この話もテレビで見たことなのですが、
定年をむかえると、
どういうわけか、どこで知ったのか、
ある人が尋ねて来るそうです。
そして、
すごいですね!!
お話を聞かせてください。
さすがですね!!
といって、
そうこうするうちに、
相手の術中にはまって、
いろいろの契約とか結んでしまうとか??
いわれてみると、
男というもの私だけでしょうか?
「すごいですね!」
という言葉に弱い、
すぐ調子に乗ってしまいます。
そして、
定年を迎えると話し相手もなくなり
そんな折、
「話を聞かせてください」
とくると、ついつい自慢話やら
昔の話に我を忘れて
話し込んでしまうものです。
「S」はすごいですね!
「O]はお話を聞かせてください。
「S」はさすがですね!
ということです。
しかし、考え直してみると、
ある種、まだらボケといいますか、
少々記憶が定かでなくなってきたとき
お話を聞くというのは
脳の活性化にとてもいいと思います。
よくお寺にご相談にお見えになった時
ひたすら、お話を聞きます。
それも何度も、
(またかと思いつつも)
始めて聞くように驚きをもって、
それこそ、「さすがですね」と
相槌を打ちながら、
すると微妙に話の内容が
進展しているのです。
切り口は同じ話でも、
繰り返し話しているうちに
そこからの話の展開があります。
そして、
顔も生き生きと輝きだします。
最後には、
「今日はいいお話を聞かせていただいて
なにかもやもやしていたものが
スッキリしました!」
と、帰って行かれます。
話しているうちに
過去の記憶が蘇り、
自分の楽しかったことを思い出され、
自信に満ちた時のことが
ふともどってくる。
年とともに、
過去のことははっきりとしている
が、
現在や未来がなくなってくる
その時、またしても同じ話と
片づけるのではなく、
過去の記憶を温めていくと
それは次第に今につながり
未来のことを考えられるようになる
のではないかと、思うのですが、
…
これは、
人間の深層心理に
一切のものを宿していくというか
貯えていく意識があり、
それを阿頼耶識といいます。
アラヤは蔵という意味があります。
「ヒマラヤ」とは
「ヒマ」は雪、「アラヤ」は蔵
いつも雪を蔵している山が
「ヒマラヤ」ということです。
私たちの行いや考えたこと
一切を蔵のように貯めていく、
貯めたことによりその貯金として
新しいものが生まれてきます。
それを一般的には「可能性」と
呼んでいます。
それを「一切種」という表現もします。
阿頼耶識の未来の面です。
一切というあらゆる種、可能性です。
だから、昔話またか、
ではなく、真剣に聞き汲み取る
そうすると、
眠っていた「一切種」が芽生えてくる。
SOSということも、
単に利用するのではなく、
すごい、と真剣に聞き、さすが
といって接すると
話す方も聞く方も両方
脳の活性化につながるのでは、
これから、ますます独居老人が
ふえてきます。
話してあげるのではなく、
聞いてあげる、聞かしてもらう
そういう立場が大事ではなかろうかと
そうすると、SOSが生きて来るのでは
そんなこと思っていました。