アガサ・クリスティー著、矢沢聖子訳『終わりなき夜に生まれつく』(クリスティー文庫95、2011年10月10日早川書房発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
誰が言い出したのか、その土地は呪われた〈ジプシーが丘〉と呼ばれていた。だが、僕は魅了された。なんとしてでもここに住みたい。そしてその場所で、僕はひとりの女性と出会った。彼女と僕は恋に落ち、やがて……クリスティーが自らのベストにも選出した自信作。サスペンスとロマンスに満ちた傑作を最新訳で贈る。 解説:真瀬もと
原題は「Endless Night」で、ウィリアム・ブレイクの詩『無垢の予兆』の一節「甘やかな喜びに生まれつく人もいれば/終わりなき夜に生まれつく人も…」(“Some are born to sweet delight, Some are born to Endless night.”から採られている。
ジプシーの占いばあさんが「ジプシーが丘」から出て行けと二人を脅す。エリーが誰よりもグレタを頼りにしていることにマイケルは不安と嫉妬を感じる。そして、エリーに干渉しようとする継母や親族。互いに仲が悪そうな信託管理人の弁護士と財産管理人。膨大な資産を巡って暗雲が立ち込める。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お勧め)(最大は五つ星)
犯人はすぐにこの人があやしいと思ってしまった。雰囲気と匂いがプンプンする。
約半分まで事件は起こらず、退屈。後半はようやく動きが速くなってどんどん読めた。
登場人物(表紙裏の紹介に追加)
マイケル(マイク):主人公。点々と職を変えた過去を持つ。エリーと結婚し、ジプシーが丘に新居を建てる。
エリー(フェニラ・グートマン(グッドマン)):アメリカの大富豪の一人娘。マイクと結婚する。
グレタ・アンダーセン:エリーから信頼を得ている世話係。金髪の美女。
ルドルフ・サントニックス:建築家。マイクの友人。不治の病で余命短い。
コーラ・ファン・スタイブサン:エリーの継母。贅沢で世界を遊びまわる中年女性。
フランク・バートン:エリーの叔父。
ルーベン・パードー:エリーのかなり年上の従兄。エリーからは“叔父”と呼ばる。
アンドリュー・リピンコット:エリーの後見人。財産管理人。
スタンフォード・ロイド:エリーの財産管理人。銀行家。
クローディア・ハードカスル:村に住む女性。エリーの乗馬友達。サントニックスの異母妹。
エスター・リー:村のジプシーの老女。マイクとエリーに〈ジプシーが丘〉の呪いを吹き込む。
フィルポット:キングストン・ビショップ村の村長であり、治安官。
ショウ:村の医師。
キーン:村の巡査部長。
本書は、2004年8月にクリスティー文庫から刊行された物の新訳。
アガサ・クリスティー “Agatha Christie”
アガサ・クリスティーはこう語った。
どんな女性にとっても最良の夫というのは、考古学者に決まっています。妻が年をとればとるほど、夫が興味を持ってくれるでしょうから。
アガサ・クリスティーは、夫に愛人ができた為に離婚し、40歳の時、26歳の青年と再婚した。再婚相手は、考古学者だった。
裏表紙の長い長い著者紹介を以下引用
1890年、保養地として有名なイギリスのデヴォン州トーキーに生まれる。中産階級の家庭に育つが、のちに一家の経済状況は悪化してしまい、やがてお金のかからない読書に熱中するようになる。特にコナン・ドイルのシャーロック・ホームズものを読んでミステリに夢中になる。
1914年に24歳でイギリス航空隊のアーチボルド・クリスティーと結婚し、1920年には長篇『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビュー。1926年には謎の失踪を遂げる。様々な憶測が飛び交うが、10日後に発見された。1928年にアーチボルドと離婚し、1930年に考古学者のマックス・マローワンに出会い、嵐のようなロマンスののち結婚した。
1976年に亡くなるまで、長篇、短篇、戯曲など、その作品群は100以上にのぼる。現在も全世界の読者に愛読されており、その功績をたたえて大英帝国勲章が授与されている。
矢沢聖子(やざわ・せいこ)
1951年生れ。津田塾大学卒。英米文学翻訳家。
訳書、クリスティー『スタイルズ荘の怪事件』、スタウト『手袋の中の手』、ハリス『事件現場は花ざかり』等。