よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

産学連携の医療イノベーションとMOT

2008年02月07日 | 健康医療サービスイノベーション
医療機関は医療に関わる技術、サービス、マーケティング、HRM、ロジスティックス、リスクマネジメントなどの複合体である。医療機関が生み出す成果は、これらの複合体がアウトプットする医療サービスであり、その医療サービスの質を上げるためにさまざまな新機軸や革新が生まれている。

医療サービスは医療に関わる多様なテクノロジーの組織化のプロセスとアウトカムによって実現される。診療チームや病院といった組織、そして病病連携や病診連携といったネットワークによって組織化された医療機関、そして医療サービスの消費者である患者が医療イノベーションの受益者である。

さて、医療イノベーションは医療の質の向上を支持し、その反面、医療イノベーションは医療コストを上昇させる要因でもある。よって、医療のイノベーションはマネジメントを必要とする。

医療機関をとりまく環境には実に多様なイノベーションがあるが、それらをざっくりと供給側と需要側とに分けると、

・新規創薬や医療機器におけるイノベーション(サプライ・サイド)
・医療機関における新規の手術手法、治療方法、看護技術などのイノベーション(デマンド・サイド)

サプライとデマンドの両サイドが、すりあわせを行えばイノベーションが起こるという単純な話ではない。すりあわせを仲介する、あるいは連結するエージェントとしての高度な学術レベルとコーディネーション能力に秀でた研究者の存在が欠かせない。

医療の現場でイノベーションが巻き起こる前提には、秀逸なテクノロジーのシーズを保有するサプライサイドと、それらを活用する潜在的ニーズを持つ医療機関のデマンドサイド、そして両者をカップリングさせるエージェント的な研究者の存在がある。これらのプレーヤーの関係は不即不離で、各自の利害が一致するテーマを中心として、医療産学複合体が形成されることとなる。

たとえば、ブリストルマイヤーズ・スクイブのコンバテック事業部(サプライサイド)は、新規製品の開発段階とPMS段階で傘下に病院を運営する大学医学部の研究者(エージェント)と密連携して、褥創を治療する近代ドレッシング材を商品化してきている。開発され上市される商品の治療における有効性を証明するために、研究者は企業をスポンサーとして学術的な調査を行い論文として発表する。 そして、CGFなどの近代褥創ドレッシング材は日本全国の病院(デマンドサイド)で活用され大いに臨床的な成果をあげるに至っている。

内科、外科、整形外科、精神科などのプラクティスにおいて、この種の医療イノベーション事例は山のようにある。それと同時に、献金癒着、贈収賄、モラルハザードに終始する「好ましくない」医療産学官複合体の事例も山のようになる。いや、日本においては、後者のほうが多かったのではなかろうか?

さて、究明すべきテーマがいくつか浮上する。

・医療産学共複合体がアウトプットする「好ましい」医療イノベーションの事例研究
・医療産学複合体がアウトプットする「好ましくない」医療イノベーションの事例研究
・以上の差異を説明する要因に関する分析
・好ましい医療イノベーションが発生させることに寄与するそれぞれのプレーヤーの行動様式を抽出する
・それらをプログラム化して、あるべき医療産学複合体にフィードバックする

いずれも医療サービスをMOTという観点から分析、提案することとなる。明日の日本の医療を構想するときにはぜひとも必要なアプローチだと思われるが、さて。

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2 コメント

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Unknown (中居 康祐)
2012-04-18 23:40:55
私も、医療イノベーションに興味があり、東工大MOTに在籍中です。研究内容等、教えて頂けませんか?
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Unknown (まつした)
2012-04-19 09:08:41
中居様、

2010年に一年間、看護管理という専門誌に「医療サービスイノベーション」について12回連載しました。

あとは、下記サイトなどで文献など渉猟いただけます。
http://park11.wakwak.com/~hiromat/
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