hiyamizu's blog

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桐島洋子「マザー・グースと三匹の子豚たち」を読む

2008年12月02日 | 読書2
桐島洋子著「マザー・グースと三匹の子豚たち」2006年5月、グラフ社発行を読んだ。

桐島洋子さんは40歳を目前にし、1年間の休暇を宣言して超多忙な日本を脱出し、3人の子供をつれてニューヨーク郊外のイースト・ハンプトンで過ごした。大胆、型破りな米国での子育て体験をまとめ、1980年に文藝春秋から同名の本を出版した。この本は30年前のベストセラーの復刻版だ。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

若いときに既に読んだ女性も多いと思うが、子育てを終えて、あるいは年とってから再読すると、また違った感想を持つと思う。
グラフ社の方の、「当時としては進み過ぎるくらい時代を先取りした本だから、今の親達にこそ読んでもらいたいのです」という話には納得だ。それでも、今の日本の世間が進んでこの本のことが普通になった場合と、むしろ逆に世の中がずれていってしまったことがある。



面白かった点をいくつか抜き出す。( )は私の感想


休暇前にかたづける仕事が山になっていて、桐島さんは出発前3週間はホテルに泊まりこんでいて、子どもたちにはスーツケースを一つずつ与えて言う。
―――
「この中に、あなたたちの人生に必要だと思うものから順に入れて持ってらっしゃい。重さは20キロまでよ。じゃあ、元気でね。三週間後に羽田空港で会いましょう」
―――
(アシスタントの人がいたとはいえ、そもそも出発前からすごい。30年前の未婚の3人の子供の母はこうせざるをえなかったのだろう)



ケチでいらぬことまで口を出す大家さんに言う。
―――
「私はお金をケチるのは面倒臭いの。金は天下のまわりもので、私がソンしたってヨソにまわるだけのことじゃない。でも、資源や時間の浪費はとりかえしがつかないもの。できる限り倹約して、大切に、意義ある使い方をしましょう」
―――
(同感だ。物や時間はケチしなければならない。お金も無駄にはしないが、使うために節約するのだ)



―――
私はいまだかって子供と一緒に幼児語を使ったり可愛い絵本を読んだり子供だましのゲームに打ち興じたりしたことがない。・・自分自身に興味がないことを、子供のために相つとめる気にはならないのである。
―――
(我家の子育ても最初から幼児語は使わなかったが、親が子供に合わせる気にはならないというのは、少し冷たい感じがする)



―――
はじめて遊びに来たその日から、泊らせてくれという子供も珍しくない。・・家に電話させると、親の方もアッサリしたもので、言下に、「OK、では明日迎えに行きます、バーイ」でおしまいだ。「でもそんな・・ご迷惑では・・」など・・日本的儀式は一切無用らしい。・・翌日迎えに来る親は、門の外で車のクラクションを鳴らして待つだけだ。・・戸口で一言挨拶することもない。
―――
(日本では、かえって互いに迷惑すると分かっていても、変人と思われないために儀式を行う。私は、互いにうんざりすることはなるべくしない主義だが、日本ではコミュニケーション上の潤滑油に欠けているとも思う)



―――
漁港へ行くとタラを売っているが、フィレという肉の部分をスーと軽く切りとって渡すだけで、残りはまだほとんど魚の全容をとどめたままポイと捨てられてしまう。
桐島さんはこのアラをいろいろに料理して楽しむ。
―――
(バンクーバーでは漁港に行くと、船に魚を並べて売っていた。また、オーストラリアのパースの日本人の店員がいる魚屋さんにはアラを売っていた。魚は刺身もよいが、煮るならフィレよりアラがうまい。)



米国は個性を尊ぶ。
―――
個性の強力な援軍として、アメリカ人のほめ上手もあげておきたい。私にはとてもつきあいきれないのだが、ここではおとなも子供も実にこまめに大げさに、些細なことまでもほめそやす。・・一言も口がきけなくても、彼ら(桐島さんの子供たち)は絵を描いたり、笛を吹いたり、算数の問題を解いたりすることができた。その度に惜しみなく浴びせられる熱烈な賞賛が、彼らに自信をつけ、学校を大好きな場所にしてくれたのだ。・・日本の学校では・・
―――
(昔、ボランティアで障害者の送り迎えをしていたとき、ダウン症の子供と知り合った。いつも明るく、信じられないほど素直で、じっと見つめる瞳がきれいだった。ひねくれ者の私は恥ずかしくなり、以後、少なくとも自分自身はオープンにしようと心がけるようになった。田中君ありがとう)



表紙には70歳を控えた桐島さんを前に、3人のお子さん、カレン、ノエル、ローランドが並んだ写真、裏表紙には孫6人も加わった写真が載っている。また、末っ子の桐島ローランドがこの本のあとがき「何も諦めない母だった」を書いている。




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