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実は、「津軽から江差へ」というのは走ったコースではなく、とある先輩が書いた本の題名です。昔からのサイクリストでも、この一冊を知っている人は少ないでしょう。
「津軽から江差へ」にあやかって、札幌から神恵内へ、そして寿都から長万部へと走りながら自転車と文字表現について考えてみました。
1970年から80年代にかけて 旅とランドナー系の自転車、つまり「シクロツーリスモ」を愛するコアなサイクリストのためのハイクオリティな自転車雑誌だった「ニューサイクリング」誌で珠玉のエッセイを寄稿されていた綿貫益弘氏。
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<綿貫益弘氏サイン>
綿貫益弘氏が書きかげた作品が「津軽から江差へ」。この一冊、中野の原サイクルの原さんから譲り受け、今は僕の貴重な蔵書の一部を成しています。
どのような専門分野にも決してマイナーとは言いませんが、狭く深いジャンルというものが存在します。綿貫益弘氏が開拓、渉漁した深遠な世界は、「自転車紀行文学」、「自転車純文学」とでも言うべき分野。
いまや、ランドナー系の自転車ツーリング自体が極小化しています。さらには自転車紀行文学なるジャンルは極小化傾向の果ての極小点のようなものでしょう。したがって、ここにおいて逆説的な存在価値が生じます。たとえば、自転車文学研究室もこの極小点の系譜を継ぐものでしょう。
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技術経営(Management of Technology)的に言えば、自転車はプロダクト・イノベーション、プロセス・イノベーションが渦巻く世界です。したがって、これらのイノベーションの系譜からとりのこされた希少分野、たとえばビンテージ自転車の世界が成立します。
今後は自転車の世界にも本格的なサービス・イノベーションが訪れることとなります。たんなる距離・スピードのメータではなく、サイクリストのコミュニティを創り、サイクリストをサポートしてゆくといったブリヂストンサイクルのeメーターは、サービス・イノベーションのひとつの行きかたでしょう。
さりとて、「自転車紀行文学」、「自転車純文学」というサービスジャンルがロードバイク、クロスバイク、マウンテンバイクなどを媒介にして復活するとはなかなか思えません。やはり、泥除けやフロントバックがついたランドナーという自転車の雰囲気とともに陰影を伴う文学的な肌ざわりがあるように思えます。
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札幌から神恵内へ、そして寿都から長万部へと走りながら自転車と文字表現について考えましたが、現在のサイクリストにはwebという強いメディアの味方がいます。商業出版という形に乗せることなく、一人一人のサイクリストが文字、映像、動画で情報や知識を発信して共有できるのはこの時代を走る者の特権でしょう。
サイクリストの新しいライティング・スタイルはwebから生まれてくることでしょう。自転車で参与する世界の変化、フロー体験という内面の変化をさわやかに記述するようなライティング・スタイルがあってもよいでしょう。
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