今野敏著『夏空 東京湾臨海署安積班』(2024年3月18日角川春樹事務所発行)を読んだ。
外国人同士がもめているという通報があり現場に駆けつけると、複数の外国人が罵声を上げて揉み合っていた。ナイフで相手を刺して怪我を負わせた一人を確保し、送検するも、彼らの対立はこれでは終わらなかった……。(「略奪」より) 高齢者の運転トラブル、半グレの取り締まり、悪質なクレーマー…… 守るべき正義とは何か。揺るぎない眼差しで安積は事件を解決に導いていく――。 ドラマ化もされた大ロングセラー「安積班」シリーズ熱望の最新刊! おなじみの安積班メンバーに加え、国際犯罪対策課、水上安全課、盗犯係、暴力犯係など、ここでしか味わえない警察官たちのそれぞれの矜持が光る短編集。
「東京湾臨海署安積班」シリーズに属する10編の短編集。おなじみのメンバーがそれぞれ独自の力を発揮する。
初出:「ランティエ」2022年12月号~2023年9月号
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
「東京湾臨海署安積班」シリーズは20冊近く刊行されている。楽しんで書いている著者の筆は走っていて、4冊目の私には主な登場人物のキャラは頭に入っているので、会話もお馴染み感があって、安心して楽しめた。それだけに想定の範囲内ではある。
短篇集だから話に深みはなく、ドン電返しはない。そのかわり、国際犯罪対策課など警察の今までに登場しない組織が出て来て、本当にこんなことまで取材できるのと言うような警察内部の組織間の軋轢、力関係などが示され、さすが警察小説の第一人者と感心しきり。
以下、メモ
「目線」
隅田川で遺体が発見され、被害者はアパート住人で近隣住民とトラブルが絶えなかった54歳の門倉。安積等は水上安全課の警備艇で現場に向かう。
犯行現場を映したスマホ映像が、金目当てでTV局に持ち込まれ、局は警察に情報提供した。映像から門倉と対立していた60歳の守屋が浮かび、犯行を自供した。
「会食」
課長から安積に調べるよう言われた。署長が暴力団幹部と会食したと記者が副署長に耳打ちしたという。
「志望」
署長が、刑事として有望な地域課係員・武藤を刑事課に引っ張りたいと。安積は、管理職向きの村雨をどこかの署に係長へ出して、空に武藤をと動いてみる。武藤は事件現場の人込みの中から……。
「成敗」
高速道路上のトラブルで被害者が35歳の津山、被疑者は70歳の丸岡で、罪を認めている。丸岡は空手5段だった。
‥‥
シリーズの主な登場者
榊原課長:東京湾臨海署刑事組対課・課長。安積と相楽の上司。
安積:主役。刑事組対課・強行犯第一係長。通称、安積班を率いる。45歳。上司にもはっきりと言う。
村雨:安積に忠実に仕事し、部下を厳しく指導する。堅苦しいほど基本に忠実。
桜井:村雨に厳しく指導されている。安積班で一番若い。
須田:ぽっちゃり体型で機敏でないが、勘は人一倍鋭い。捜査が行き詰った時には頼りになる。
黒木:須田と組む。常にキビキビと動く。剣道5段。
水野:女性刑事。須田と同期。美人。
相楽:刑事組対課・強行犯第二係長。通称、相楽班を率いる。40歳前。安積をライバル視。
真島:刑事組対課・組対係(組織犯罪対策係)係長
速水:安積と同期。交通課の白バイ野郎で自由人。
・江戸は水の町だった。吉原も、舟で行くのが表門で、陸のは裏門だった。