hiyamizu's blog

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森絵都『獣の夜』を読む

2024年08月07日 | 読書2

 

森絵都著『獣の夜』(2023年7月30日朝日新聞出版発行)を読んだ。

 

朝日新聞出版の紹介

原因不明の歯痛に悩む私が訪れた不思議な歯医者(『太陽』)。女ともだちをサプライズパーティに連れ出す予定が……(『獣の夜』)。短編の名手である著者が、日常がぐらりと揺らぐ瞬間を、ときにつややかにときにユーモラスにつづった傑作短編集。

 

3年7カ月ぶりの森絵都の新刊、短篇7編。

 

出展・初出は、2016年~2022年の様々な異なるメディア。

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)

 

著者が短篇の名手だとは知らなかった。一筋縄ではいかず、スリリングな展開にドキドキし、最後に驚かされてしまう。ふとしたことで、自分の心の中を覗き込むことになる話が多いかな。

何か不思議な雰囲気で、切ない話が多いが、しみじみとした後で、なぜか心が軽くなっている。

 

森絵都の略歴と既読本リスト

 

 

 

以下、私のためのメモで、ネタバレぎみ。

 

「雨の中で踊る」

永井(タク)は、入社25年目。10日間のリフレッシュ休暇の旅行がコロナ禍で中止。むなしく過ごした休暇最終日に家を出てふと海を目指す。途中で出会ったオカ(ヨ-スケ)と道連れとなり、生き方のカリスマ(トシヤ)に会うことになる。
何もしないで耐えてきたタクは、妻と娘の住む我が家に自分の居場所がないと嘆く。トシヤが歌う「人生とは、嵐が通りすぎるのを待つことじゃない。雨の中で踊る。それが人生だ。 “Life isn't about waiting for the storm to pass,  it's about learning how to dance in the rain.”」(シンガー・ソングライターのVivian Greenの言葉)

 

「Dahlia」(ダリア) 5ページ足らずの超短編

“ATTACK”(??)後、変わり果てた日本。「正しいことは移り変わるけど、美しいものは変わらない」。人間の業(ごう)にまみれた大地を照らす一面のダリア畑を頭に描いて私は車を走らせる。

(説明を拒否しているような話で、どうとれば良いのか不思議な気持ち)

 

「太陽」

激しい歯痛に襲われた加原はようやく見つけた歯科医院を訪れる。風間院長は虫歯でなく代替ペイン(心因的歯痛)だという。加原は風間に電話で「最近ある男性と別れた」と打ち明け、風間は「今日一日集中して彼のことを考えてみてください」と指示する。痛みに変化は無いので、犯人探しは続き、結局、豆〇だと分かる。

 

「獣の夜」

大学時代のサークル仲間で元カレの泰介から紗弓に電話で、泰介に代って妻の美也を鎌倉野菜を食べる誕生日のサプライズパーティに連れ出すように依頼された。パーティーは、出来る人なのに男癖が悪かったカトマリの発案だという。美也はその前にどうしても肉が食べたいと二人でジビエ・フェスタに参加し、呟いた。「…人はそうそう変わらないし、最近はべつに変わらなくてもいいって気がしてきたよ」

肉食女子の意趣返し。

 

「スワン」

お金待ちのボンボンの彼氏・ハタくんから小枝への就職祝は、別荘の沼に浮かぶスワンボートだった。ハタくんがプロポーズし、小枝が一人で漕ぎ出すと、水面がおかしい! スワンが「あなたの心の澱(おり)ですよ」とささやく。理想を求める母親と応えられない娘の確執だった。次にハタくんが乗り、最後に母と娘で乗った。

 

「ポコ」   3ページの超短編

大好きな飼い犬・ポコは肺全体に腫瘍が広がったが、七転八倒しながらも最後の最後まで生きようと頑張って死んだ。小4の朔は、ポコをあれほどしがみつかせた何かが、きっと、この世界にはあるはずだと、恐れなかった。

 

「あした天気に」

テルテル坊主は明日に期待するから作る。しかし明日が待ち遠しいとの思いは、今の会社に入ってからはもちろん、大学に入ってからもない。ふと懐かしくなってテルテル坊主を作ってしまったが、スコア150の悲惨な腕で、明日は接待ゴルフなのだ。
夢の中に登場したテルテル坊主は、最近は出番がないのに作ってもらって、お礼に天気に関することなら3つ願いを叶えるという。
とりあえず、明日はゴルフが中止になるくらいの大雨をお願いした。

無事大雨となった翌日、3連休の2日目、実家に帰った。久しぶりに高校の3人組の一人、小春を呼び出し、明日が3歳の息子・光樹の初めての運動会と知る。明日を晴にとテレテル坊主に願う。
親友の阿良太は高3の12月、雪の日にスリップ事故に巻き込まれて即死したことで思いついて、3つ目のお願いを決めた。
運動会の当日、一位となった光樹を高い高いした男は……。
テルテル坊主は「グッジョブ! でしょ。ね、ね?」と言うのだが……。この8年間、親友の死を言い訳にしていた俺は! 俺のあしたを晴にできるのは俺自身だけだったのに。

 

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