三浦しをん著「まほろ駅前多田便利軒」文春文庫、2009年1月、文藝春秋発行を読んだ。
家族をなくした中年の多田は、東京のはずれのまほろ市の駅前で便利屋を営んでいる。そこに高校時代の同級生で、感受性が失われたかのような行天がころがりこむ。犬の飼い主探し、小学生の塾の送迎などの仕事のはずが、どこか奇妙な依頼で、きな臭い状況に巻き込まれる。個性的な人達が,不器用に生きる6編の短編集。直木賞受賞作。
マンガが目に浮かぶ個性の強いクサイキャラクター設定とゆる~いストーリー展開で楽しく読める。いじけ過ぎだが、人のよい多田にはついていけるが、行天は謎が多く、思わぬ行動にでるので驚かされる。
物語の舞台となっている「まほろ市」は、神奈川へ張り出した東京都南西部最大の街で、東京に住む人なら町田市とすぐわかる。著者が在住しており、いくつも心当たりの場所がでてくる。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)
確かに、そして文句なしに面白いのだが、これが直木賞?という感じはする。文章も抵抗なく読めるし、話の展開はうまく、次へ次へとつい読んでしまう。行天が多少極端すぎるが、登場人物のキャラも立っている。しかし、多田や行天の抱える傷、秘密が特に重いとは考えられず、軽るーい小説に感じられる。もちろん軽くてもけっこうなのだが、それならいっそうさわやかに、軽やかであって欲しい。
いくつか気に入ったところを2つだけ、つまみ出す。
「不幸だけど満足ってことはあっても、後悔しながら幸福だということはない」
「はる(娘)のおかげで、私たちははじめて知ることができました。愛情というものは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだと」
「はる(娘)のおかげで、私たちははじめて知ることができました。愛情というものは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだと」