辻堂ゆめ著『悪女の品格』(創元推理文庫、Mつ7-1、2020年8月21日東京創元社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
どうして私がこんな目に? めぐみはここ一週間、連続して危険な目に遭っていた。まずは監禁事件。次は薬品混入事件。犯人は、めぐみが三股をかけた上に貢がせている男性たちの誰かなのか。さらに彼女自身の過去の罪を仄めかす手紙まで届き、危機感を募らせためぐみは、パーティーで知り合った大学准教授とともに犯人を捜し始める。「悪女」による探偵劇の顛末を描く長編ミステリ。
光岡めぐみ:生命保険会社営業29歳。大女優・蓮見沙和子と社長の一人娘だが親とは連絡をとっていない。小学校の時、金内、秋庭、玉村、樋口と、有希子、香織を従えて、真木良輔をいじめていた。現在、美しく強欲なめぐみは大病院院長の息子・秋庭、不動産王御曹司・玉村、IT会社社長の樋口を操り、貢がせている。
ここ一週間、監禁事件(帰宅の途中、男にバッグを奪われ、マンションの物置に一晩閉じ込められた)、薬品混入事件(秋庭が渡されたボディミストの試供品をもらったが、塩酸入り容器で手に火傷を負った)、ハンドクリーム事件(玉村からのプレゼントのハンドクリームで皮膚に炎症)と3つの事件が重なった。
彼等から離れようと藤沢駅に行き、降りた所で財布が盗まれたのに気がついた。家に帰る金を都合付けるためにたまたま誘われた婚活パーティーに参加し、大学准教授29歳の山本正志と知り合った
犯人は、めぐみが三股をかけ、貢がせている男性なのか。めぐみは大学准教授・山本とともに犯人を捜し始める。
本書は2017年刊行作品の文庫化
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
子供の頃はいじめの主犯で、現在は三股かけた男に貢がせることしか考えていない悪女の話は真剣に読む気がしない。著者はあとがきで、読者が感情移入できない中途半端な悪女をあえて書いてみたと書いている。
主人公で語り手が光岡めぐみなので、いじめられる者の哀しみなどが描かれず、その部分は読んで不愉快な気持ちが残る。
大人になってからのめぐみの三股など悪行は、こんな女性も居るだろうし、騙される方も悪いと突き放して読める。
著者は新婚で幼子を抱え、仕事を持ちながらでも小説が書けるらしい。読むのは早くないが書くのは早いと言っている。才能ありそうなのだから、合格作を量産するより少数でも傑作を残して欲しい。(参考:作家の読書道)
辻堂ゆめ(つじどう・ゆめ)の略歴と既読本リスト(3月20日UP)