実習が行える環境に留意すべきとしており、専門職大学院のような教育機関を想定している。

モデル事業を検証し、特定看護師(日本版ナースプラクティショナー)による医行為の安全性が評価された場合は、現行の保健師助産師看護師法を改正し、特定看護師の医行為を法律上で明確に位置付ける。

 一方、日本看護協会が認定する「認定看護師」については、現在の教育課程(6か月・600時間以上)を見直した上で、限定的な領域で特定看護師に位置付ける方向で検討すべきとしている。それにより、新たな職種の不足など、制度化に伴う現場の混乱を回避する。

 素案では、これまで法律上の「グレーゾーン」とされてきた業務内容のうち、特定看護師に期待される特定の医行為を例示した。特定の医行為は次の通り。

 ◆検査など ▽患者の重症度の評価や治療の効果判定などのための身体所見の把握や検査▽動脈血ガス測定のための採血など、侵襲性の高い検査の実施▽エコー、胸部単純エックス線撮影、CT、MRIなどの実施時期の判断、読影の補助など(エコーについては実施を含む)▽IVR時の造影剤の投与、カテーテル挿入時の介助、検査中・検査後の患者の管理など

 ◆処置 ▽人口呼吸器装着中の患者のウイニング、気管内挿管、抜管など▽創部ドレーンの抜去など▽深部に及ばない創部の切開、縫合などの創傷処置▽褥瘡の壊死組織のデブリードマンなど

 ◆患者の状態に応じた薬剤の選択・使用 ▽疼痛、発熱、脱水、便通異常、不眠などへの対症療法▽副作用出現時や症状改善時の薬剤変更・中止

<以上貼り付け>

(私のコメント)

業務分担、役割分担の「グレーゾーン」が指摘され、議論されるまでに20年以上かかっている。そして本格的な議論が始まってから10年は経過している。これまで、侵襲性の高い医療行為を看護師が行うことについては明確な基準がなかった。ようは現場の状況まかせの状態。

患者や看護師にとっては安全性確保の点から大いに問題。また、看護師の能力が充分に発揮できず疲弊する医師の過重負担を解決できないことも問題。

褥瘡の壊死組織のデブリードマンについては、臨床の現場では、医師でもあっても技術的に対応できない人が多く、その道の熟練した看護師のほうが上手に対応できたことも事実。しかし、褥瘡の壊死組織のデブリードマンは診療行為なのだから、医師のスーパービジョンのないところで看護師がデブリードマンを実施すると違法行為となる。

診療報酬制度は、特定看護師(日本版ナースプラクティショナー)の配置に対して点数をつけてゆくのか。包括的に評価するのか。また業務範囲、役割分担が増えれば、特定看護師の報酬にも反映させなければ個人に対するインセンティブにはならないだろう。このような戦略的な提言の中身が、実は、職能団体としての日本看護協会などに問われることになるだろう。

看護師賃金の実態は、極度に硬直した年功序列型賃金体系なのだ。業務範囲、役割分担が拡大し、新しいスキルセットが必要となりますよ、でも賃金は同じです、では特定看護師になりたがる人材はでない。

先進各国の看護師教育は大学院レベルにシフトしてきている。職務分担の明細表ができあがる時点で、あるべきスキルセットをどのように定義してゆくのか。そして、既存の看護系大学院と差別化して専門職大学院を構築してゆくのか。さらには、新しい人材に対する給与・報酬制度を体系的に構築してゆくことが求められる。

このように多くのハードルが待ち受けている。


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2 コメント

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アメリカの看護 (ひろこ)
2010-12-21 23:45:38
アメリカで集中治療の看護士でしたが, 現在は修士を経てナースプラクティショナー(NP)です。こちらでは、ICU専門の正看護士もスキルのチェックをすれば動脈採決等を行うことができます。こういうことから考えると日本の医師の負担はかなりアメリカにくらべ多いのではないでしょうか。NPの報酬はNPの需要が高くなってきていますので報酬も年々と上昇傾向にあります。これからの日本のNPに関する発展が楽しみです。

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アメリカの看護 (ヒロマット~)
2010-12-23 07:41:28
ひろこさん、

アメリカで集中治療の看護士、修士を経てナースプラクティショナー(NP)とのこと、スバラシイ!!

日本に還ってくることがあれば、ぜひ、お話伺いたいです。また、下記フォーラムでもよろしければご報告なども。。

http://innovatehealthservices.blogspot.com/

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