hiyamizu's blog

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盗まれた世代

2008年02月16日 | オーストラリア
JAMS.TVによるAustralia NEWS(2008年02月12日)に以下のような記事があった。

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ラッド首相、盗まれた世代への公式謝罪声明を発表  2008年02月13日
【キャンベラ13日AAP】キャンベラで13日、ラッド首相は先住民の盗まれた世代に政府が与えた苦悩に対して公式な謝罪声明を発表し、先住民らは、連邦政府に対して拍手喝采を送った。この歴史的な公式謝罪は、子供時代に家族から無理矢理引き離された盗まれた世代の先住民を含む何千人もの国民によって見守られ、全国で感情的なシーンが繰広げられた。

1910年~1970年代前半にかけて、政府によって家族から引き離された何万人ものアボリジニの子供の幾つかの事例を証拠資料としてまとめた「彼らを家族の元へ戻そう(ブリンギング・ゼム・ホーム)」報告書が公表されてから10年以上を経て、やっと今回の公式謝罪が実現することとなった。
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同時に、以下の記事が並んでいる。
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ネルソン野党党首、公式謝罪への異なる見解を支持 2008年02月13日
【キャンベラ13日AAP】13日午前に行われた先住民オーストラリア人に対する政府の公式謝罪が読み上げられる前に、国会議事堂の席を立ち出て行った WA州自由党国会議員ウィルソン・タッキー氏の行動に対して、野党党首のブレンダン・ネルソン氏は批判を避け、「全てのオーストラリア人は全ての問題に関 して、異なった視点から物事を見ており、異なった見解を持っている」と支持する姿勢を見せた。
保守連合の何人かの国会議員は、13日午前の国会から欠席または遅れて出席した。以前にタッキー氏は、公式謝罪は先住民問題の解決に何の役にも立たないと語っていた。

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背景説明

"Stolen Children"(盗まれた子供達)
1910年頃から1970年代にかけて、政府や教会によってアボリジニと白人の間に生まれた子供、特に父親が白人である子供を親元から強引に引き離し白人家庭で養育する政策が実施された。アボリジニの子供も「進んだ文化」の元で育てられるべきという考え方だった。
しかしアボリジニの子供達は10人に1人が突然連れ去られ、一生親に会えなくなった。結果として彼らはアボリジニとしてのアイデンティティを喪失し、 "Stolen Children" (盗まれた子供達)、失われた世代(Stolen Generation)と呼ばれる。
1937年にアボリジニは死に行く民族という規定を廃止し、積極的に援助することを明らかにした。1965年には、アボリジニに対する強制同化策を廃止し、文化を維持し、オーストラリア社会への統合促進政策が採用された。
しかし、諸政策にもかかわらず、アボリジニの失業率は高く平均収入はオーストラリア平均の半分ほどで、彼らの収入の大半は政府からの福祉手当、失業手当である。一般オーストラリア人と比べ、平均寿命は短く、幼児死亡率が高く、さらに、アルコール中毒とそれに伴う犯罪検挙率が高く、問題は多い。

"Stolen Children"については連邦政府も調査委員会を設置して、実態の調査を始め、1997年に政府に調査結果が報告されたものの、赤字財政の中でアボリジニに対する補償を約束する事も出来ず、現在も解決されていない。昨年までのハワード政権は自由党の支持基盤である保守層への配慮と賠償訴訟の問題を考慮して、「遺憾」であるが、「謝罪」はしないという立場を取っていた。

昨年労働党の政権に代わって、今回の謝罪を行うことになったようだ。

謝罪は当然と思うが、私はこれで問題が解決へ向かうかどかは疑問だと思う。現状でもアボリジニに対し各種優遇策をとっていて、腫れ物にさわるような対応がかえって問題の根本解決を遅らしているような気さえする。もちろん一部の人だと思うが、彼らに対する優遇政策がかえってアルコール依存症をもたらし、さらにアル中対策を行っている。こそ泥や車上あらしも多く、パース駅周辺でもベンチに子連れでただただ居座る姿をよく見かける。満足な子どもの教育も行われていないように見受ける。
実情がわからない外部の人間が言うことではないが、優遇策ではなく、自立支援策に絞るべきと思うのだが。


"Stolen Children" (盗まれた子供達)については、「アボリジニの夢はいずこ」が詳しい。




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